2026年9月、北海道の運送会社が会社更生法の適用を申請したと報じられました。
北海道内の全域で、120台を超える車両を使って運送を手がけてきた会社です。
報道によると、過去の設備投資の負担が重く、売上が減るなかで燃料価格の高騰も重なって、資金繰りが悪化していました。
運送業では、燃料代やドライバーの給料が上がっても、運賃はすぐには上げられません。
そのうえ、トラックの返済やリース料は、毎月決まった額が出ていきます。
運送会社の資金繰りが苦しくなったとき、社長は売上を増やす前に何を見直せばいいのでしょうか。
北海道の運送会社が負債約11億円で会社更生法を申請
報道の要点は、次のとおりです。
北海道北斗市の運送会社は1978年の設立。北海道内の全域を営業エリアに、120台を超える車両で事業を展開し、2023年3月期には約17億円の売上があった。しかし過去の設備投資の負担が重く、売上も減少。2025年3月期の売上は約16億円で、最終赤字となっていた。そこへ燃料価格をはじめとするコストの高騰が重なり、2026年9月9日に東京地裁へ会社更生法の適用を申請した。負債は約11億円。
— 2026年9月、JC-NET・東京経済ニュース・不景気.comの報道をもとに要点を整理
なお、運送の業務は続けていると報じられています。
売上が2年で約1億円減り、赤字に陥るなかで、燃料をはじめとするコストの高騰も重なりました。
一方で、設備投資のために抱えた負担は、売上が減っても軽くはなりません。
入ってくるお金が減り、出ていくお金は増える。
運送会社の資金繰りが一気に苦しくなるのは、この2つが同時に起きたときです。
運送業の倒産が2026年に入り増加
苦しんでいるのは、この1社だけではありません。
2026年9月30日には、佐賀県鳥栖市の運送会社が事業を停止し、自己破産を申請する準備に入ったと報じられました。
下請けが中心で利幅が薄かったところに、燃料の値上がりに見合う価格転嫁が進まなかったといいます。
売上も減り、2026年3月期には債務超過に陥っていました。
東京商工リサーチの調査では、トラック運送を中心とする道路貨物運送業の倒産が、2026年に入って増えています。
2026年1-4月の「道路貨物運送業」の倒産は108件(前年同期比11.3%増)で、2年ぶりに100件を上回った。「人手不足」倒産は23件と、集計を開始した2013年以降で最多を更新した。軽油価格は、2026年2月末の1リットルあたり140円台から、4月末には150円台後半に上昇。4月の調査では、道路貨物運送業の97.0%が、中東情勢で「事業活動にマイナス影響が出ている」と答えている。
— 東京商工リサーチの調査(2026年5月公表)をもとに要点を整理
帝国データバンクの集計でも、2026年上半期の「運輸・通信業」の倒産は231件と、前年同期の195件から18.5%増え、上半期としては2年ぶりに前年を上回りました。
東京商工リサーチの1-4月の集計では、倒産した道路貨物運送業の約半数が従業員5人未満の会社で、負債1億円未満が7割を占めています。
小さな運送会社にとって、決して遠い話ではありません。

運送会社の資金繰りが苦しくなる理由
運送業には、資金繰りを苦しくする事情がいくつも重なっています。
1つ目は、燃料代。
軽油の値段は中東情勢などで大きく動きますが、運送会社が自分で決めることはできません。
値上がりした分を運賃に転嫁できなければ、トラックを走らせるほど利益が削られていきます。
2つ目は、ドライバーの確保。
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働にも上限が設けられ、特別な事情がある場合でも年960時間までとなりました。
1人が走れる時間に限りができたぶん、同じ量を運ぼうとすれば、ドライバーを増やす必要が出てきます。
人手不足のなかで人を集めるには、給料も上げなければなりません。
そして3つ目が、トラックや倉庫にかかるお金。
トラックは1台でも高額で、借入やリースで用意する会社が多いものです。
台数を増やせば、毎月の返済とリース料もそのぶん重くなります。
本来なら、こうした負担は運賃に転嫁したいところです。
ですが、中小の運送会社が荷主に値上げを切り出すのは簡単ではありません。
「運賃を上げてほしいと言えば、ほかの運送会社に仕事を回される」
そう考えて、上がったコストを自社でかぶり続けている社長も少なくないでしょう。
苦しいときに仕事とトラックを増やしてはいけない
資金繰りが苦しくなると、「もっと仕事を取って売上を増やせば、何とかなる」と考えがちです。
新しい荷主を探し、トラックを増やし、ドライバーを雇う。
ですが、お金が苦しいときに、仕事やトラックを増やして売上を伸ばそうとしてはいけません。
仕事やトラックを増やせば、必ず先にお金が出ていくからです。
トラックの頭金やリース料、ドライバーの採用費と給料、そして燃料代。
運賃が入ってくるのは、そうした支払いを済ませたあとです。
手元のお金が少ないときにこれをやると、出ていくお金が先に膨らみ、資金繰りはかえって苦しくなってしまいます。
かといって、経費を削るのにも限りがあります。
燃料代や車両の整備費は削れず、ドライバーの給料を下げれば人が辞めていく。
これ以上となれば、社長が自分の給料を減らして家族の暮らしを切り詰めるか、残ったドライバーに無理をさせるしかありません。
ドライバーを確保する給料の元手は、結局のところ運賃しかありません。
運賃を上げられないまま、借入の返済のために走り続けているなら、一度立ち止まって数字を確かめるときです。

トラックを走らせるほどお金が減っていないか?
確かめることは、次の3つです。
- 毎月の売上から燃料代や人件費、高速代などの経費(リース料は除く)を払ったあとに残るお金と、借入の返済・リース料の合計を比べる
- トラックごと、荷主ごとに、燃料代やドライバーの人件費、車両の返済・リース料を差し引いても、お金が残っているかを見る
- いまのペースでお金が減り続けたら、手元のお金が何か月でなくなるかを出す
1つ目で、返済とリース料のほうが多ければ、その差の分だけ手元のお金は毎月減っています。
2つ目でお金が残らない荷主やトラックが見つかったら、運賃の見直しを申し入れるか、その仕事から手を引くことを考えるときです。
仕事やトラックを減らすのは勇気がいりますが、赤字の仕事を続けるほど会社の預金は減っていきます。
3つ目で、手元のお金が数か月でなくなるとわかったら、いまの形で走り続けるかどうかを決めなければなりません。
赤字の仕事をやめるのか、トラックを減らすのか、事業を譲るのか、たたむのか。
どれを選ぶにしても、お金が残っているうちでなければ選べません。
返済のために走り続けてはならない
返済が苦しくなると、銀行に返済を待ってもらうリスケジュール(返済条件の変更)を考える方も多いでしょう。
ただ、リスケをしても、トラックや倉庫のために借りたお金そのものが減るわけではありません。
軽くなるのは、毎月の返済額だけです。
燃料代や人件費が上がり、運賃が上がらないままなら、手元のお金は減る一方です。
運賃を上げて利益が出るようになっても、今度は銀行から元どおりの返済を求められ、その利益は返済に消えていく。
返済を先に延ばすだけでは、手元にお金は残らないのです。
リスケのあと元どおりの返済に戻し、利益を出し続けている会社は、たちばなはじめが見てきたなかでは、ほとんどありません。
気になる方は、取引のある銀行の担当者に、リスケから元どおりの返済に戻して利益を出し続けている会社がどのくらいあるか、一度たずねてみてください。
だからこそ、無理な返済を続けて手元のお金を減らす前に、金融機関との交渉方法を見直し、返済の続け方そのものを考え直す必要があるのです。
燃料が下がるのを待っているあいだにも、お金は出ていく。
とはいえ、すでに燃料代や給料の支払いに追われ、返済が遅れはじめている方もいるかもしれません。
その状態からでも、倒産や破産をせずに解決できる可能性は残っています。
諦めるのは、まだ早いです。
運送会社の社長の連帯保証や、赤字の事業をやめる判断については、次の記事でくわしく取り上げています。
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