2026年10月、帝国データバンクが「物価高倒産」の最新の動きを解説しました。
今年1-8月の物価高倒産は762件で、このペースが続けば、年間で初めて1,000件を超える可能性が高いとしています。
物価高倒産とは、燃料や原材料などの仕入れ値が上がった分を売値に転嫁できず、利益が減って行き詰まる倒産のことです。
仕入れ値の上がり方と売値の上がり方の差は2021年から広がり始め、2022年に大きく開きました。
「値上がりは何年も前から続いているのに、なぜ今になって倒産が増えているのか」
そう感じた社長もいるでしょう。
その答えは、業績が悪くなってから倒産するまでには時間差があり、そこへ今年の値上がりが重なったことにあります。
では、まだお金が残っている会社は、その時間差のあいだに何を確かめ、どう動けばいいのでしょうか。
物価高倒産は1-8月で762件と過去最多ペース
まずは、帝国データバンクの解説から、数字を確認しておきます。
2026年1-8月の物価高倒産は762件で、前年同期の615件から147件(23.9%)増えた。このペースで推移すると、年間では2018年の集計以降で初めて1,000件を超える可能性が高い。年間の件数は2024年が933件、2025年が949件と、最多を更新し続けてきた。2026年は4月に108件と集計開始以来の最多を記録し、6月に113件、7月に121件と、単月の最多を更新した。業種別では建設業が212件(27.8%)で最も多く、小売業176件(23.1%)、製造業130件(17.1%)と続く。負債額別では1億円未満が433件(56.8%)を占める。
— 2026年10月、帝国データバンクの解説(ダイヤモンド・オンライン)をもとに要点を整理
8か月で762件ですから、月に平均で95件ほどのペースです。
半分以上は負債1億円未満の倒産で、帝国データバンクも、体力の乏しい小さな会社ほど物価高の影響を大きく受けているとしています。
建設業、小売業、製造業と、業種もさまざまです。

倒産は業績の悪化から遅れてやってくる
帝国データバンクは、会社は業績が悪くなっても、すぐに倒産するわけではないと説明しています。
資産を売る、人を減らす、金融機関に返済条件の緩和(リスケジュール)を頼む、新しい事業に乗り出す。
こうした手で立て直しを図り、それでもうまくいかなかったときに、行き詰まります。
業績の悪化から倒産までには、たいてい時間差があるということです。
そのうえで、いまの物価高倒産について、次のように分析しています。
仕入れ値と売値の上がり具合の差を表す指数(仕入販売ギャップ)は、2022年に10を超え、おおむね13〜14で推移した。その後は縮小傾向となり、2025年12月には6.4まで縮んだが、コロナ禍と比べれば高止まりといえる状態で、もともと収益性の低い企業にはボディブローとなって資金繰りが悪化した。いま起きている物価高倒産の多くは、今年に入ってからの物価上昇が直接の原因というより、高止まりしてきた物価高を背景に収益が悪化していたところへ、さらに追い打ちをかけられて資金繰りに行き詰まったものと捉えるべきだという。
— 2026年10月、帝国データバンクの解説(ダイヤモンド・オンライン)をもとに要点を整理
仕入販売ギャップは、帝国データバンクが毎月の調査をもとに出している指数です。
数字が大きいほど、仕入れ値の上がった分を売値に転嫁できていないことを示します。
差が縮んだといっても、コロナ禍のころと比べれば大きいままです。
2026年に入ってからは中東情勢が緊迫し、4月から6月にかけて、この差は再び10を超えました。
言い換えれば、物価高で利益が少しずつ削られていた会社に、今年の値上がりが追い打ちをかけた、ということです。
値上がりが落ち着くのを待っても資金繰りは戻らない
ここからは、値上がりが続くなかで、まだお金が残っている会社の話です。
値上がりが落ち着くのを待てば、会社のお金は元に戻るのでしょうか。
帝国データバンクは、中東情勢による値上がりの分は、秋口以降に価格転嫁が進むとみています。
ただし、転嫁が進むとみられているのは今年の値上がりの分で、これまで転嫁しきれずに減ったお金が戻ってくるわけではありません。
小売業やホテル・旅館、住宅メーカーなど、消費者に近い商売ほど、お客離れを心配して値上げに悩んでいるとも指摘しています。
そのうえで、物価高倒産はまだしばらく高い水準で推移するとみておくべきだ、としています。
値上がりの分を取り戻せていない会社にとって、落ち着くのを待つ時間は、そのままお金が減っていく時間。
たちばなはじめは、社会や経済の悪化のせいにばかりしていても仕方がない、と話しています。
物価の行方を見ているだけでは、自社のお金の減り方は変わりません。
大事なのは、自社でできる対処法を持ち、実際に動くこと。
転嫁しきれない差額で毎月いくら消えているか?
対処法を考える前に、まず確かめておきたいのが自社の数字です。
たちばなはじめは、儲かっているかどうかは数字でしか判断できない、と伝えています。
仕入販売ギャップと同じ考え方で、自社の決算書から確かめてみましょう。
出し方は次のとおりです。
- 値上がりが本格化する前の2021年ごろと直近とで、売上に対して仕入れや材料、燃料、電気代などが占める割合を、決算書や試算表から出す
- 割合が増えた分に直近の月の売上を掛けて、売値に転嫁しきれずに毎月消えているお金の目安をつかむ(値上がりのほかに、売れる量や商品の組み合わせ、材料の使い方が変わった分も含まれます)
たとえば、2021年ごろは売上の50%だった仕入れや材料、燃料、電気代が、いまは55%になっているとします。
月の売上が300万円なら、増えた5%分の15万円が毎月消えています。
半年で90万円。
1年続けば180万円にもなります。
この毎月の15万円が、じわじわ効いてくるボディブローです。
1年前の同じ時期とも比べれば、15万円のうち、今年の値上がりで増えた分の目安もわかります。
今年の値上がりの分だけを値上げで取り戻しても、それより前から埋まっていない分は残ったまま。
あわせて、いまの本業で残るお金で、毎月の借入の返済をまかなえているかも見ておきます。
足りていなければ、足りない分だけ、通帳の残高は毎月減っていきます。
値上がりが落ち着いたように見えても、転嫁しきれていない差額が埋まらないかぎり、その分のお金は毎月消え続けます。

差額の大きい商品と取引から手をつける
差額の目安がわかったら、次はどこから手をつけるか。
商品ごと、取引先ごと(工事なら現場ごと)に、仕入れ値の上がり方と売値の上げ幅を並べてみると、差額の大きいところと小さいところが見えてきます。
並べるときは、今年の値上がりの分だけでなく、それより前から埋まっていない分も含めて見ておきます。
値上げは、差額の大きい商品や取引から先に進めます。
値上げできない商品や、値上げを受けてもらえない取引のうち、仕入れ値の上がった分で利益が残らなくなったものは、量を減らすことや、やめることも含めて考えます。
売上が減るのが不安で、利益の残らない商品や取引まで残したくなる気持ちはよくわかります。
ですが、たちばなはじめが勧めているのは、売上が減っても利益が増える「減収増益」を目指す考え方。
値上げや取引の見直しが利益に表れるまでには、時間がかかります。
そのあいだの返済が重く、差額を埋めるまでお金がもちそうにない会社もあるでしょう。
返済条件の緩和を頼んでも、軽くなるのは毎月の返済額だけで、転嫁しきれていない差額はそのまま残ります。
返済が重くて苦しいなら、無理な返済を続けてお金を減らす前に、お金があるうちに相談に来てください。
差額の埋め方と返済の重さを、一緒に考えます。
時間差のうちに差額を埋める
「値上がりは何年も前から続いているのに、なぜ今になって倒産が増えているのか」
その答えは、値上がりで削られてきた利益が倒産につながるまでの時間差と、そこへ重なった今年の値上がりにありました。
見方を変えれば、その時間差は、まだお金が残っているうちに動ける時間でもあります。
差額を数字で確かめ、差額の大きいところから埋めていきましょう。
すでにお金が心細くなっている方にも、その時間はまだ残っています。
諦めなければ、必ず道はあります。
物価高と価格転嫁については、次の記事でもくわしく取り上げています。
- 物価高倒産が5月1.4倍…価格転嫁できないときに考える効果的な資金の使い道
- 価格転嫁率54.2%の現実…転嫁できない分を売上増で補うリスクと対応策
- 富山の金型メーカーが自己破産へ…価格競争で値上げできない下請けの立て直し方
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