2026年10月1日、富山県魚津市の金型メーカーが事業を停止し、自己破産の申請準備に入ったと報じられました。
1974年の創業から50年以上続いてきた会社です。
報道によると、物価が上がるなかで同業他社との競争が激しくなり、価格競争に巻き込まれていました。
下請けの立場では、値上げをお願いしても、なかなか聞き入れてもらえない。
仕方なく経費を切り詰めて、なんとかしのいでいる。
そんな社長も多いでしょう。
節約だけでは乗り切れないとわかったとき、会社を立て直すために、社長は何から決めればいいのでしょうか。
富山の金型メーカーが自己破産へ
まずは、報道の要点を確認しておきます。
富山県魚津市の金型メーカーは1974年の創業。自動車部品やOA機器など、機械部品の金型をつくってきた。ピーク時に2億円強あった年間の売上は、2026年5月期には約1億2000万円まで減少。物価の高騰や同業他社との競争激化で価格競争に巻き込まれ、近年は赤字が続いて債務超過に陥っていた。資金繰りの見通しが立たなくなり、9月30日までに事業を停止し、自己破産の申請準備に入った。負債は約2億3000万円。
— 2026年10月、チューリップテレビ・北國新聞・FNNプライムオンラインの報道をもとに要点を整理
年間の売上は、ピークからおよそ4割減っています。
一方で、負債はいまの年間の売上の2倍近くあります。
価格競争で採算が悪くなり、赤字が続いた末の事業停止でした。

金型メーカーが価格転嫁できない理由
帝国データバンクが2025年10月に公表した調査では、金型メーカーの倒産と廃業が4年続けて増えていました。
2025年1-9月に発生した金型メーカーの倒産(負債1000万円以上、法的整理)は36件、休廃業・解散は90件で、合わせて126件が市場から退出した。倒産、廃業ともに過去10年で最多ペースとなり、前年同期比で4年連続の増加。2024年度の業績は「赤字」が37.3%で最も多く、「減益」(23.0%)と合わせた「業績悪化」が6割を占めた。金型製造業の価格転嫁率は2025年7月時点で37.0%と、製造業全体の水準(42.9%)を下回った。
— 帝国データバンク「『金型製造業』の倒産・休廃業解散動向(2025年1-9月)」(2025年10月公表)をもとに要点を整理
2026年に入ってからも、帝国データバンクの1月の倒産集計で、金型や金型部品などをつくる会社の倒産が目立って増えたと報告されています。
金型メーカーの出費のうち、上がっているのは、鋼材や樹脂などの材料費、人件費、そして金型の保管に必要な空調などの光熱費です。
2025年10月の調査では、その上がった分を納入価格に転嫁できるほどの交渉力がなく、自社の努力で吸収せざるを得なかった金型メーカーも多かったと分析されています。
大口の需要先である自動車向けの金型は、「脱エンジン」による長い目で見た需要の減少や、新車のモデルチェンジの遅れ、減産の影響を受けたとされています。
取引先の海外移転や内製化も、苦境の背景に挙げられています。
国内の仕事が減れば、残った仕事を同業どうしで取り合うことになる。
発注する側から見れば、ほかにも頼める会社がある状態です。
たちばなはじめも、中小の会社が値上げをお願いしても通りにくいと話しています。
大きな会社の値上げは通っても、小さな会社がお願いすると「お宅だけ据え置きで」と言われてしまうのです。
なぜ値上げと返済の見直しに踏み出せないのか?
ここからは、金型業界に限らず、価格競争に巻き込まれている下請けの会社に共通する話です。
値上げが通らないとき、多くの社長がまず取り組むのは節約です。
- 電気代を抑えるために、機械の動かし方を工夫する
- 残業を減らす
- 材料を少しでも安いところから仕入れる
どれも大切なことですが、上がり続けるコストと、上げられないままの単価との差を、節約だけで補いきるのは難しいでしょう。
しかも、毎月まとまって出ていく借入の返済と設備のリース料には、手をつけないままという会社が少なくありません。
たちばなはじめは、返済という大きな負担には手をつけず、効果の小さい経費ばかり削ろうとするのは、そこに漠然とした怖さがあるからだと話しています。
値上げを言い出せないのも、根っこは同じ怖さです。
「単価の話を持ち出したら、次から声がかからなくなる」
「約束どおりの返済を続けなければ、銀行との付き合いが終わってしまう」
怖さを避けて節約を重ねても、手元のお金は少しずつ減り続けます。
小さな問題を受け入れて大きな問題を防ぐ
たちばなはじめは、この怖さから抜け出すための考え方を「小難(しょうなん)をもって大難(だいなん)を制す」という言葉で伝えています。
大きな問題を防ぐために、小さな問題を先に受け入れる、という意味です。
トラブルを1つも起こさずに乗り切ろうとする会社ほど、あとで取り返しのつかない痛手を負う。
価格競争に巻き込まれた下請けにとって、小さな問題とは、単価の見直しを申し出て一部の仕事が離れていくことです。
無理な返済を続けないと決めて、新しい借入を受けにくくなることも、小さな問題の1つです。
新しく借りられなくなっても、手元にお金が残っていれば仕事は続けられます。
大きな問題とは、手元のお金が尽きて、事業を止めるしかなくなることです。
仕事が減るのも、銀行との関係が変わるのも、気持ちのうえではつらいもの。
ですが、気持ちの負担とお金の負担は、分けて考える必要があります。
離れていくのが、受けるたびに持ち出しになる仕事なら、仕事の量は減っても、手元に残るお金はむしろ増えます。
どの仕事がそれに当たるのかは、次の手順で確かめます。

価格競争で値上げできない下請けの立て直し方
やることは次の3つです。
- 直近に納めた型を1型ずつ取引先別に並べ、受け取る代金から、材料費や外注費、電気代など、その型のために出ていくお金を差し引き、残ったお金をかかった時間で割る
- 1時間あたりに残るお金が少ない仕事から順に、数字を見せて単価の見直しを申し出る
- 仕事が減った分に合わせて、機械の台数や工場の広さ、借入の重さを見直す
1つ目は、仕事ごとの損得を数字にする作業です。
社員の給料や機械の返済は1型ごとに分けにくいので、ここでは差し引かず、その代わりにかかった時間で割ります。
金型づくりは、職人と機械の時間をたくさん使う仕事です。
残るお金が同じでも、倍の時間がかかる型は、そのぶん職人の給料や機械にかかるお金を多く使っています。
たちばなはじめは、会社にとって大事なのは売上の大きさではなく、どれだけ効率よく利益を上げているかだと伝えています。
こうして並べると、時間ばかり取られてお金が残らない仕事が見えてくる。
2つ目の単価の見直しは、そうした仕事から順に切り出します。
そのときは、1つ目で出した数字を見せながら、次のように伝えます。
「この1年で材料費と電気代がこれだけ上がり、いまの単価だと、この型で残るのは1時間あたりこれだけです」
受けるたびに持ち出しになっている仕事は、見直しが通らなければ受けない。
離れられても会社のお金は減らないので、受け入れる問題は小さく済みます。
一方で、少しでもお金が残る仕事は、手放すと手元のお金がかえって減ることもあります。
仕事を手放しても、空いた機械や場所をそのままにしておけば、出ていくお金は変わらないからです。
そこで3つ目が、会社の大きさの見直しです。
取引先の海外移転や内製化で減った仕事は、待っていても戻ってくるとはかぎりません。
減った仕事量に対して、動いていない機械や使っていない場所がないかを確かめてください。
借入の返済が重く、手元のお金を削り続けているなら、無理な返済は続けず、金融機関との向き合い方を見直すときです。
先ほどの、新しい借入を受けにくくなるという小さな問題を受け入れるのは、この場面です。
受け入れる小さな問題は社長が自分で選ぶ
価格競争に巻き込まれると、目の前の仕事も、取引先も、銀行との関係も、すべてを守りたくなります。
ですが、すべてを無傷で守ろうとするほど、会社のお金は少しずつ削られていきます。
どの仕事から単価の話を切り出すのか、金融機関との向き合い方をいつ見直すのか。
受け入れる小さな問題を社長が自分から選ばなければ、大きな問題のほうが先にやってきます。
選ぶのが早いほど、受け入れる問題は小さくて済みます。
何年も赤字が続いてきた会社では、受け入れる問題は、もう小さくは済まないかもしれません。
それでも、倒産や破産をせずに立て直せる道まで、なくなったわけではありません。
価格転嫁や、取引先に頼りすぎる資金繰りについては、次の記事でもくわしく取り上げています。
- 価格転嫁率54.2%の現実…転嫁できない分を売上増で補うリスクと対応策
- テレビ制作会社の倒産が今年14件…発注元1社に頼る会社の資金繰りの守り方
- 中小製造業の事業再生──取引先依存と材料費高騰のなかで広げる選択肢
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