今の稼ぎで返していくとしたら、会社の借入はいつ終わるでしょうか。
毎月の返済額は分かっていても、会社の稼ぎで返し終えるまでに何年かかるのかまで答えられる社長は、多くありません。
その年数を数字で示すのが「債務償還年数」です。
計算してみると、借入を返し終わる年に、自分が何歳になっているのかも見えてきます。
あなたは、その年齢まで社長を続けているでしょうか。
債務償還年数とは?
債務償還年数は、いまの会社の稼ぎで借入を返し終えるまでに、何年かかるかを表す数字です。
銀行は融資の審査で、返す力を確かめる目安の一つとして、この年数を見ています。
社長にとっても、借入の重さを1つの数字でつかめる目安になります。
日本政策金融公庫の手引では、次のように説明されています。
債務償還年数とは、借入金等の返済しなければならない債務をキャッシュフローで除した年数のことです。この債務償還年数により現在の経営状況を維持すれば、あと何年で借入金を返済できるかといった想定もできます。
キャッシュフローとは、事業活動の結果として、手元に残った現金のことです。キャッシュフローは、簡便に経常利益と減価償却費の合計で計算することができます(厳密には税金の支払いも考慮しますので、「経常利益+減価償却費-税金支払額」の算式で求めます。)。
— 日本政策金融公庫『経営改善計画書策定の手引』より引用

債務償還年数の計算方法と目安
基本の式は、借入の残高を、1年に返済に回せるお金で割るものです。
1年に返済に回せるお金は、経常利益に減価償却費を足して出します(厳密には、そこから税金の支払いも差し引きます)。
減価償却費は帳簿の上では費用になりますが、その年に実際にお金が出ていくわけではないからです。
金融機関によっては、経常利益の代わりに営業利益を使ったり、借入から手元の現預金などを差し引いたりして計算することもあります。
使う数字は、どれも決算書から拾えます。
借入の残高は、貸借対照表の短期借入金や長期借入金などを足した額。
経常利益は損益計算書に、減価償却費は販売費及び一般管理費の内訳や、製造業なら製造原価の内訳などに載っています。
たとえば、借入の残高が6,000万円で、経常利益と減価償却費を足して年に300万円なら、6,000万円÷300万円で20年。
稼ぎをすべて返済に回しても、20年かかるということです。
一般には、10年以内がひとつの目安とされています。
日本政策金融公庫の手引では、経営を立て直す計画(経営改善計画)の目標の目安として「債務償還年数10~15年程度」が挙げられています。
15年、20年と長くなるほど、銀行からは返す力が足りないと見られやすく、新しい融資も受けにくくなるといわれます。
経常利益と減価償却費を足してもマイナスなら、年数もマイナス。
事業でお金が増えていないので、いまの稼ぎでは何年たっても返し終わらないということです。
そのとき返済に回しているお金は、手元の蓄えや、新しく借りたお金などから出ています。
返し終わるのは何歳のときか?
ここで、もうひとつ計算してほしいことがあります。
いまの年齢に、債務償還年数を足すのです。
60歳の社長で債務償還年数が20年なら、返し終わるのは80歳です。
その年齢まで、いまと同じように会社の先頭に立ち、稼ぎ続けられるでしょうか。
たちばなはじめは、50歳を過ぎた社長には「自分はいつまで社長でいられるのか」も考えてほしいと話しています。
人は必ず年を重ねますし、万一のときを自分で選ぶこともできないからです。
後継者に会社を渡すつもりなら、渡すときに残っている借入も計算しておきましょう。
65歳で渡すなら、渡すまで5年。
毎年300万円を返済に回せたとしても、6,000万円の借入のうち4,500万円が残ります。
返し終わる年齢が、社長を続けられる年齢を超えているなら、黄色信号です。
返し続けても借入は終わらない
債務償還年数は、契約で決まっている返済期間とは別の数字です。
契約では7年で返し終わる予定でも、債務償還年数が20年なら、稼ぎだけでは毎年の返済に足りません。
足りない分は、手元の蓄えを崩すか、新しい融資で埋めることになります。
返しながら、また借りる。
たちばなはじめは、「返し続けたら借金は終わらない。また借りるから」と言い切っています。
返済が進めば、銀行はまた貸そうとする、というのがたちばなはじめの見方です。
こうして残高がほとんど減らないまま、何年も返済を続けている会社は少なくありません。
銀行員に「全額を返し終えて、取引が終わった融資先はどのくらいありますか」と聞いてみてください。
「ない」か「ほとんどない」という答えが返ってくるはずだ、とたちばなはじめは話しています。
返済を続けることと、借入が終わることは、別の話なのです。

借入を残せば次の代はマイナスから始まる
返し終わる前に、社長が退く年齢を迎えたら、残った借入はどうなるのか。
会社を継ぐ人がいれば、その人が借入ごと会社を引き継ぐことになります。
継いだ人は、会社に残った借入を返していくところから経営を始めます。
たちばなはじめは、借入を残したまま社長に万一のことがあれば、その後始末は配偶者や子や孫が背負うことになると話しています。
「子や孫に借金を背負わせて、マイナスからスタートさせるのか。せめてゼロからスタートさせてやろう」と、たちばなはじめは社長に問いかけています。
子や孫はゼロからスタートさせる
債務償還年数は、銀行が融資を決めるための数字だけではありません。
社長が、自分の代のうちに借入をどうするかを考えるための数字でもあります。
計算した年数が、いまの年齢から見て現役のうちに終わらないなら、借入の返し方と会社の渡し方を、あわせて見直すときです。
借入を残したまま会社を渡すのではなく、渡す前に借入に決着をつけ、健全な事業だけを引き継ぐ道もあります。
ただ、その段取りにも時間とお金がかかります。
無理な返済で手元のお金を減らし続ける前に、一度ご相談ください。
私たちは、後継者に負債を引き継がせない事業承継の組み立てを、これまで多くのケースでお手伝いしてきました。
先代から引き継いだ借入金や、社長の万一への備えについては、次の記事でもくわしく取り上げています。
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