2026年9月、東京商工リサーチから、お弁当屋さんの倒産が今年8月までに83件にのぼり、過去最多だった昨年の89件を超えるのが確実だと発表されました。
2年連続で、過去最多を更新する見通しです。
倒産した店の中には、テレビやSNSで取り上げられた人気店もあれば、地元で長く親しまれてきた店もありました。
「うちの弁当は、味には自信がある」「常連さんがついてくれている」
そう言える店が、それでも潰れています。
もしあなたが弁当屋や総菜店、飲食店を経営していて、味や人気を支えに苦しい資金繰りを耐えているなら、少しだけ立ち止まって読んでみてほしいのです。
味で選ばれることと、店にお金が残ることは、別の話なんです。
では、なぜ味や人気があっても店は潰れるのでしょうか。
お弁当屋さんの倒産の中身から、順にお伝えします。
お弁当屋さんの倒産が2年連続で過去最多へ
まず、今回の発表の中身です。
2026年1-8月のお弁当屋さんの倒産は83件で、これまで最多だった2025年(1-12月)の89件を超えるのが確実。コメや鶏肉、小麦粉、食用油などの食材、ガス・電気料金、包装資材、人件費と、物価高でコストが軒並み上昇している。スーパーやコンビニ、宅配サービス、キッチンカーに加え、最近はドラッグストアも総菜分野に参入し、競合が多い。地区別では関東が35件(構成比42.1%)と約4割を占める。物価高で値上げは理解されても飲食店との差が縮まり、お弁当に求められる「割安感」を損なうと顧客離れを招く恐れがある。大手の弁当チェーンはセントラルキッチン方式で低価格を維持するが、小・零細規模の事業者はコスト上昇が直撃しており、倒産した企業は資本金1千万円未満が67.4%を占めた。コメ価格の下落や食品の消費税率引き下げは好材料だが、それ以上のコスト上昇が追い打ちをかけている。
— 2026年9月19日、東京商工リサーチの調査より
ここで見てほしいのは、倒産した店の顔ぶれです。
東京で人気だった海苔弁当の店は、素材にこだわった弁当が看板で、百貨店にも出店し、テレビやSNSでも取り上げられていました。
それでも、原材料や人件費の高騰に出店費用が重なって資金繰りが行き詰まり、今年7月末に閉店しています。
東京商工リサーチと帝国データバンクによると、この店を運営していた会社は、その後、9月30日に東京地裁から破産開始決定を受けています。
下町で長く親しまれた深川めしの弁当店は、コロナ禍で落ち込んだ売上の回復が遅れ、今年5月に行き詰まりました。
素材にこだわった店も、地元に愛されていた店も、倒産した83件の中に入ってしまった。
東京商工リサーチも、地元で愛されても採算を確保できなければ、お弁当屋さんの生き残りは難しい時代だと書いています。

お客は弁当を味だけで選んでいない
飲食店の社長がいちばん見誤りやすいのが、お客は「味」だけを買いに来ている、という思い込みです。
たちばなはじめは、これが致命傷になると言い切っています。
お客が店を決める理由は、味の良し悪しという一つの物差しでは測れない。
値段のわりに満足できるか、入りやすいか、近いか、すぐ出てくるか、そのときの用途は何か、そして懐具合はどうかなど、理由はさまざまです。
そうした要素が自分の生活とどれだけ噛み合っているかで、お客は店を選んでいます。
大手のハンバーガーや牛丼を世界一の美食だと言う人はいません。
それでも圧倒的に支持されているのは、「予想どおりの味、安さ、ボリューム」という安心感があるからです。
これは、お弁当屋さんにこそ当てはまる話ではないでしょうか。
お弁当に求められているのは「割安感」だと、東京商工リサーチも指摘しています。
500円か600円で腹一杯になって、午後の仕事のエネルギーになる。
お客が買っているのは、その安心感です。
コンビニやスーパー、ドラッグストアの総菜が選ばれているのも、味で勝っているからというより、近さと安さと速さがあるからです。
そうやって、お客の昼の選択肢に入ってきています。
「旨いものを作っていれば、お客は後からついてくる」という考え方は、もう昭和の発想です。
味は大事ですが、店が生き残る条件の一つに過ぎません。
「弁当の需要はなくならない」が危ない
もう一つ、弁当屋や飲食店の社長が頼りにしがちな考え方があります。
「食事をしない人はいないのだから、弁当のニーズはなくならない」という理屈です。
確かに、需要はなくならない。
が、店の数が多すぎるんです。
今回の倒産83件のうち、4割が関東に集中していました。
人が多く需要が大きい場所ほど、競合もひしめいているからです。
需要が消えないからこそ、スーパーもコンビニも宅配もキッチンカーもドラッグストアも参入してきます。
需要があることと、あなたの店が儲かることは、別の話。
そのうえ、大手チェーンはセントラルキッチンでまとめて作ることで、低価格を維持しています。
小さな店が同じ価格帯で戦えば、コスト上昇をそのまま利益で吸収するしかありません。
コメ、鶏肉、小麦粉、油、ガス、電気、容器、人件費と全部が上がっている中で、それでは利益が残らなくて当然です。
需要があるから続けられる、ではなく、需要があるからこそ競争が終わらないのです。
お弁当屋さんの商売は、そういう構造の中にあります。
苦しくなってからの売上策と値上げは効きにくい
では、コストが上がって利益が残らないとき、どうすればいいのでしょうか。
売上は「客数×客単価」ですから、伸ばす方法は、客数を増やすか、客単価を上げるかの2つしかありません。
まず、客数を増やす方法です。
チラシを配る、SNSに力を入れる、新しい場所に出店する、大口の配達を取りに行く、といった策です。
どれも、売上が入るより先にお金が出ていく。
百貨店にも出店していた人気の海苔弁当店でも、出店費用が資金繰りを圧迫した一因に挙げられています。
資金に余裕がないときの売上増加策は、増えた売上より先に、限られた資金が流出してしまう。
だから、たちばなはじめは、苦しいときの増販を「資金の先食い」だと言って、強く止めています。
次に、客単価を上げる方法、つまり値上げです。
物価高で、値上げそのものは理解されやすくなりました。
ただ、弁当の価格が上がるほど飲食店との差は縮まり、お弁当の割安感が薄れていきます。
大企業の値上げは通っても、小さな店の値上げは「それなら別の店で」と簡単に乗り換えられてしまう。
これが、中小零細の現実です。
それでも、客数を増やす策よりは、値上げのほうが資金の負担はまだ小さい。
残ってくれたお客を大事にしながら、上げた単価で誠実に商売をするほうが、新しいお客を追いかけるよりもお金は減りません。
経費はどうでしょうか。
仕入れを抑えれば味が落ち、人を減らせば社長と家族の負担が増えます。
多くのお弁当屋さんは、経費の削減はもうやり尽くしているはずです。
コメ価格の下落や食品の消費税率引き下げも好材料と言われますが、それ以上にコストが上がっているというのが東京商工リサーチの見方です。
値上げも、残った経費の見直しも、やるなら余力があるうちです。
手元が薄くなってからでは、どの手も効きが鈍ってしまう。
だから次に見るべきは、味の評判ではなく、いま残っているお金なんです。

味の評価ではなく残るお金で決める
たちばなはじめのもとには、飲食店の社長からの相談も多く寄せられます。
その席で社長は、食材へのこだわりや、お客の笑顔や、料理の評判を熱く語ります。
たちばなはじめは、こう答えます。
「料理が良いか悪いか、私には判断できません。事業の維持が難しくなり、資金繰りが苦しくなっていることを軽くするのが、私の仕事です」
厳しい言い方に聞こえるかもしれません。
でも、味の評価とお金の問題を切り分けないと、判断が遅れるんです。
ある居酒屋の社長は、金融機関から追加融資を断られ、リスケジュール(返済条件の変更)を考え始めた状態で相談に来ました。
毎月の返済は、元金と利息を合わせて約100万円。
それなのに社長は「少し考えます」と、答えを保留しました。
判断が1か月遅れれば、100万円の資金が逃げていきます。
手元の資金は水がめの水と同じで、注ぎ足されないまま耐えていれば、減る一方。
残っているうちに手を打たなければ、続けるにしても畳むにしても、打てる手は減ってしまいます。
お弁当屋さんも同じです。
見るべきなのは、味の評判でも常連の数でもなく、毎月いくら残っているか、あと何か月持つかという数字です。
そして、返す力が足りない店が銀行への返済だけを続ければ、手元のお金は減り続けます。
手元のお金が尽きる前に、無理な返済を続けず、金融機関との向き合い方を見直すことです。
具体的には、いまの返済を続けたらあと何か月で手元のお金がなくなるのかを数字で出し、返す力に合った形に組み直せないかを金融機関と話し合う。
お金が残っているうちなら、その話し合いの余地も、店を続ける道も、きちんと畳んで次に進む道も、まだ選べます。
資金繰りは、我慢してはいけません。
味は大事だが店を残すのはお金
お弁当屋さんの倒産83件の中には、素材にこだわった店も、地元で愛された店もありました。
味は大事です。
ですが、お客は味だけで店を選んでいませんし、需要がなくならない商売ほど競争は終わりません。
だからこそ、店を続けるかどうかは、味の評価ではなく、残るお金で決めてください。
「コメが下がれば楽になる」「消費税が下がれば客足が戻る」
そう考えて耐えている間にも、手元のお金は減っていきます。
好材料を待つのではなく、いま残っているお金で何が選べるかを、先に確かめておくことです。
追加の融資を断られていても、お金が残っているうちに動けば、選べる道はまだあります。
飲食店の資金繰りについては、次の記事でもくわしく取り上げています。
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資金繰りだけでなく、店を続けるか畳むかの判断のご相談も受け付けています。
味や人気を支えに耐えている店ほど、判断が遅れがちです。
少しでも心当たりがあれば、まずは一度、無料の個別相談でお話を聞かせてくださいね。
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