2026年10月30日、山梨県で創業から100年を超えるタクシー会社が事業を停止し、自己破産の申請準備に入ったと報じられました。
負債は約2億円の見込み。
大手の参入などで競争が激しくなるなか、燃料の高騰も重なって資金繰りが悪化したと伝えられています。
あなたは、燃料代の請求書が届くたびに、「燃料さえ下がれば、まだやっていける」と自分に言い聞かせてきたかもしれません。
ですが、燃料代が下がれば本当に立て直せるのかどうかは、数字を出してみなければ分かりません。
確かめないまま待っているあいだにも、手元のお金は毎月出ていきます。
最盛期に50台を走らせた山梨のタクシー会社が事業停止
山梨放送と読売新聞は、帝国データバンク甲府支店の発表として、次のように伝えています。
1925年に創業し、甲府市や甲斐市、中央市などの「甲府交通圏」でタクシー事業を営んできた。最盛期には営業車両が50台、ドライバーは100人ほどにのぼり、地域でも大手のタクシー会社だった。
その後、県外の大手の参入や統廃合が進み、競争が激しくなった。観光客向けのサービス「山梨おもてなしタクシー」に取り組むなどしてきたが、燃料の高騰もあって資金繰りが悪化。10月30日までに事業を停止し、自己破産の申請準備に入った。負債は約2億円で、今後変わる可能性がある。
— 2026年10月30日・31日の山梨放送・読売新聞オンラインの報道より要点を整理
観光客向けのサービスなどで手を打ってきた会社でも、競争と燃料高が重なり、資金繰りが続かなくなりました。
ここからは、競争と燃料高のなかで車を走らせているタクシー会社に共通する、お金の話です。
運賃は自社の判断だけでは上げられない
タクシー会社の資金繰りを苦しくしやすいのは、売値にあたる運賃を自由に決められないことです。
タクシーの運賃は、道路運送法にもとづき、原則として国の認可を受けて決めるしくみになっています。
運賃を変えるときも同じです。
では、燃料代や人件費が上がったらどうなるか。
その分を自社の判断だけで運賃に上乗せすることはできません。
運賃を見直せるまでのあいだ、上がった費用は会社の利益を削って吸収するしかないのです。
しかも、タクシー会社には、走らせる台数を減らしてもすぐには減らないお金があります。
営業所や車庫にかかる費用、配車や事務を受け持つ人の給料、車を買ったときの借入の返済やリース料などなど。
お客が減って車を減らしても、こうしたお金は毎月出ていきます。
1台あたりで見れば、車が減るほど負担は重くなっていきます。
そこへ大手が同じ区域に入ってくれば、限られたお客を取り合うことになります。
それでも、通院や買い物の足を担っているという思いから、苦しくても車を走らせ続ける社長は少なくありません。
燃料高は、こうした苦しさの上に重なってきます。

燃料代が下がるのを待てる会社かを数字で見分ける
あなたの会社は、燃料代が下がるのを待てば立て直せる会社なのか。
それとも、燃料代が下がっても苦しいままの会社なのか。
見分けるためにやることは、次の3つです。
- 燃料代を高くなる前の単価に置き換えて本業のお金の出入りを出し直す
- 今の燃料代のままで本業に残るお金と返済額を比べる
- 今の燃料代が1年続いたときに返済を除いて手元に残るお金を出す
1つ目は、燃料代だけを高くなる前の単価に置き換えて、本業のお金の出入りをもう一度出してみることです。
直近の数か月分の運賃収入から、燃料代や給料、整備費や保険料、リース料、営業所の費用など、車を走らせるのに出ていくお金を引きます。
借入の返済は、ここには入れません。
燃料の使用量はそのままにして、単価だけを差し替える。
それで入ってくるお金のほうが多くなるなら、燃料代が下がれば本業は持ち直す見込みがあります。
反対に、単価を戻しても出ていくお金のほうが多いなら、燃料代が下がるのを待っても立て直せません。
お客の数に対して、車や人、営業所にかかるお金が重すぎるということです。
2つ目は、今の燃料代のままで本業に残るお金を出し、毎月の返済額と比べることです。
本業ではお金が残るのに、車を買ったときの借入などの返済まで払うと足りなくなる。
それは、返済の組み方が今の稼ぎに合っていないということ。
燃料代が下がるのを待つより、金融機関との交渉方法を見直して、返済の重さを稼ぎに合わせるほうが先です。
返済を守るために、ドライバーの給料や整備工場への支払いを後回しにすれば、車を走らせること自体ができなくなってしまいます。
たちばなはじめのお金の優先順位では、家族・従業員・お客・協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後です。
そして3つ目は、今の燃料代が1年続いたとして、返済を除いて手元にいくらお金が残るかを出すことです。
燃料代がいつ下がるのかは、誰にも分かりません。
返済は2つ目で見直すものとして分けておき、本業だけで毎月減っているお金の額に12をかけ、通帳の残高から引いてみてください。
1つ目の計算で、燃料代が前の単価に戻れば本業にお金が残ると分かり、しかも1年以上もつなら、数字を毎月出し直しながら待つこともできます。
1年もたずにお金が尽きるようなら、待っている時間は残っていません。
つなぎのために新しく借りても、返済が増えるだけです。
返済を見直して手元のお金を残すか、次に挙げる道を今のうちに考えておく必要があります。

燃料代が下がるのを待てない会社が今のうちに選べる道
1つ目の計算で、燃料代を前の単価に置き換えても足りなかった会社。
3つ目の計算で、返済を除いても手元のお金が1年もたないと分かった会社。
どちらも、待っているあいだにドライバーの給料や営業所の費用が毎月出ていき、手元のお金は減り続けます。
「燃料さえ下がれば」「前のようにお客が戻ってくれば」と考えたくなる気持ちは、痛いほどわかります。
ですが、それを待っているうちに、お金のほうが先に尽きてしまいます。
そのしわ寄せを受けるのは、社長本人よりも、家族や従業員です。
このまま走らせ続けるのでなければ、選べる道はいくつかあります。
- 車の台数だけでなく、営業所や車庫、配車の体制までお客の数に合わせて絞り、本業でお金が残る形に戻せるかを試す
- 同じ地域の同業者に、ドライバーやお客を引き継いでもらう
- 手元にお金があるうちに、会社のたたみ方を決める
どの道を選ぶにしても、手元にお金が残っているほど選べる幅は広がります。
車両の入れ替えや大きな修理でまとまったお金が出ていく前に、どの道を選ぶかを決めておくことをおすすめします。
なお、本業ではお金が残り、返済が重いだけの会社なら、たたむことを考える前に、返済の見直しが先です。
燃料の値段より先に自社の数字を見る
燃料の値段は、どれだけ努力しても自分では動かせません。
あなたにできるのは、3つの数字を出して、待つのか動くのかを決めることです。
数字を確かめないまま、燃料さえ下がればと我慢を続けるほど、選べる道は細くなっていく一方。
資金繰りは、我慢してはいけません。
手元のお金が心細くなってからでも、ドライバーの次の職場やお客の足を守りながら、倒産や破産をせずに済む道は、まだ探せます。
タクシー会社ならではの事情や、燃料高に苦しむ運送会社の資金繰りについては、次の記事でもくわしく取り上げています。
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