企業価値担保権が今年5月開始…経営者保証なしの融資を待つ前にやるべきこと

「会社の借金に、自分の個人保証さえ付いていなければ…」

そう感じたことのある社長は多いのではないでしょうか。

2026年5月、経営者保証に頼らない融資を後押しする新しい制度「企業価値担保権」が始まりました。

ところが2026年8月に公表された調査では、この制度を「知らない」と答えた企業が76%にのぼることがわかったのです。

まずは、制度の中身から確認していきましょう。

目次

企業価値担保権とはどんな制度か?

企業価値担保権とは、不動産などの個別の資産ではなく、技術やノウハウ・将来の収益力まで含めた「事業全体の価値」を担保にできる新しい制度です。

これまでの融資は、不動産担保や経営者保証(社長の個人保証)に頼る形が中心でした。

担保にできる不動産を持たない会社は、社長が個人保証を差し入れて借りるしかない。

その慣行を見直し、事業の中身や将来性を見て貸す融資へ切り替えていこう、というのがこの制度の狙いです。

ですが、肝心の認知はまだ広がっていません。

2026年8月、東京商工リサーチが企業向けアンケートの結果を公表しました。

企業価値担保権を「知っている」と答えた企業は全体の23.2%にとどまり、76.7%が「知らない」と回答した。企業規模別では、大企業の認知率34.8%に対して中小企業は22.2%。活用については「活用したい」が13.4%で、69.6%は「理解を深めてから判断したい」としている。

— 東京商工リサーチの調査(2026年8月公表・有効回答5,819社)より

制度の恩恵を受けやすいはずの中小企業ほど、まだ知られていないのが実情なんです。

制度ができても保証が自動で外れるわけではない

ここで、気をつけていただきたいことがあります。

企業価値担保権ができたからといって、いま差し入れている経営者保証が自動で外れるわけではない、ということです。

この制度は、これから組む融資で少しずつ使われていくものです。

金融機関側の体制づくりもこれからで、どの会社でもすぐに使えるとは限りません。

そして、すでにある借入の個人保証はそのまま残ります。

「そのうち保証のいらない時代が来るだろう」と待っているだけでは、あなたの保証は何ひとつ変わらないんですね。

むしろ、経営者保証に頼らない融資へ世の中が動いているいまこそ、自社の保証を見直すチャンスなのです。

経営者保証を見直すならリスケジュールに入る前

では、いまの保証を見直すにはどうすればいいのか。

手がかりになるのが「経営者保証に関するガイドライン」です。

保証なしの融資や保証の見直しを金融機関と話し合うための条件は、大まかに言うと次の3つです。

  1. 法人と社長個人のお金がきちんと分かれていること
  2. 利益や財務内容から返済能力が確認できること
  3. 金融機関へ適時適切に情報開示していること

この3つを満たしている会社は、保証を外す方向で金融機関に交渉する余地が出てきます。

ここで大切なのが、動くタイミング。

返済が苦しくなってリスケジュール(返済条件の変更)に入ってしまうと、「返済能力」の要件を満たしにくくなり、保証を見直す道は事実上閉ざされてしまいます。

リスケジュールは月々の負担を軽くする一方で、保証を外す選択肢を手放す行為でもあるんです。

もうひとつ、見落とされがちな現実があります。

リスケジュールを実行し、一定期間をやり過ごしたあとに通常弁済へ戻して、利益を出して存続している会社は、現場の経験則としてほとんど存在しません。

もし信じられなければ、お付き合いのある銀行員や税理士の方に「リスケから通常弁済に戻して存続している会社はどのくらいありますか?」と聞いてみてください。

おそらく多くの方が「ほとんどない」と答えるはずです。

だからこそ、保証を見直すならリスケジュールを考え始める前に動く必要があります。

とはいえ、すでにリスケジュールに入っている方も、諦める必要はありません。

選べる手は少なくなるとはいえ、まだ動ける余地は残されています。

保証に頼らない融資を引き寄せるのは日々の数字

たちばなはじめ自身、かつて6億円の負債を個人保証で背負い、返済が立ち行かなくなった経験があります。

その局面を切り抜ける支えになったのは、金融機関との交渉方法を見直すという発想でした。

だからこそ、保証や担保の問題は追い詰められてからでは選択肢が狭くなる、と繰り返しお伝えしています。

そして、先ほどのガイドラインの3つの条件を見てもわかるとおり、保証に頼らない融資を引き寄せる土台は、特別なテクニックではありません。

法人と個人のお金を分け、数字で返済能力を示し、聞かれる前に情報を出す。

つまり、日々の数字を社長自身が把握し、いつでも金融機関に見せられる状態にしておくことなんです。

企業価値担保権にしても、金融機関が見るのは「この事業が将来どれだけ現金を生むか」です。

数字、とくに現金の流れから目をそらさないことが、新しい制度の時代になっても変わらない、融資の土台になります。

制度を待つのではなく今の保証と向き合う

企業価値担保権は、経営者保証に頼らない融資へ向かう大きな一歩です。

ですが、制度が広がるのを待っているだけでは、いま差し入れている保証は変わりません。

業績や時間に余裕があるうちに、自社の借入と保証の状況を一度棚卸ししてみてください。

保証を見直せる状態なのか、リスケジュールを考える前にやれることは何かが見えてくるはずです。

考え方の全体像は、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています。

定期開催のセミナーでは、会社と社長にお金を残す基本を、たちばなはじめが直接お伝えしています。

もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。


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