あなたの会社は、金利が0.5%上がっても利益が残るでしょうか。
2026年8月、東京商工リサーチから、この問いを突きつける試算が公表されました。
有利子負債のある中小企業32万1,953社を対象に、金利が一律に上昇した場合の影響を試算。金利が0.50ポイント上昇すると、平均経常利益は4,725万円から4,642万1,000円に減少し、赤字企業の割合は27.7%から29.4%に悪化する。1.00ポイントの上昇では赤字企業率は31.0%に達する。
— 東京商工リサーチの調査(2026年8月公表)より
金利が0.5%上がるだけで、赤字の会社は3割に迫る計算です。
この数字を、他人事として読み流してはいけません。
では、なぜたった0.5%でここまで景色が変わるのでしょうか。
そして、自社が耐えられるかどうかは、どう確かめればいいのか、順番にお伝えしていきます。
金利の上昇はもう仮定の話ではない
まず押さえておきたいのは、この試算が「もしもの話」ではないということです。
日銀は今年6月に政策金利を1.00%へ引き上げました。
これを受けて、8月からは大手銀行の短期プライムレートも引き上げられています。
短期プライムレートに連動する変動金利で借りている会社は、これから返済額に上乗せが効いてきます。
つまり「0.5%の上昇」は、すでに現実として進み始めているのです。
しかも金利は、あなたが自由に決められないコスト。
仕入れ先なら変えられます。
経費なら削れます。
ですが、借入の金利だけは、世の中の流れで一方的に上がっていきます。
この性質の違いが、金利上昇の怖さです。
なぜ0.5%の上昇で赤字に転落するのか?
「たった0.5%で赤字になるのか」と疑問に感じるかもしれません。
カラクリは、いたってシンプル。
調査対象の中小企業は、平均で年間450万円ほどの利息をすでに払っています。
そこへ、仮に借入が1億円あれば、0.5%の上昇で年間の利息負担が50万円上乗せされます。
体力のある会社なら、吸収できる金額でしょう。
ですが、いまはただでさえ物価高で仕入れが上がり、人件費も上がり、利益が薄くなっている時期です。
ギリギリの黒字で踏みとどまっている会社にとって、年間数十万円の負担増は、黒字と赤字の境界線をまたぐには十分な金額なんですね。
もともと4社に1社以上が赤字だったところに、金利の上乗せが最後のひと押しになる。
これが「0.5%の上昇で赤字が3割に迫る」の正体です。
なお、この試算では業種による差も示されています。
とくに影響が大きいのは、借入に頼る割合が高い不動産業で、0.5%の上昇で赤字企業の割合が5ポイント以上悪化するとされています。
ただ、程度の差はあっても、借入のある会社なら業種を問わず利益が削られる構図は同じです。
自社の業種は関係ない、という思い込みがいちばん危ないのです。
借りたお金は利益を生んでいるか?
ここで、借入というお金の性質を思い出してほしいのです。
借入は、将来の利益から返すことを前提にしたお金です。
返済の原資は売上ではなく、利益。
ここを取り違えると、経営判断を誤ります。
売上がいくら立っていても、利益が出ていなければ、返済は会社の現金を削って進んでいきます。
だからこそ、確かめてほしいことがあります。
それは、借りたお金が利益を生む使われ方をしているか、ということです。
設備や人に変わって売上と利益を押し上げているのか、それとも過去の赤字の穴埋めに消えて、いまは利息だけを払い続けているのか。
同じ借入残高でも、この2つはまるで意味が違います。
利益を生んでいない借入にとって、金利は純粋な持ち出しです。
金利が上がる局面では、この持ち出しがじわじわと会社の現金を削っていきます。
そして怖いのは、利息の増加が損益計算書の上では小さく見えることなんです。
年間50万円の負担増は、月にすれば4万円ほど。
日々の資金繰りに紛れて、気づかないうちに現金だけが減っていた、という事態になりがちです。
支払利息と利益を突き合わせる
では、自社が金利上昇に耐えられるかどうか、どう確かめればいいのでしょうか。
難しい分析も、専門的な知識もいりません。
次の3つを紙に書き出すだけです。
- 借入をすべて一覧にする(借入先・残高・金利・変動か固定か)
- 年間の支払利息の合計を出す
- その金額を、直近の経常利益と並べてみる
そのうえで、残高に0.5%を掛けてみてください。
それが、金利上昇であなたの会社から出ていくお金の目安になります。
変動金利の借入が多いなら、この金額はそのまま現実になると考えておいたほうがいいでしょう。
経常利益に対してその金額が重いなら、利益の構造に手を付ける必要があります。
儲けを増やす方法は、突き詰めれば2つだけ。
売上を伸ばすか、経費を減らすかです。
業績に余裕があるうちなら、価格の見直しも、経費の組み替えも、じっくり取り組めます。
金利の負担分を吸収できるだけの利益体質へ、平常時のうちに近づけておくのです。
大切なのは、金利が上がりきってから慌てるのではなく、数字が悪くなる前に手を打つことなんです。
返済の負担は我慢してはいけない
もうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。
すでに「毎月の返済が重い」と感じているなら、その状態を我慢し続けてはいけません。
利息の負担が増えるなかで無理な返済を続けていると、手元の現金がどんどん減っていきます。
現金が減れば、仕入れや給与といった、事業を続けるためのお金にまで影響が及んでいく。
そうなってから動こうとしても、選べる道はわずかしか残っていません。
一方で、症状が軽いうちに動けば、選択肢は断然多いのです。
金融機関との交渉方法を見直す、支払いの優先順位を組み立て直して手元の現金を守る、といった道が残されています。
そうした対応は、体力が残っている段階だからこそ選べます。
逆に、対応を先送りするほど、選べる道は一つずつ減っていきます。
金利のある時代は、いよいよこれからが本番。
まずは、自社の支払利息と利益を突き合わせるところから始めてみてください。
もし数字を見て少しでも不安を感じたら、一度ご相談くださいね。
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