2026年11月、アイスクリーム用のコーンを作ってきた食品メーカーが事業を停止し、破産申請の準備に入ったと報じられました。
報道によると、人材の採用が進まず、採算が悪化していたといいます。
「募集をかけても人が来ない」
「辞めた人の穴を、残った人の残業で埋めている」
あなたの会社でも、そんな状態が続いているかもしれません。
人手不足は、仕事が回らなくなるより前に、売上から残るはずの利益を少しずつ削っていきます。
では、人が足りない会社は、何から確かめればいいのでしょうか。
人が採れずに採算が悪化したアイスクリーム用コーンのメーカー
報じられた内容をまとめると、次のとおりです。
1961年に設立され、東京に本社を置き、宮城県大崎市の工場でアイスクリーム用のコーンを中心に洋菓子なども製造。大手アイスクリームメーカーなどにも販路があり、1990年代前半には年間売上高約22億円をあげていた。近年は人材の採用が進まずに採算が悪化し、粗利益が赤字となるなど厳しい経営が続いていた。資金繰りが限界に達し、11月2日までに事業を停止して破産申請の準備に入った。負債総額は約2億9000万円。
— 2026年11月4日の東北放送・東日本放送の報道(東京商工リサーチの情報を含む)より要点を整理
粗利益とは、売上から、材料費や工場で働く人の人件費など、製品を作るためにかかった費用を引いた残りのことです。
それが赤字だったということは、売った代金で、作るための費用をまかないきれていなかったことになります。
報道で分かるのはここまでです。
ここからは、この会社の話から離れて、人が足りないまま仕事を回している会社に向けた話をします。
人手不足倒産は2026年度上半期も過去最多
人が足りないことが原因の倒産は、全国で増え続けています。
帝国データバンクの調査では、次のような結果が出ています。
従業員の退職や採用難、人件費の高騰などを原因とする「人手不足倒産」(法的整理、負債1000万円以上)は、2026年度上半期(4〜9月)に225件。前年同期の214件から11件増え、年度上半期として4年連続で過去最多を更新した。業種別では建設業が70件で最も多く、サービス業が63件で続いた。従業員10人未満の小規模な会社が全体の約8割を占める。
— 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2026年度上半期)」と、同社が2026年11月にダイヤモンド・オンラインへ寄せた解説より要点を整理
帝国データバンクは同じ解説で、人が集まらずに仕事が回らなくなるケースだけでなく、人件費や外注費の上昇に耐えられずに収益力を失うケースも少なくないと伝えています。

人が足りないと粗利が先に削られていく
製品を作る仕事や、現場で人が手を動かす仕事では、人手が減ると次のようなことが起こります。
- 作れる量が減って、売上が減る
- 足りない人手を残業や派遣、外注で埋めると、1つ作るのにかかる費用が上がる
- 人をつなぎとめるために給料を上げれば、それも作る費用に乗ってくる
- それでも、家賃や設備のリース代のように毎月決まって出ていく費用は、ほとんど減らない
売上が減るうえに、1つあたりに残る粗利も薄くなります。
そこへ、減らない費用がのしかかってくるわけです。
しかも、材料や給料の支払いは先に出ていき、代金が入ってくるのはそのあと。
作るための支払いが代金を上回る仕事を続ければ、作れば作るほど、手元のお金は減っていってしまいます。
ここで、「売上を増やして取り返そう」と考える社長は多いでしょう。
ですが、もともと小売業を営んでいたたちばなはじめは、自身のYouTubeでこう話しています。
「15万円コストが上がったっていうことは、150万円の売上を増加させなきゃいけないっていうミッションに変わる」
動画の例では、従業員30人の給料を1人5,000円ずつ上げると、それだけで15万円のコストアップになります。
売上が増えれば、仕入れや材料の費用も一緒に増えます。
売上から仕入れや材料の費用を引いて残るのが1割ほどの商売なら、15万円を取り返すのに、その10倍の売上が要るということです。
そのうえ人が足りない会社では、注文を増やせば、そのぶん残業や外注もまた増えていきます。
たちばなはじめが「やってはいけないこと」に挙げているとおり、資金繰りが苦しいときに、売上を増やして取り返そうとしてはいけません。
今の人数で利益を残す3つのステップ
人が足りない会社がやることは、次の3つです。
- 今いる人数で、残業や外注に頼らずにこなせる仕事の量を出す
- 今受けている仕事を、製品や取引先ごとに、残る粗利とかかる人手で書き出す
- 粗利が赤字の仕事や手間のわりに粗利が残らない仕事は、値上げを申し入れるか受ける量を減らして、1つ目の量に収める
1つ目は、仕事の量を人数から逆算することです。
注文が来るたびにすべて受けて、足りない分を残業や外注で埋めていると、割高な費用がどんどん積み上がっていきます。
まずは、今の人数で無理なくこなせる量を、月ごとの数字で出しておきましょう。
2つ目は、今受けている仕事のうち、どの製品、どの取引先の仕事に粗利が残っているかを見ることです。
売上から材料費や外注費、その仕事にかかった人件費を引くときは、残業代や派遣の費用も忘れずに入れます。
売上の大きい取引先でも、それらまで入れて計算し直すと、粗利がほとんど残っていない、ということもあるからです。
あわせて、その仕事に毎月どれだけ人手を取られているかも書き出してください。
同じ粗利でも、手間のかかる仕事ほど、限られた人手を多く使ってしまうからです。
そして3つ目は、粗利が赤字の仕事や、手間のわりに粗利が残らない仕事の扱いを決めることです。
値上げを申し入れて粗利が残る値段にしてもらうか、それが難しければ受ける量を減らします。
減らす目安は、1つ目で出した量に収まるところまでです。
「長く付き合ってきた取引先の注文は断れない」
「仕事を減らしたら、残ってくれている従業員に申し訳ない」
その気持ちは、本当によくわかります。
ですが、材料費や人件費の支払いが代金を上回る仕事は、受ければ受けるほど、その従業員の給料を払うお金まで細らせてしまいます。
人が限られているなら、粗利の残る仕事に人を回したほうが、売上は減っても、手元に残るお金はかえって増えることがあります。
3つのステップを終えたら、残った粗利の合計で、家賃やリース代、事務の給料など、仕事の量にかかわらず毎月出ていく費用をまかなえるかを確かめます。
ここでは、借入の返済は入れずに計算してください。
返済まで入れてしまうと、本業は回っているのに返済が重いだけの会社まで、「もう続けられない」に見えてしまうからです。
返済を入れずに計算しても毎月の費用をまかなえないときは、作るものや拠点を絞り、会社の大きさそのものを今の人数に合わせていくことになります。

残ってくれている人の給料は銀行への返済より先に確保する
返済を入れずに計算すれば回るのに、返済を入れると足りない会社は、お金の使い道の順番を見直すところから始めます。
たちばなはじめのお金の優先順位は、次の5つです。
- 家族
- 従業員
- お客
- 協力企業
- 銀行
家族・従業員・お客様・協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後にする。
これが、たちばなはじめのコンセプトです。
人が足りない会社にとって、残ってくれている従業員は何よりの支え。
返済のために給料の支払いを遅らせれば、その人たちまで離れていき、作れる量はさらに減ってしまいます。
「銀行への返済を後回しにしたら、もうお金を借りられなくなる」と思われるかもしれません。
でも、返済に足りるお金が本業から残らないまま、足りない分を借りては返すをくり返しても、返さなければならないお金が膨らんでいくだけです。
無理な返済を続けず、金融機関との交渉方法を見直す。
そうして返済の負担を軽くできれば、その分を従業員の給料や、粗利の残る仕事に回せます。
「人も集まらないし、もう続けられない」と感じていても、受ける仕事を今の人数に合わせ、給料を返済より先に確保すれば、今の従業員と続けていける余地はあります。
人が採れないなら会社の大きさを人に合わせる
人手不足は、すぐには解消しません。
だからこそ、人が集まるのを待つのではなく、今の人数で利益が残る大きさに会社を合わせることが先決です。
売上の大きさより、受けた仕事に粗利が残るかどうか。
人が足りないときほど、その数字を見て、受ける仕事を決めていきます。
人手不足倒産については、次の記事でもくわしく取り上げています。
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