YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第17回のテーマは、政策金利の引き上げです。
日本銀行は2026年9月18日、政策金利を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げることを決めました。
金利が上がれば、資金繰りに影響が出る会社も少なくないはずです。
苦しくなったとき、ほかから借りたお金で返済を回していませんか。
事務局の谷本が聞き手となり、金利が上がるいま中小企業が一番やってはいけない資金繰りと、お金を借りる順番について、たちばなはじめに聞きました。
お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。
増えた利息は売上ではなかなか取り返せない
政策金利の引き上げを受けて、たちばながまず伝えたいのは、せめて金利の計算ぐらいはできるようにしておこう、ということです。
100万円を年利2%で借りていれば、利息は1年で2万円。
金利が上がればいくら増え、下がればいくら減るのか、その実数をつかんでおくことです。
たちばなの見立てでは、相談に来る社長の8割ほどが、この計算をできていません。
なんとなく「このくらいだろう」で済ませてしまっているのです。
では、増えた利息は売上で取り返せるのか。
たとえば、利息の支払いが月に5万円増えたとします。
この5万円を取り返すのに、売上を5万円増やせば済むわけではありません。
小売業の経験があるたちばなは、5万円の粗利を生むには50万円ほどの売上が必要になる、と例を挙げます。
人件費でも光熱費でも税金でも、上がったコストを売上で取り返すには、それだけ大きな労力がかかります。
しかも人口が減るなかで客数を増やすのは難しく、客単価もそう簡単には上げられません。
売上を伸ばしてコストの上昇を吸収できるのは、結局、資金力のある大企業や中堅企業のほう。
消去法で考えると、今の日本のビジネスは大きな会社に有利で、小さな会社には不利に働く、というのがたちばなの見方です。
まずはそこを理解したうえで、どんな事業戦略を取るかを考えることだと念を押します。

一番即効性があるのは金融対策
では、資金力の弱い中小企業は、何から手をつければいいのでしょうか。
事業戦略の選択肢はいくつも考えられます。
そのなかで一番即効性があり、経済効果も高く、事業を続けるうえでのリスクも小さいのは金融対策だ、とたちばなは考えています。
もっと言えば「借りた金を返すのをやめること」で、結局、最後はそこに行き着くのだといいます。
金利の上げ下げは、こちらで決められるものではありません。
そこは金融機関の判断に従うしかない部分です。
金利が上がった、下がったと泣いたり笑ったりするのは自由。
ただ、たちばなのもとに数多く寄せられているのは、ゼロゼロ融資の返済が苦しいという相談です。
ゼロゼロ融資が苦しいのは金利のせいではなく、そもそも元金を返せない収益体制になっているからだ、とたちばなは指摘します。
金利のわずかな上げ下げに一喜一憂しているうちは、資金力が弱いか、事業がこの先細っていくか、社長自身もなんとなく分かっているはずだ、とも見ています。
だったら、お金が残っているうちに次の手を打つ。
新しい事業戦略なのか、撤退なのか、事業転換なのか、再創業なのか、やり方はいろいろあります。
ただ、どの手を取るにしても、借入金の返済を抱えたままでよかったということにはならない、とたちばなは続けます。
返済額を軽くするリスケジュールでは経済効果が乏しく、返済をいっさいやめることにならざるを得ないと断言します。
不動産へのペナルティも受け入れたうえで、資金さえ残っていれば、不動産をあとで買い戻したり、借りて使ったりと、手はいくらでもあるという考え方です。
とはいえ、土地への思い入れが強く、そこを割り切れない相談者が多いそうです。
無理な返済で手元のお金を減らしてしまう前に、次にどうするかを決めておく。
借りて返す資金繰りは一番やってはいけない
ところが、資金繰りが苦しくなると、反対の方向に走ってしまう社長も少なくありません。
ほかから借りたお金で、返済を回してしまうのです。
たちばなは、この「借りて返す」資金繰りこそ一番やってはいけないと言います。
なかには、フリーローンのような金利の高い借入先からお金を引っ張ってきて、返済に回している人もいます。
金利7%、11%、13%といったお金を平気で借りること自体、金利の計算ができていない裏付け。
そういう借り方をしていては周りの人がかわいそうだ、と話しています。
お金を借りる順番は公庫が最初でカードローンは最後
そもそも、事業のお金を借りるときには順番がある、というのがたちばなの持論です。
これは、返済に回すお金をどこから借りるかという話ではありません。
勧める順番は次のとおりです。
- 日本政策金融公庫(公庫)
- 信用組合(信組)
- 信用金庫(信金)
- 地方銀行(地銀)
- メガバンク
- カードローン
カードローンやフリーローンを先に使うと、きちんと返していても、借りた履歴があるだけで政府系の金融機関からは借りにくくなるといいます。
だから、カードローンは本当に最後の最後でなければいけません。
それなのに、目先のお金に追われると、つい手っ取り早いほうへ手が伸びてしまいます。
先に手軽なお金を借りたことで、あとで身動きが取れなくなる会社もあるのです。
たちばな自身は、カードローン、フリーローン、キャッシング、リボ払い、消費者金融で、一度もお金を借りたことがない、と明かします。
欲しいものがあれば、貯めて買う。
社会人になってから30歳前後まで、ずっと年収200万円で暮らしてきたこともあり、我慢が癖になっているそうです。
いいものがあっても1週間待ち、それでも欲しければ買います。
「1週間待ったら欲しくなくなるんだよ」
ケチだからこそお金にシビアになれる、と本人も認めています。

公庫が最初なのは事業の羅針盤ができるから
では、なぜ公庫が最初なのでしょうか。
理由のひとつは、金利が低いことです。
そして、融資のハードルがある程度高く、きちんとした事業戦略を求められることです。
事業戦略を数字で組み立てるなかで、事業の羅針盤をつくる習慣が身につく、とたちばなは言います。
パッションで商売をしたい気持ちは分かる、と前置きしたうえで、商売は理屈だと言い切ります。
理屈ではなくパッションでやるから、うまくいかずに目先のお金に手が伸びてしまうのだと。
組み立てる理屈は、次の4つの順番です。
- 自分はいくら稼ぎたいのか
- そのためにどれだけの経費が必要か
- その経費をまかなうには、どれだけの売上が必要か
- その売上をつかむには、何人のお客さんから1人いくら受け取るのか
これを1枚の紙に、エクセルでいいのでまとめます。
あとは公庫に出向き、こういう事業でこう収益を上げたいと、熱意を込めて伝えます。
その熱意や話しぶりを見て、この人になら融資しようと思ってもらえるのではないか、というのがたちばなの考えです。
「融資って投資なんだもん」
融資が投資である以上、貸す側にこの人になら貸そうと思わせる理屈と熱意によって、お金の借り方は変わってきます。
たとえば、事業に1,000万円が必要だとします。
1,000万円をまるごと貸してほしいと頼むより、300万円は自分で用意したので残りの700万円を貸してほしいと頼むほうが、貸す側も貸しやすいのではないか。
親が子どもに、お小遣いを貯めて買いなさいと諭すのと同じで、そのほうが誠実さも伝わる、とたちばなは話しています。
公庫で羅針盤をつくってから、信組、信金、地銀、メガバンクへと進めば、基本的にはお金を借りやすくなるといいます。
ファクタリングに手が伸びる前に
手っ取り早いお金といえば、最近よく耳にするのがファクタリングです。
たちばなは、ファクタリングを「百害あって一利なし」と評し、モルヒネにたとえます。
最初のうちはよく効いても、だんだん効かなくなり、使う量がどんどん増えていく。
まじめに仕事をしている業者もいるだろうと断ったうえで、資金力の弱い会社は手を出すべきではなく、そこに手が伸びそうになったら事業をやめるときだ、とまで言っています。
「借りて返すっていうのは一番やっちゃダメ」
ファクタリングに限らず、これは広く言われていることなのに、ほとんどの人がやめられません。
その理由を、たちばなは勉強不足、見識不足だと言い切ります。
過去の失敗に学ぶことが少なく、トライアンドエラーのエラーを避けようとしすぎている、とも指摘します。
事業主はトライアンドエラーを繰り返して成長していくもので、かつて自身も失敗を経験したからこそ、そう考えるのだといいます。
資金繰りが苦しくなって、ほかから借りて回そうと考えるようになる前に、早めに相談に来てほしい。
お金が残っているうちに手を打てば、お金は残る。
お金が残らなくなってから動いたのでは、お金は残りにくい、とたちばなは話しています。
金利の上昇と資金繰りについては、次の記事でも取り上げています。
- 日銀が1.25%へ利上げ…金利上昇で資金繰りが苦しくなる会社の共通点と対策
- 金利0.5%の上昇で赤字企業は3割に迫る…利息の負担を利益でまかなえるか?
- 借入金利の上昇が本格化…銀行から金利引き上げを打診されても即答してはいけない
その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。
金利の上昇で返済が重くなってきた方や、お金の借り方に迷っている方のご相談も受け付けています。
資金繰りも早期発見・早期治療のつもりで、まずは一度ご相談くださいね。
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