2026年10月8日、東京商工リサーチが、2026年度上半期(4-9月)の「農業」の倒産をまとめて発表しました。
件数は57件で、年度上半期としては1997年以降の30年間でもっとも多い件数です。
飼料や肥料の値上がりに、担い手不足、そして天候。
苦しい条件が重なるなかで、こう考えている方もいるでしょう。
「ここまで機械や設備をそろえてきたのに、いまさらやめられない」
そんなときこそ、先に知っておいてほしいことがあります。
いま農業をやめたら、借入はいくら残るのか、です。
まずは、発表された数字から見ていきます。
2026年度上半期の農業倒産は30年間で最多
東京商工リサーチの発表は、次のとおりです。
2026年度上半期(4-9月)の「農業」倒産は、57件(前年同期比7.5%増)で、年度上半期では5年連続で前年同期を上回った。また、2年連続で50件を超え、1997年以降の30年間で最多を更新した。
— 東京商工リサーチ「2026年度上半期(4-9月)の『農業』倒産動向」より
業種別に見ると、もっとも多いのは野菜作農業の19件です。
次いで、園芸サービス業が10件、肉用牛生産業が6件。
資本金1千万円未満(個人企業を含む)が46件で、全体の約8割を占めました。
倒産の多くは、規模の小さな事業者です。
農業に参入する法人が増える一方で、負担も重なっていると、東京商工リサーチは書いています。
大手企業など農業に参入する法人は増えている。しかし、飼料・肥料などの価格上昇や担い手不足だけでなく、天候リスクなどへの対応も迫られている。
— 東京商工リサーチ「2026年度上半期(4-9月)の『農業』倒産動向」より
同じ発表によると、円安に加えて原油価格の上昇なども重なり、資材や飼料など、幅広いものが値上がりしています。
農業ならではの資金繰りの難しさ
ここからは、いま農業を続けている方に向けた、資金繰りの話です。
農業の資金繰りには、ほかの商売とは違う難しさがあります。
1つ目は、お金が先に出ていき、入ってくるのは出荷したあとだということです。
種や苗、肥料、飼料、燃料、人を雇えばその給料。
作付けから収穫まで、あるいは家畜を育てて出荷するまで、出ていくお金が続きます。
肉牛なら、子牛を育てて出荷するまでに年単位の時間がかかります。
2つ目は、売る値段を自分では決めにくいことです。
値段は、出回る量で大きく動きます。
農業は、その出回る量が天候に左右されます。
豊作の年は全国で出荷が増えて値段が下がり、不作の年は売る量そのものが減る。
どちらに転んでも、収入は読みにくいのです。
そして3つ目が、機械や設備にまとまったお金がかかることです。
トラクターやコンバイン、ハウス、牛舎。
大きな設備ほど、借入を使ってそろえることも多いでしょう。
収入は天候と値段で毎年変わるのに、借入の返済は、額も時期も決まっています。
ここが、農業の資金繰りのいちばん苦しいところです。

借りてそろえた設備は借入と切り離せない
たちばなはじめは以前のメルマガで、設備の大きな商売の社長ほど「ここまで設備を揃えたのに」と、その設備を守ろうとする、と指摘しています。
農業なら、借入をして買ったトラクターやコンバイン、自分の代で建てた牛舎やハウスもあるでしょう。
思い入れが強いほど、手放す決断は重くなるもの。
たちばなはじめ自身も、燃料油の卸・小売を営んでいたころ、同じ思いを抱えていました。
燃料を売るには、広い敷地と、それなりの設備が必要だったからです。
考えが変わったのは、自分で会計を学んで数字を追うようになってからでした。
そろえた設備は全部、借りたお金で買ったもの。
自分のものだと思っていたのは思い違いだった、と気づいたのです。
ただ、会計を学び始めたのは、資金繰りが苦しくなってからのこと。
その努力は実らず、事業は破綻してしまいました。
借りてそろえた設備は、返し終わるまでは借入と切り離せません。
設備を守ろうとすることは、その借入を抱え続けることでもあります。
農業をやめても借入は残る
では、設備を手放せば、借入はなくなるのでしょうか。
そう簡単にはなくなりません。
たちばなはじめは以前、酪農をやめたご家族から相談を受けました。
牛舎を処分し、牛を売って返済に充てても、なお1億円ほどの負債が残っていたのです。
機械や設備、家畜は、買ったときの値段で売れるとはかぎりません。
売って返しても、借入が残ることは珍しくありません。
続けるにしても、やめるにしても、どの道「負債は残る」。
たちばなはじめは、そう言い切ります。
だからこそ、続けるかやめるかと一緒に、借入をどう片付けるかを考えておかなければなりません。

廃業したら借入がいくら残るかを先に出す
そこで、続けるかやめるかを考える前に、一度出しておきたい数字があります。
いま農業をやめたら、借入はいくら残るのか。
書き出すのは、次の2つです。
- 金融機関やJAからの借入と、リースの残り、まだ払っていない肥料や飼料などの代金(すべて合わせた額)
- 機械や設備、家畜をいま手放したら入ってきそうなお金(買ったときの値段ではなく、いま売れる値段。リースの機械と土地は入れず、取り壊しや撤去にかかるお金は差し引く)
1つ目から2つ目を引いた額が、売れるものを売っても、なお残る借入の目安です。
2つ目は、買い取り業者の見積もりや相場を調べれば、おおよその額が分かります。
残る額が大きいと、「やめたら借入が残るから、続けるしかない」と考えたくなるかもしれません。
ですが、赤字の年を借入で埋めながら続けていれば、借入は増え、設備は古くなり、この額は1年ごとに大きくなっていきます。
1年後に同じ計算をしたらいくらになっていそうかも、あわせて出してみてください。
続けるかやめるかは、思い入れではなく、この2つの数字を見てから決めてください。
迷っているあいだにもお金は減っていく
続けるかどうかを決めかねているあいだにも、肥料や飼料、燃料の支払いと、借入の返済は続きます。
天候の悪い年が重なれば、お金はさらに早く減っていく。
お金が尽きてからでも、倒産や破産をせずに解決できる可能性を探ることはできます。
ただ、選べる道が多いのは、お金が残っているうちです。
たちばなはじめは「躊躇が損失を助長する」という題のメルマガで、「資金が残っているウチに取り組めば資金は残る」と書いています。
設備や土地を抱えた商売のやめ方や、借りても純資産が増えない理由については、次の記事でも取り上げています。
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そろえてきた設備と借入を、この先どうするか。
まだ決めきれていなくてもかまいません。
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