2026年8月、大分県で観光事業を手がけてきた関連3社が、破産手続きの開始決定を受けたと報じられました。
地域の寺院群をめぐる観光振興や地域活性化を担ってきた会社です。
観光振興や地域活性化事業を行ってきた会社と関係会社の計3社が、2026年8月18日付で破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は3社あわせて約4億円。2024年7月に3社を取りまとめていた男性が亡くなって以降、各事業が縮小し、資金繰りに行き詰まっていた。
— 2026年8月、地元紙および倒産情報サイトの報道より
目を引くのは、行き詰まった原因のほうです。
取引が急減したわけでも、大きな貸し倒れが起きたわけでもありません。
事業を束ねていた人がいなくなった。
そこから2年かけて、会社はゆっくり傾いていったわけです。
もし、あなたにいま万が一のことがあったら、会社はどうなるでしょうか。
会社は突然ではなくゆっくり止まる
社長がいなくなった会社が、翌週に倒れるわけではありません。
しばらくは動きます。
社員は出社しますし、受注済みの仕事も進みます。
止まるのは、その先です。
新しい仕事を取りに行く人がいない。
値段を決める人も、銀行からの連絡に答える人もいません。
そうやって、事業がひとつずつ縮んでいきます。
売上は落ちるのに、借入の返済も、家賃も、給与も、そのまま出ていく。
今回のケースで2年かかったのは、決してめずらしい話ではありません。
むしろ、この「じわじわ」が怖いところなんです。
急に潰れるなら、家族も社員もすぐに動きます。
でも、なんとなく回っているように見える期間が続くと、誰も決断できないまま現金だけが減っていきます。
そして気づいたときには、選べる道がほとんど残っていません。
社長ひとりに集中している会社は珍しくない
「うちはそこまで属人的ではない」
そう思われるかもしれません。
ですが、中小企業で社長に権限と情報が集まっているのは、むしろ当たり前の姿です。
金融機関との関係、主要取引先との約束ごと、価格の決め方、資金の出入りの管理。
このあたりは社長が自分で握っているという会社が、実際とても多いのです。
効率で言えば、そのほうが速いですから。
問題は、その状態を金融機関側もしっかり見ているということです。
金融機関が気にしているのは、社長が高齢である、後継者が決まっていない、業務が社長に集中している、といった点です。
社長に万が一のことがあったとき、この会社は返済を続けられるのか。
融資をしている側にとって、これは死活問題でもあります。
つまり「もしも」の備えは、家族のためだけの話ではありません。
いまの取引を続けていくための条件でもあるということですね。
引き継げないのは事業ではなくお金の情報
ここで一つ、気をつけていただきたいことがあります。
引き継ぎというと、多くの社長が「仕事の中身をどう教えるか」を考えます。
ですが、実際に家族や後継者が困るのは、そこではありません。
現場の仕事は、社員が案外きちんと覚えています。
本当に困るのは、お金まわりです。
次のようなことを、社長以外の誰かが答えられるかどうか。
- どの金融機関から、いくら借りていて、毎月いくら返しているのか
- 連帯保証をしているものはあるか。担保に入れている不動産はどれか
- 主要な取引先との支払い条件と入金のタイミングはどうなっているか
- 通帳・印鑑・ネットバンキングは誰がどこで管理しているか
- 毎月かならず出ていくお金は、全部でいくらか
これらが社長の頭の中にしかない状態だと、万が一のときに家族は何もできません。
銀行や取引先、税理士から次々と連絡が入り、根掘り葉掘り聞かれます。
でも、なにも知らないのですから答えようがないですよね。
わからないまま言われるがままに動いて、状況がどんどん悪くなっていってしまいます。
そういうケースは実際によくあります。
難しく考える必要はありません。
紙にメモする程度でかまわないので、まずは書き出してみてください。
そのうえで、保管場所と、いざというときに誰に連絡するかを家族に伝えておきます。
これだけでも、家族の負担は大きく変わります。
事業の後片付けまで段取りをつける
もう一つ、どうしてもお伝えしておきたいことがあります。
50代を過ぎたら、「自分はいつまで現役の社長でいられるのか」を一度考えてみてほしいのです。
人は必ず歳を重ねますし、そのタイミングを自分で選ぶことはできません。
だからこそ、事業の後片付けまで含めて段取りをつけておく必要があるということなんですね。
たちばなはじめが繰り返し伝えているのは「段取り八分、仕上げ二分」という言葉です。
物事は、準備の段階でほとんど決まってしまいます。
これは事業の終わり方についても、そのまま当てはまります。
とくに気をつけたいのが、負債を残したまま万が一を迎えるケースです。
会社の借入に社長個人が保証していれば、その保証は原則、家族が引き継ぐことになります。
事業は縮んでいるのに、負債と保証だけが家族の側に残る。
これが、いちばん避けたい形です。
「もっと早く手を打っておけばよかった」
私たちのもとへ来られる方から、何度も聞いてきた言葉です。
後継者に負債を引き継がせない承継の設計は、各分野の専門家チームと一緒に組み立てることができます。
そうした支援を、これまで多くのケースで重ねてきました。
準備は元気なうちにしかできない
今回のニュースが示しているのは、シンプルな事実です。
事業を束ねている人がいなくなると、会社の資金繰りは必ず影響を受けます。
そして、その影響は数年かけて表に出てきます。
だから、いま元気なうちに手をつけておくしかないのです。
後継者を誰にするかが決まっていなくても、できることはあります。
借入と保証の全体像を書き出す。
お金まわりの情報を家族と共有する。
そして、負債が残ったままの状態を、いまのうちに手当てしておくことです。
この順番で進めれば、万が一のときに家族が背負うものはずっと軽くなります。
逆に、元気なうちに何もしなければ、選べる道は年々狭くなっていきます。
資金繰りだけではなく、事業承継のご相談も受け付けています。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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