社長が急に亡くなり、残された家族が会社を引き継ぐことがあります。
従業員の暮らしや取引先とのつきあいを思い、すぐにはやめずに会社を続けている家族は、少なくありません。
返済に会社のお金が足りない月は、亡くなった社長が遺した預金や、家族が受け取った保険金から埋めていきます。
私たちのもとには、そうして会社を回している家族からの相談も寄せられます。
もしあなたがいま同じ立場にいるなら、一度立ち止まってほしいのです。
そのお金は、会社の返済のために遺されたものでしょうか。
遺されたお金で会社の返済を埋めていないか?
社長が亡くなった直後の会社は、何もかもが手探りです。
社長が一人で担っていた仕事の中身は、家族には分からないことも多いでしょう。
それでも、従業員への給料も、仕入れ先への支払いも、待ってはくれません。
金融機関への返済も、決まった日に決まった額が口座から引き落とされていきます。
会社の口座で足りない月は、どうするか。
家族が自分の口座から、会社にお金を入れます。
その元手になっているのが、遺された預金や保険金です。
こうしていると、会社の通帳の上では、支払いも返済も滞りなく回っているように見えます。
ですが、実際に起きているのは、会社の稼ぎで返しきれない分を、家族のお金が肩代わりしているということです。
遺されたお金には限りがあり、肩代わりを続ければ、月を追うごとに目減りしていきます。
なお、亡くなった社長の預金を会社に入れることについては、これから入れる場合も、すでに入れてしまった場合も、早めに弁護士や司法書士、税理士などの専門家に確かめてください。
預金の扱いは相続の手続きとも関わり、その手続きには期限が決まっているものもあるからです。
亡くなった社長は何のためにお金を遺したのか
遺されたお金で会社の返済を埋めていた方に、たちばなはじめが投げかけた問いがあります。
亡くなった方は、遺したお金が返済に消えていくより、家族のこれからの暮らしに使われることを望んでいたのではないでしょうか。
たちばなはじめが伝えているお金の優先順位は、次の5つです。
- 家族
- 従業員
- お客
- 協力企業
- 銀行
家族・従業員・お客・協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後にする、というのがたちばなはじめの考え方です。
遺されたお金は、この順番でいえば、まず家族のためのお金です。
そのお金で毎月の返済を埋め続けているなら、順番が逆になっているということです。
会社をこのまま続けてよいのかどうかを見極めるには、会社の通帳を使います。

続けるかどうかは事業そのものが稼げているかで決める
確かめることは2つあります。
1つ目は、会社の稼ぎだけで、毎月の支払いと返済をまかなえているかどうかです。
2つ目は、まかなえていないときに、足りない原因が事業の稼ぎにあるのか、返済の重さにあるのかです。
そのために、社長が亡くなってからの月ごとに、会社のお金が増えたか減ったかを、通帳から書き出します(まだ数か月分しかなくてもかまいません)。
そのとき、あなたが会社に入れたお金(遺された預金や保険金を含む)や、会社が受け取った保険金、新しく借りたお金は、入ってきたお金から除きます。
社長が亡くなったことで一度だけ出ていったお金(家族に払った死亡退職金や、社葬の費用など)も、出ていったお金から除きます。
これらを入れたままだと、会社の本当の稼ぎが見えなくなってしまうからです。
1か月の数字だけで決めず、何か月かの流れで見ます(取引先からお金が入る時期と仕入れ先へ払う時期のずれや、設備の買い替え、税金の支払いで、月ごとの増減はぶれるためです)。
たとえば、ある月に会社の口座へ入ったお金が450万円で、そのうち80万円があなたの入れたお金だったとします。
出ていったお金が430万円なら、通帳の上では20万円増えています。
ところが、あなたが入れた80万円を除くと、入ってきたお金は370万円になり、その月の会社のお金は60万円の減少。
この60万円が、会社の稼ぎだけでは足りていない額です。
次に、出ていった430万円のうち、100万円が毎月の返済だったとしましょう。
返済を除くと、出ていったお金は330万円なので、会社のお金は40万円増えていることになります。
こうした月が続いているなら、事業そのものは稼げていて、重いのは返済のほうです。
返済の重さをどうにかできれば、事業そのものは続けて立て直せる見込みがあります。
遺されたお金で返済を埋め続けるより、返済との向き合い方を早めに相談してほしいのです。
反対に、足りない額が返済の額より大きいときは、どうか。
返済を除いても会社のお金が減り続けるなら、事業そのものが稼げておらず、採算が合っていないということです。
採算が合っていない事業を、続ける意味はない。
たちばなはじめは、そう言い切ります。
続けたい気持ちと家族にかかる負担
とはいえ、数字だけで割り切れないのが、家族が会社を継いだときの難しさです。
「夫や父が築いてきた会社を、自分の代で終わらせたくない」
「長く勤めてくれた従業員を、路頭に迷わせるわけにはいかない」
こう考えて、なかなかやめる決断ができない気持ちは、本当によくわかります。
ただ、気持ちで続けた月の分だけ、遺されたお金は減っていきます。
代表を引き継いだときに、会社の借入の連帯保証人にもなっている方がいます。
その場合、遺されたお金を会社に入れたうえに、会社が返せなくなったときには、保証人として返済を求められることもあります。
遺されたお金と家族自身のお金を、二重に失うことになりかねないのです。

返済を除いても減り続けるなら区切りをつける
事業そのものが稼げていないと分かったら、区切り方を考えるときです。
たちばなはじめは、社長を亡くして会社を継いだ方に、こう伝えています。
「仮に資金が目減りしていく状態なら、資金が残っているうちに見切りをつける事も出来ます。」
区切りのつけ方には、会社をたたむほかに、事業を小さくして続ける、事業を誰かに譲るといった道もあります。
保証人になっている場合は、区切り方によって、家族の手元に残せるお金が変わることもあります。
だからこそ、区切り方は一人で決めず、数字と保証の両方を見ながら考えることが大切です。
いまなら、家族の暮らしを支えながら、この先のことを落ち着いて考えられます。
会社を続けると決めるなら、会社の稼ぎで回る形に変える。
区切ると決めるなら、遺されたお金がまだあるうちに決める。
すでに遺されたお金の多くを返済に使ってしまった方も、そこから考えられる道はあります。
続けるにしても区切るにしても、亡くなった社長が遺したお金は、まず家族のこれからのために使ってほしいのです。
会社を継いだあなたが、これから備えておきたい借入や保証の整理については、次の記事でも取り上げています。
- 社長の急逝で会社は突然止まる…借入と個人保証の整理は元気なうちに
- トップの死去から2年で観光3社が倒産…お金の情報を家族に共有し社長の万一に備えよ
- 相続税の対象が初の10%超…社長の相続は税金より会社の借入と保証の決着を先に
会社と社長にお金を残す考え方は、たちばなはじめの無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています(公式LINEを友だち追加するだけで届きます)。
その考え方の全体像を、たちばなはじめが直接お伝えするセミナーも、定期的に開いています。
無料の個別相談では、会社の通帳や決算書を見ながら、保証のことも含めて、続けるか区切るかを数字で確かめます。
遺されたお金をまた会社に入れようとしているなら、まず会社の通帳を、私たちにも見せてください。
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