YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第12回のテーマは、ガソリンスタンドの倒産・廃業です。
ガソリンスタンドの倒産・廃業が過去10年で最多のペースで増えているというニュースを受けて、事務局の谷本がたちばなはじめに聞きました。
たちばなはじめは、かつて外資系の石油会社の特約店としてガソリンスタンドを経営していました。
その商売を17年前に見切った本人が、いまの淘汰をどう見ているのかを聞いた回です。
続けるか、やめるか、継がせるか、売るか。
判断に迷っている社長に向けて、かなり率直な話が語られています。
お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。
17年前に見切った商売
動画の冒頭で、たちばなは「ガソリンスタンドの商売は17年前に見切った」「もうこれはダメだ」と言い切っています。
石油製品の需要は、モータリゼーションが始まった1950〜60年代から2000年代の初めまで、上がり続けていました。
ところが、車の省燃費化やハイブリッド化が進み、2000年代の中ごろから需要は一気に落ちていきます。
それまでの石油業界では、考えられないことでした。
たちばなの父が現役だったころ、ガソリン1リットルあたりの利益は30円ほどあったそうです。
それが、たちばなが撤退を考えていた時期には、1リットルあたり6円か7円ほど。
だから、早期の撤退を選んだのです。
当時、たちばなの撤退を喜んだ人たちも、いま、もしくはこれから同じ憂き目にあっていくことになります。
「散る桜、残る桜も散る桜」という言葉で、たちばなはいまの状況をまとめています。
ガソリンが値上がりしても利益が出ず淘汰が進む理由
ガソリン代はだいぶ上がっているのに、なぜ経営は楽にならないのか。
いまはどうか分からないと断ったうえで、たちばなが業界にいたころの構造が語られています。
石油元売り会社は、大手の販売業者には燃料を安く出し、中小の販売業者には高く売っていた。
スケールメリットと言えば聞こえはいいのですが、仕入れの時点で差がついていたわけです。
しかも、地域に1軒しかないような場所に出ているのは、大手ではなく中小の特約店がほとんど。
仕入れが高いのだから、販売価格も高くならざるを得ません。
たちばなが業界にいたころ、国内のガソリンスタンドは多いときで6万軒ほどあったといいます。
いまは、その半分以下です。
需要が減り、供給する側が多すぎるから淘汰が進む。
たちばなはこれを、歯医者や飲食店と同じ需給バランスの話だと言い切っています。
EVがどうなるかは分からないけれど、化石燃料の需要が再び華やかだった時代に戻るのは現実的ではない、とも語られています。
ゼロになることはなくても淘汰はまだ進み、基本的には中堅や大手しか残らないというのが、17年以上業界の外から眺めてきた人間の見立てです。
地域のためと赤字で続けるのは頑張りではない
「地域でうちしかないから」と、赤字を出しながら営業を続けているスタンドもあるようです。
やめたいけれど、やめられない。
この点についての、たちばなの答えは厳しいものでした。
車は移動するものだから、どこかへ出かけたついでに給油すればいいのです。
だから、地域で唯一のスタンドがなくなっても、どうにかなるものだと話しています。
そのうえで、たちばなが警鐘を鳴らしているのは、赤字でも続けることを「頑張る」と表現してしまう日本社会に対してです。
赤字の事業は、やってはいけない。
自分が給料を取り、従業員に給料を払い、それでトントンだというなら分かります。
ですが、自分のお金をすり減らしながら続けることを「地域のため」で片付けてしまうのは、ロジックとして乱暴ではないか、と問いかけています。
会社は営利目的でなければいけない、というのがたちばなの立場です。
続ける・やめる・継がせる・売るの判断基準
たちばなのもとには、ガソリンスタンドの特約店からの相談が数多く寄せられています。
いちばん多いのは、廃業の相談です。
廃業する上で残る負債については、破産をせずに片付ける方向で協力できると伝えているそうです。
では、事業を続ける道はないのかというと、動画で語られている判断基準はとてもシンプルです。
借入金の元金と利息の支払いがなくなれば事業が回るというなら、頑張ろう。
元金と利息の負担がなくなっても回らないというなら、早くやめて、早く次の人生を歩もう。
事業を継がせたいなら、後継者に負債を渡さず、自分が抱えたまま時の経過で片を付け、後継者がゼロから始められる環境をつくらなければいけません。
事業を売りたいなら、買ってくれるありがたい相手に負債を残して、自分だけ身を引くようなことをしてはいけません。
続ける、やめる、継がせる、売る。
ルールの範囲内であれば、どれを選んでもいいとたちばなは話しています。
ただし、どれを選んでも「借入金が残っていてよかった」とはなりません。
だから、借入金の片付け方が問題になります。
動画では、消去法でこう整理されています。
返済を続けても終わらない。
リスケジュールをしても終わらない。
かといって破産をすれば、お金が残らない。
だから、破産をせずに無理な返済を続けず、時の経過で問題を解決する道を選ぶ、というのがたちばなの答えです。
広い土地と設備が事業を続けにくくする
ガソリンスタンドの事業継続が難しい理由として、たちばなは不動産の問題を挙げています。
ご存じの通り、スタンドには広い敷地が必要です。
その土地を自社で持っていれば、返済ができなくなったときに金融機関はそこを差し押さえにかかるだろうし、売りに出されたときに買い戻す資金が残っていればいいが、いまの環境で中小の特約店にその資金力があるとは思えない、とたちばなは話しています。
一方で、元売りから設備を借りて営業している場合はどうでしょうか。
金融機関の回収が遅れれば、元売り側にお金の動きについて問い合わせがいくこともあります。
特約店契約のほとんどは、信用不安を感じた時点で元売りが契約を解除できる中身になっているそうです。
どちらにしても、事業は続けにくくなる。
もうひとつ、動画で付け加えられていたのが、地下タンクの問題です。
法改正で、設置から40年以上経った地下タンクはそのままでは使えなくなり、コンクリートを壊してタンクを掘り上げ、加工して戻す工事が要るようになった、とたちばなは説明しています。
その費用は、数千万円単位だといいます。
それで売上が伸びるわけではなく安全のためだけの投資なのに、中小の特約店にその資金はない、というのがたちばなの見方です。
この改修負担も、スタンドが閉まっていく厳然たる要因のひとつだと語られています。
土地を守ろうとして決断できない社長
キャッシュが残っているうちに相談してほしい、とたちばなは呼びかけています。
そのうえで、ガソリンスタンドの社長ならではの事情にも触れています。
動かない人が多い、というのです。
背景にあるのは、業界の成り立ち。
かつて石油元売りは、全国の土地持ちや資産家を狙って「ガソリンスタンドをやりませんか」と営業をかけていました。
たちばなの家も、そうだったといいます。
だから、いまスタンドを経営している社長の多くは、先祖から預かった土地を子や孫に引き渡すという発想が消えません。
スタンドをやめる、すなわち土地が取られる、と考えてしまうのです。
「やめるなんて考えられません」と口にする社長が、非常に多い。
ですが、たちばなの整理はこうです。
法的な手続きに進めば不動産は残せず、商売を続ければ資金はどんどん流出して、いまよりもっと苦しくなる。
だったら、やるしかないはずです。
それなのに、お金に追い込まれると、人は冷静な判断ができなくなる。
土地持ちでなくなることへの恐怖が表情や発言に出てくるのを、たちばなは何度も見てきたといいます。
17年前の自分もそうだった、とも語られています。
たちばなの場合は、父が亡くなったことをきっかけに、「この不動産があるから自分は苦しいのだ」と考え方が変わりました。
結論は、いつも同じところに行き着きます。
借入金の問題を解決する最短距離は、不動産に執着しないこと。
不動産を守ろうとすると、そこに資金が流れて、事業に注ぐ資金が細くなり、立て直しが遅れます。
逆に、事業に資金を集中させて立て直しができれば、結果的に不動産を維持できる可能性は高くなります。
こちらを守るためにあちらを細らせるのではなく、こちらに集中した結果、あちらも残ったという形です。
そういう発想を持ってほしい、というのがたちばなのメッセージです。
斜陽化した事業は元に戻らない
最後に、いま業績が上向かずに苦しんでいるスタンドの社長へのメッセージです。
たちばなが業界にいたころから、元売り自身が「燃料だけ売っていてはダメだ」と言っていました。
洗車、オイル、メンテナンスといった関連商品で収益を上げよう、という動きは当時からあったのです。
燃料油だけではやっていけないことは、元売りがとうに認めていること。
だからこそ、たちばなは「一度斜陽化した事業は、元のような環境には戻りにくいのではなく、戻らない」と言い切っています。
戻らないのであれば、話は単純です。
資金がこれだけ残っているときの立て直しと、資金がここまで減ってしまってからの立て直しでは、後者のほうが当然遅くなります。
だから、早めに相談してほしい。
これが、動画の締めくくりです。
ガソリンスタンドの経営については、次の記事でもくわしく取り上げています。
- 倒産・廃業が増えている背景と赤字を我慢しない判断:ガソリンスタンドの倒産・廃業が10年で最多…地域唯一でも赤字を我慢しない
- 入出金と返済の確かめ方:ガソリンスタンド10年で1700社超退出…社長は資金繰りをどう変える?
その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。
ガソリンスタンドをはじめ、需要が戻らない業界で続けるかやめるか迷っている方のご相談も受け付けています。
お金が残っているうちに、まずは一度ご相談くださいね。
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