2026年11月3日、帝国データバンクが、もやしメーカーの倒産や廃業が過去5年間で13社にのぼったと公表しました。
ほかの野菜が値上がりするなかでも、節約志向を背景に、もやしの需要そのものは底堅いといいます。
それでも、作り手は減り続けています。
調査は、上がった費用を値段に転嫁しきれず「売れているのに儲からない」状態に陥るメーカーが少なくないと伝えています。
注文は途切れないのに、月末の通帳を見ると、思ったほどお金が残っていない。
もやしに限らず、あなたの会社にも、そんな心当たりはないでしょうか。
なぜ売れているのに儲からないのか。
まずは、帝国データバンクの調査の中身をお伝えします。
もやしメーカーの倒産・廃業が5年で13社に
調査の要点は、次のとおりです。
2026年に倒産や休廃業・解散が判明したもやし製造業者は少なくとも3件。10月に事業を停止した「サイキ食品」(埼玉)を含めると4件となり、過去5年間(2022〜26年)では計13件に達した。
「もやし製造」を主力とする企業のうち、2025年度業績が判明した全国約20社では約3割が最終赤字となった。減益企業を含めると全体の65%、3社に2社で業績が悪化した。
もやしの主原料である緑豆の輸入単価は、2026年1〜8月平均で前年同期比7.2%上昇(財務省貿易統計)。包装資材や電力などのエネルギーコスト、物流費、人件費も上昇が続いている。
— 帝国データバンク「『もやし製造』の倒産・休廃業解散動向(2026年)」(2026年11月3日)より要点を整理
事業を停止したサイキ食品は、埼玉県を中心にもやしを生産・出荷していた大手です。
小さなメーカーも多く、表に出ない撤退まで含めれば、実際にはもっと多くの作り手が姿を消したとみられています。
業績が悪化した会社の割合は、2021年度をピークに下がってきていました。
それが2025年度は、4年ぶりに前年を上回っています。
「もやしは安くて当然」が値上げを阻んできた
もやしの業界では、以前から売値が「安すぎる」ことが問題になってきました。
2017年には、工業組合もやし生産者協会が、業界の苦しい実情を訴える声明を出しています。
同じ年の11月には、原料の豆を扱う卸会社が、価格を転嫁できずに破産しました。
2022年には、同じ協会が日本経済新聞に全面広告を出し、こう訴えました。
「このままでは生産者が消える」
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにした物価高のなかで、値段の見直しは進みました。
それでも、「もやしは安くて当然」という受け止め方は、大きくは変わらなかったといいます。
業界全体で声を上げても、世の中に根づいた値段の感覚は、そう簡単には動かない。
しかも、もやしは地域に根ざして作られていることが多く、1社がやめるだけでも、地域の供給に影響が出かねないと指摘されています。
「うちがやめたら、地元の店や家庭に迷惑がかかる」
「値上げを言い出したら、ほかのメーカーに替えられてしまう」
そんな思いから、苦しくても同じ値段で出荷を続けている社長もいるでしょう。
利益を出している会社でも、単価の高いスプラウトやカット野菜などをあわせて手がけ、もやしだけの薄い利益を補っているケースが目立つそうです。
もやしだけでは利益を出しにくい仕組みそのものは、変わっていないのです。

売れているのに儲からないのは値段が費用に追いついていないから
売れているのに儲からない理由は、突き詰めれば1つです。
作るのにかかるお金は上がったのに、売る値段がそれに追いついていないこと。
原料の豆、袋などの資材、工場の電気代、配送の費用、人件費が、どれも上がり続けています。
それなのに、売値は「安くて当然」の水準からなかなか抜け出せません。
これでは、1袋売るごとに出る儲けは、薄くなる一方です。
儲けが薄ければ、売れる量が少し増えたくらいでは、工場や人にかかる毎月の支払いをまかないきれません。
ここで多くの社長が考えるのが、もっと量を売って穴を埋めること。
ですが、手元のお金に余裕がないなかで、量を増やして売上を伸ばそうとしてはいけません。
量を増やすには、原料も資材も人手も、先に余分に用意しなければなりません。
限られたお金で商売をしている会社ほど、増える売上より先に、手元のお金のほうが出ていってしまうからです。
しかも、もやしの需要が底堅いといっても、人が減っていく社会で、買う人の数がこの先増えていくわけではありません。
そこで量を増やそうとすれば、結局は値下げに頼ることになりがちです。
儲けの薄い商品を、さらに安くして量で追いかける。
それでは、苦しさが増すばかりです。
値上げで取引先が減る怖さとお金の負担は分けて考える
量で取り返すのでなければ、見直すのは値段のほうです。
業界の声で世の中の受け止め方を変えるのは難しくても、自社の売値なら、取引先ごとに話し合うことはできます。
量を増やそうとするくらいなら、採算を重視して値段を上げるほうが、まだ傷は浅く済みます。
物価高のなかで値段の見直しが進んだように、いろいろなものが値上がりしているいまは、値上げを比較的切り出しやすいときでもあります。
もちろん、値上げをすれば、離れていく取引先も出てくるでしょう。
ただ、すべての取引先がいなくなるとは考えにくい。
残ってくれた取引先を大切にして、上げた値段で誠実に商品を届けていきましょう。
ここで大事なのが、気持ちの負担とお金の負担を分けて考えることです。
長く付き合ってきた取引先が離れたり、地元に迷惑をかけるのではと悩んだりするのは、気持ちのうえでは本当につらいものです。
ですが、無理な値段のまま続けて、いつか出荷そのものが止まってしまえば、それこそ地元のお店や家庭が困ります。
お金の面で見ても、儲けの出ない注文を抱え続けるほうが、よほど重い負担になります。
売上は減っても、儲けは増える。
人口が減っていく社会では、この「減収増益」を目指すのが会計の基本です。
値上げの前に量がどこまで減ってもいいかを確かめる
値上げに踏み切れないのは、どれだけ取引先が離れるか分からないからでもあります。
そこで役に立つのが、値上げを切り出す前の簡単な計算です。
たとえば、1袋を売ると、原料や資材などその袋にかかるお金を差し引いて、5円の儲けが出るとします。
値上げをして、1袋あたりの儲けを10円にできたとしましょう。
そうなれば、売れる量が今の半分になっても、儲けの合計は今と変わりません。
量の減り方が半分より小さければ、そのぶん儲けは今より増えます。
しかも量が減れば、人手や工場を動かす時間も少なくて済みます。
「値上げしたら取引先が離れてしまう」という不安も、数字にしてみれば、どこまでなら耐えられるのかが見えてきます。
いくらで作って、いくらで売って、1袋でいくら儲けが出ているのか。
商品ごと、取引先ごとにこれを書き出してみることが、赤字から抜け出す出発点です。

値上げの返事を待つあいだに手元のお金を減らさない
ただ、値段を上げたからといって、資金繰りがすぐに楽になるとは限りません。
取引先との話し合いには時間がかかりますし、原料や電気代の上昇も、この先まだ続く可能性があります。
そのあいだに足りなくなったお金を新しい借入で埋めれば、あとで返す額が増えるだけです。
苦しいときに守る順番は、社長の家族の暮らし、従業員の給料、地元のお店への出荷、豆や資材の仕入れ先への支払いが先で、銀行への返済は一番最後です。
返済の重さに追われているなら、無理に返し続ける前に、金融機関との交渉方法を見直す道もあります。
値上げの話がまとまらないうちに、月末の通帳の残高のほうが先に減っていくようなら、返事を待ちながら我慢を続けるのはやめましょう。
お金が残っているうちに動けば、続けるにせよ閉じるにせよ、地元のお店や取引先への迷惑を抑えながら、お金を残す段取りを考えられます。
値上げできないときの資金繰りや、銀行への返済の考え方については、次の記事でも取り上げています。
- 富山の金型メーカーが自己破産へ…価格競争で値上げできない下請けの立て直し方
- 価格転嫁率54.2%の現実…転嫁できない分を売上増で補うリスクと対応策
- 日銀の12月利上げが視野に…借入の利息が増えたら賞与や家計を削る前に銀行への返済を見直す
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主な取引先ごとの売上と毎月の支払い、借入の状況をうかがいながら、これからの進め方を一緒に考えます。
値上げを言い出せずにいる今の段階からでも、お気軽にご相談くださいね。
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