一時は年商58億円の老舗出版社が破産申請へ…事業撤退の判断基準と資金の残し方

売上が戻らない会社の撤退判断と、資金が残るうちに動く大切さを伝えるたちばなはじめ

2026年11月、バイクや自動車、釣りの雑誌で知られる創業67年の出版社が事業を停止し、破産の申請を弁護士に任せたと報じられました。

1995年4月期には、年間で約58億円を売り上げていた会社です。

たちばなはじめのもとに相談に来る社長からは、こんな言葉をよく聞きます。

「売上は少しずつ減っているけれど、今年も何とか乗り切れた」

「来年こそは持ち直すかもしれない」

では、どこまで続けて、どこで見切りをつければいいのか。

手元にお金を残すには、何に気をつければいいのか。

まずは、報道の内容からお伝えします。

目次

年商58億円だった老舗出版社が事業を停止

東京商工リサーチの発表の要点は、次のとおりです。

1959年の設立で、雑誌・書籍の出版を主体に、WEBメディア、動画配信、イベント開催などを展開していた。二輪車や四輪車、釣りを題材とする雑誌が人気を博し、1995年4月期には売上高約58億3,300万円をあげていた。

しかし、以降は出版物の需要減などにより減収が続き、赤字計上から債務超過となっていた。こうしたなか資金繰りが限界に達し、11月5日までに事業を停止。東京地裁への破産申請を弁護士に一任した。負債は調査中で、関係者によると破産申請までに2〜3カ月を要するもよう。

— 東京商工リサーチの発表(2026年11月5日)より要点を整理

報道では、需要が減った背景に、スマートフォンの普及なども挙げられています。

同じころ、富山県でも老舗の破産が報じられました。

富山県と石川県で学生服の卸を手がけてきた、創業から約80年の会社です。

負債は約1億5,000万円で、10月27日付で破産手続き開始の決定を受けました。

最盛期とみられる2013年7月期の年売上高は約5億2,500万円。しかし、営業エリアの少子化が進んだうえ、同業他社との競合が激化するなど市場環境が悪化した。2025年7月期の年売上高は約2億8,000万円まで減少し、採算確保に苦戦して債務超過に陥っていた。市場環境の改善が見込めないなかで資金繰りがひっ迫し、事業継続を断念した。

— 帝国データバンクの調べを伝えるチューリップテレビの報道(2026年11月5日)より要点を整理

雑誌と学生服。

扱うものはまったく違いますが、どちらも長い年月のなかで売上が減り続け、債務超過に陥り、資金繰りが行き詰まっています。

報道で分かるのはここまでです。

2社の社長がいつ何を考え、どんな手を打ってきたのかまでは分かりません。

ここからは2社の話から離れて、売上の減少が止まらない会社を営むあなたに向けた話です。

少しずつ減る売上は「まだ大丈夫」と思わせてしまう

売上が一度に半分になれば、どんな社長でもすぐに手を打つでしょう。

厄介なのは、少しずつ減っていくときです。

去年より少し減ったけれど、今年も給料は払えた。

そう言い聞かせているうちに、1年、また1年と過ぎていきます。

たちばなはじめのもとにも、「まだ大丈夫、まだ大丈夫」と言い続け、お金がなくなってから相談に来る社長が少なくありません。

3,000万円、5,000万円というお金を使い果たしてから、ようやく来る社長もいます。

売上が減っても、借入の返済は減らない。

本業の入金で必要な支払いをまかなえなければ、不足分だけ手元のお金は減っていきます。

それを新しい借入で埋めれば、その月は乗り切れても、あとで返す額が増えるだけです。

赤字が続いて債務超過になれば、銀行から新しく借りるのも難しくなります。

そして気づいたときには、選べる道がほとんど残っていない、、、

「今はまだ大丈夫」という考えは、裏を返せば「いずれ大丈夫ではなくなる」ということなんですね。

一度傾いた事業は元には戻らない

「いつか売上は戻る」

そう信じたくなるのも無理はありません。

ですが、たちばなはじめの考えは違います。

一度傾いてしまった事業は、元の環境に戻りにくいのではなく、戻らない。

たちばなはじめ自身、かつて営んでいたガソリンスタンドの商売は、努力を重ねても元には戻らず、17年前に見切りをつけました。

商いは需給バランス。

買う人が減ったり、買い方が変わったりすれば、1社の努力で需要を元に戻すことはできません。

だとしたら、考えるべきは売上をどう戻すかではなく、資金が残っているうちにどんな手を打つかです。

資金が多く残っているときの立て直しと、資金が少なくなってからの立て直しでは、どちらが早いかは言うまでもありません。

新しい事業を始めるにしても、元手になるのは手元のお金です。

事業をやめて次の仕事に移るにしても、そのあいだの暮らしを支えるお金が要ります。

過去5年の売上、元金と利息を除いた収支、本業の不足を埋める資金を確認する3つの手順

事業撤退の判断基準は返済を除いて儲けが残るか

では、続けるか撤退するかは、何を見て判断すればいいのでしょうか。

たちばなはじめの基準はシンプルです。

借入の元金と利息の支払いがなくなれば事業が回るなら、頑張って続ければいいのです。

元金と利息の負担がなくなっても回らないなら、早くやめて次の人生に進むべきです。

確かめる順番は、次のとおりです。

  1. 過去5年分の売上を書き出して減り方を見る
  2. 元金と利息を除いて1年間で本業にお金が残るかを計算する
  3. 本業の不足を本業以外のお金で埋めていないかを確かめる

1つ目は、一時的な落ち込みなのか、需要そのものが減っているのかを見極めるためです。

1年だけの減少なら、取引先の事情など、はっきりした理由があるかもしれません。

ですが、3年、5年と続けて減っているなら、買う人が減っている、使われ方が変わったといった変化を疑ってみてください。

2つ目は、1年間に入ってくるお金から、仕入れ、人件費、家賃などの支払いを引いて計算します。

ここに元金と利息は入れません。

お金が残るなら、問題は事業ではなく返済の重さです。

この場合は、会社をたたむ前に、金融機関との交渉方法を見直す道があります。

残らないなら、事業そのものの採算が合っていないということ。

返済がどうなろうと、そのままでは立ち行きません。

そして3つ目は、元金と利息を除いた本業の不足を何で埋めているかです。

社長個人の貯金、親族や知人からの借入、新しい借入、仕入れ先への支払いの先延ばしなどなど。

こうしたお金で本業の不足をしのいでいるなら、本業はもう自分の力で回っていません。

元金と利息を除いても本業にお金が残らないなら、撤退を考えるときです。

需要そのものが減っていて、本業以外のお金で穴を埋めているなら、待つほど手元のお金は減っていきます。

ただし、撤退は会社をたたむことだけではない。

撤退の準備で数字を洗い直すなかで、本業を時間をかけて縮小し、新しい事業に軸足を移して生まれ変わった会社も実際にあります。

守るのは看板ではなく今の家族の暮らし

数字で答えが見えても、長く続いてきた会社の社長にとって一番重いのは看板でしょう。

「親の代から続けてきた会社を、自分の代で終わらせるわけにはいかない」

「長年の取引先や従業員に、申し訳が立たない」

その気持ちは、痛いほどよく分かります。

たちばなはじめにも、先祖に申し訳が立たないという思いがなかったわけではありません。

それでも、今を生きているのは妻であり、子どもであり、自分自身です。

親や祖父が残してくれたものを維持するために、子どもや孫や配偶者がつらい思いをする。

それは、きっとご先祖様も望んでいないのではないでしょうか。

資金が残っているうちに動けば、従業員の給料や取引先への支払いを済ませたうえで、会社を閉じることもできます。

110年の歴史に自ら幕を下ろす決断をした社長がいます。

事業を続けるのは難しいと判断し、資金がある程度残っているうちに手を打ちました。

お金を残せたその社長は、いま別の分野の事業で再創業し、仕事に打ち込んでいます。

家族の暮らし、従業員と取引先への支払い、次の仕事の元手として必要なお金

資金の残し方は無理な返済を続けないこと

事業をやめるにしても、誰かに継がせるにしても、売るにしても、借入の片付け方まで考えておかなければ、お金は残りません。

返し続けても、借入はなかなか終わりません。

リスケジュールをしても、軽くなるのは毎月の返済額だけ。

破産すれば、お金はほとんど残せません。

売上が減っているのに、無理をしてでも返済だけを続けるのは、いちばんお金の残らないやり方です。

撤退を決めるときも、借入をどう片付けるかは、金融機関との交渉方法を見直すところから始まります。

苦しいときのお金の優先順位は、家族、従業員、お客、協力企業が先で、銀行への返済は一番最後です。

無理な返済で手元のお金を減らすより、家族の暮らしと、次の仕事に使うお金を守ってください。

資金がなくなってから働きに出るより、資金が残っているうちに動くほうが、人生の立て直しは早くなります。

アイデアと資金が残っていれば、もう一度事業を始めることもできます。

とはいえ、「もう遅いかもしれない」と思っている社長もいるでしょう。

そこからでも、諦めるのはまだ早いです。

私たちは、どんな状態からでも、倒産や破産をせずに解決できる可能性を最後まで探ります。

資金繰りは我慢してはいけません

売上の減少が続いて本業にお金が残らないなら、我慢を重ねるほど資金は減っていきます。

それでも、多くの社長が我慢してから相談に来ます。

「遅きに失する」という言葉はよく聞きますが、「早きに失する」という言葉は、まず聞きません。

売上が戻らないときの立て直しや、撤退の前に決めておきたいことは、次の記事でも取り上げています。

数字の見方や資金繰りの基本は、無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています(公式LINEを友だち追加するだけで届きます)。

教科書の内容を概論としてお伝えするセミナーも、定期的に開催しています。

たちばなスキームの全体像を、たちばなはじめが直接お伝えする場です。

無料の個別相談では、過去の売上と今の通帳の残高を見ながら、続けるか撤退するか、残せるお金はいくらかを一緒に考えます。

「今年も何とか乗り切れた」と思えている今のうちに、一度、数字を一緒に見てみませんか。


売上が戻らない会社の撤退判断と、資金が残るうちに動く大切さを伝えるたちばなはじめ

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