YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第19回のテーマは、前受け金に頼る工務店が倒産する前に打っておきたい次の手です。
事務局の谷本が聞き手となり、たちばなはじめに聞きました。
あなたの会社でも、お客さんからいただいた前受け金で、日々の支払いを回していませんか?
そうした社長へのたちばなの答えは、借入金の返済よりも先に、前受け金をお客さんにお返しする、というものでした。
お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。
建築業界は大手と中堅しか残らない
谷本がまず切り出したのは、ハウスメーカーの倒産が急増していて、建築の途中で工事が止まったというニュースもよく見かける、という話です。
実際に東京商工リサーチは、2026年7月に次のような集計を発表しています。
コスト高や人手不足などでハウスメーカー(木造建築工事業)の倒産が急増している。2026年上半期(1-6月)は118件発生し、前年同期から約9割増えた。
— 東京商工リサーチ「ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃」(2026年7月17日)より引用
上半期で100件を超えたのは、2013年以来13年ぶりのことです。
この状況を、たちばなはこう言い切ります。
「結論から言うと、もう建築業界も、もう中手(中堅)、大手しか残らないよね」
そもそも日本は、人口が減っている国です。
地方では空き家が増え、たちばなの地元の人口3万7千人ほどの街にも、草木やツタが絡まった空き家がたくさんあるそうです。
人口が減っても、建物はそのまま残るもの。
そのため地域によっては、状態のいい中古の物件も数多くあります。
金利も上がり、先の見通しにくい世の中で、30年、50年のローンを組んで家を建てることにも、たちばなは首をかしげています。
人が減り、家が余っていくなかで残れるのは、大手と中堅だけということです。
職人も資材も大手と中堅に流れていく
建設会社は、外注の職人さんなど外部の協力者の力を借りて、1軒の家を建てるのが基本です。
ところが今は、その職人さんの確保が大変になっています。
たちばなの親戚の家は、大工さんが捕まらず、小さな家なのに完成が予定より5か月ほど遅れました。
大工さんにも、いろいろな建設会社から声がかかります。
職人さんも仕事ですから、少しでも条件のいい現場を選ぶのは当然のこと。
そうなると、どうしても大手や中堅の会社に人が集まっていきます。
谷本も、こう話していました。
「日当も上がってるし、そもそも職人さんがほんと減ってますね」
親戚の家を建てた地元の建設会社の社長も、施主に向かって、作業員が集まらないとこぼしていたと、たちばなは明かします。
「いやいや言うなよって思うんだけど、普通に言っちゃうっていうね」
資材にも、同じことが起きています。
少し前には、プラスチックなど石油化学製品のもとになるナフサが不足し、資材が入らないことが大きなニュースになりました。
ニュースは落ち着いても、資材の値段は上がっています。
売る側だって、少しでもいい条件を出してくれるところに売りたいもの。
そのため資材はまず大手や中堅に流れ、小さな会社が買おうとすると、大手がマージンを乗せた値段で回ってくる、というのがたちばなの見方です。

前受け金は借入金の返済より先にお客さんへ返す
職人も資材も思うように集まらないなかで、資金力の弱い小さな建築会社ほど、お客さんから前受け金をもらってしまいがちです。
実際、たちばなのもとには、資金繰りが苦しくなり、前受け金を受け取ったまま相談に来る工務店の社長もいます。
「お客さんからもうお金もらっちゃってるんですよ」
そう打ち明ける社長に、たちばなはこう伝えています。
「だったらなおさら借金返すのやめて、その分で前受け金返せ」
借入金の返済をあと回しにしてでも、まずはお客さんに前受け金をお返しする、ということです。
東京商工リサーチは、ハウスメーカーが倒産したときには、先に代金を払った施主も債権者となり、工事が止まることも多いと伝えています。
前受け金を受け取ったまま現場が止まってしまえば、いちばん困るのはお客さんです。
前受け金を求める業者はお客さんの目にどう映るか
ここで、たちばなが家を頼む施主に向けて話していることも見ておきます。
工務店の社長にとっては、自分の会社がお客さんにどう見られうるかを知る手がかりになります。
家を建てる施主の側は、勝手が知れている地元の会社に頼みたがるものです。
ところが、そうした会社に頼んでも、作業員が捕まらないことがあります。
そんな施主に、たちばなはこう呼びかけます。
「大手にせよとまでは言わないけれども、業者さんの選定は慎重になさってくださいね」
地元や知り合いの会社となると、どうしても規模の小さな会社になりやすく、そのぶんリスクが大きくなるからです。
たちばなは、工務店の社長から相談のメールが届くと、時間のあるときにその会社のホームページを見るようにしています。
すると、小さくて資金力の弱いところほど、立派なホームページを作っていることが多いといいます。
施主がホームページで業者を調べても、書いてあるのは基本的にいいことばかり。
だからこそ、打ち合わせを重ねるなかで前受け金の話が出てくる業者には、気をつけたほうがいいとたちばなは話します。
もちろん、前受け金を求める理由にきちんとした合理性があり、それならお支払いしますと納得できるなら、話は別。
けれども「ある程度お金入れてくれないと作業が進みません」と言ってくる業者とは、あまり付き合わないほうがいい、というのがたちばなの意見です。
施主には、一生に一度の買い物だからこそ、多少コストが上がっても大手や中堅、地元でも有力な会社に頼み、身内や血縁の近さで業者を選ばないよう勧めています。
たちばな自身、地元には建設会社の専務や社長の知り合いが何人もいます。
それでも自分が家を建てるなら、大手のハウスメーカーに頼み、知り合いの会社が下請けで入れるよう口添えするかもしれない、とまで言います。
家が建たないのでは困るから。
工務店の側に置きかえれば、前受け金をお願いするときに、お客さんが納得して払えるだけの理由を示せるかどうかが分かれ目です。
お金を入れてもらわないと作業が進まない、としか言えない状態なら、お客さんから避けられる側に回りかねません。
あなたの会社は、お客さんの目にどう映っているでしょうか?
資格のある社長には就職という道もある
たちばなの見立てでは、建築・建設の業界はすでに斜陽化しており、業者の淘汰や合併・吸収もこれから進んでいきます。
建築士や施工管理の資格を持っている社長には、たちばなはこう声をかけることがあります。
「事業主それやってうまくいかないんだったら、就職されたらどうですか」
今はどこも人が足りないので働き口はあるし、50代半ばならまだまだ中堅だ、と逆に励ますのです。
そのうえで、残った負債をどうするかを、破産を前提にせずに一緒に考えていきます。
事業がうまくいかなくても、資格と経験を生かして働く道があります。

前受け金を返せるうちに次の手を打つ
たちばなは、請け負う側も依頼する側も、慎重になってほしいと話します。
聞き手の谷本も、もともとは工務店の代表を務めていました。
その谷本が「お客さんとかに迷惑をかけちゃう前に、まずは早めに相談してほしいですよね」と言うと、たちばなはこう応じました。
「お客さん側も業者側もお金が残ってるうちに次の手を打つっていうね、予防線を張っておくっていうことが大事だと思いますよ」
谷本も「現場が途中で止まっちゃって、それこそニュースになっちゃったら、もう仕事できませんもんね」と続けます。
前受け金で資金繰りを回している工務店なら、その前受け金をまだお客さんにお返しできるうちに、お返しの段取りと、事業をこのまま続けるかどうかを考えておきたいところです。
前受け金と資金繰りの関係や、建設業の倒産については、次の記事でも取り上げています。
- エステ・脱毛サロン倒産が過去最多ペース…前受金で資金繰りが狂う理由と対策
- 建設業の倒産が13年ぶりに1000件超…資材高と人手不足に負けない資金繰りとは?
- リフォーム会社の倒産が過去最多ペース…値引きする前に1件で残るお金を計算する
その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。
前受け金を受け取ったまま資金繰りが苦しくなっている、工務店や建設業の社長からのご相談も受け付けています。
お客さんに迷惑をかけてしまう前に、まずは一度ご相談くださいね。
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