ガソリンスタンド10年で1700社超退出…社長は資金繰りをどう変える?

ガソリンスタンドの資金繰りを解説するたちばなはじめ

「うちが閉めたら、この地域の人はどこで給油するのか」

そう考えると、簡単には店をたためません。

それでも、燃料の仕入れ代や従業員の給料、借入金の返済日は毎月やってきます。

ガソリンスタンドの倒産・廃業が増えているというニュースは、地域を支える仕事と、会社のお金を両立させる難しさを伝えています。

たちばなはじめも、かつてガソリンスタンドや工業用燃料の卸などを営む会社の社長でした。

店を続けたいという思いがあっても、手元のお金が減る経営をそのまま続けてよいわけではありません。

あなたの会社は今、商売で生み出したお金で翌月を迎えられているでしょうか。

目次

10年で1700社超が退出したガソリンスタンド業界

帝国データバンクが2026年9月12日に公表した調査によると、同年1〜8月のガソリンスタンド運営事業者の倒産は19件、休廃業・解散は125件でした。

合計144件が市場から退出し、この期間として過去10年で最も多い水準です。

また、過去10年の累計では1700社超が退出しています。

ここで集計されているのは、店舗数ではなく運営事業者の数。

倒産だけを数えた数字でもない点に注意が必要です。

同調査では、燃料需要の減少や価格競争に加え、設備維持費・人件費などの負担が指摘されています。

燃料価格が上がって売上高を保てても、利益が十分に残るとは限らないという問題です。

出典:帝国データバンク「ガソリンスタンド(SS)」事業者の倒産・休廃業解散動向(2026年1-8月)

地域の暮らしと配送を支える地方のガソリンスタンドのイメージ
地域の給油所を続けるには 日々の営業を支える資金が必要です(イメージ)

地域に必要とされる店でも資金繰りは苦しくなる

給油所は、地元の人が通勤や通院を続けるための拠点でもあります。

顔なじみのお客さまがいて、長く働いてくれた従業員もいます。

その関係があるからこそ、社長は「もう少し頑張ろう」と踏ん張るのでしょう。

ただ、必要とされていても、手元のお金が残るとは限らない。

たとえば、同じ量の燃料を販売していても、仕入れ価格と販売価格の差が縮まれば、会社に残る粗利は減ります。

粗利とは、売上から仕入れ原価を差し引いた金額のことです。

ここから人件費や電気代などを支払うため、売上の金額だけでは経営状態をつかめません。

洗車や整備といった燃料販売以外のサービスを増やす場合も、売上の見込みと一緒に、新たな人件費や設備代を確かめる必要があります。

忙しさが増えても、追加の支出をまかなえなければ資金繰りの改善にはつながらないからです。

「売上は落ちていないのに、月末になるとお金が足りない」
その状態を借入で埋め続ける前に、どの商売でお金を生み、どの支払いで減っているのかを見てください。

ガソリンスタンドを経営したたちばなはじめの反省

この問題は、たちばなはじめにとって他人事ではありません。

本人はメルマガVOL.173で、父親から引き継いだ会社で約10年間社長を務め、ガソリンスタンドや工業用燃料の卸、小売事業などを営んでいたと振り返っています。

そして、その間、キャッシュフロー上の利益を一度も出せなかったことを明かしました。

ここで語っているのは、ガソリンスタンド単独の成績ではなく、複数の事業を営んでいた会社全体の経験です。

従業員に任せていると言いながら、自分は数字から目をそらしていた。

たちばなはじめは、その姿勢を自身の反省として記しています。

店が営業していること、売上が入ってくることと、会社にお金が残っていることは同じではない。

のちに会計担当者の退職をきっかけに、自分で帳簿や資金繰り表と向き合うようになりました。

しかし、数字を学び始めても、事業の破綻を避けることはできなかったのです。

だからこそ、問題が深くなる前に数字を直視し、経営そのものに手を入れる必要があります。

資料を作っただけで安心せず、そこに表れた現実を次の判断につなげることが大切です。

売上より先に確認したい入出金と返済の負担

では、今の店を続けるために、どこから確認すればよいのでしょうか。

たちばなはじめが自身で向き合ったのは、日々の現金の動きや経費、借入金の返済額と利息、そして資金繰り表でした。

その経験を今の給油所経営に置き換えると、まず確かめたいのは次の項目です。

  • 入ってくるお金と入金日:給油や洗車などの売上について、現金で受け取る分と、カード決済・掛売りなどであとから入金される分を分ける。
  • 営業を続けるために出ていくお金:燃料の仕入れ、人件費、電気代、設備の維持費などを、支払日とともに確認する。
  • 借入金の返済で出ていくお金:毎月の元金返済と利息を確認し、営業に必要な支払いをしたあとに、どれだけ現金が残るかを見る。

これらを同じ予定表に落とすと、月全体では足りていても、仕入れ代の支払日に残高が不足する、といった問題が見えてきます。

「今月は売れた」という実感だけでは、この日付のずれはつかめません。

給油所の事務所で入金日と支払日を確認する経営者の手元のイメージ
売上の合計に加えて 入金日と支払日を確認します(イメージ)

もう一つ、営業でお金が不足しているのか、営業では残っていても借入金の返済で不足するのかを分けてください。

原因が違えば、見直す対象も変わるからです。

前者なら、販売条件や経費、続けるサービスの範囲を検討する必要があります。

後者なら、店の営業だけでなく、金融機関との返済条件を含めた資金繰りの検討が欠かせません。

返済のために仕入れ資金が足りなくなっているのに、「もっと売る」だけで解決しようとすると、負担の原因を見誤るおそれがあります。

不足額が分かったときは、家計からいくら補うかを決める前に、なぜその不足が毎月続くのかを確かめましょう。

社長個人のお金を入れれば、その月の支払いはできても、事業の採算が改善したことにはなりません。

店を続けたいからこそ不採算を放置しない

たちばなはじめは、メルマガVol.334「歴史と伝統と不採算」でも、長く続いた事業を自分の代で終えることへのためらいを語っています。

一方で、歴史を守るために不採算を受け入れ続ける姿勢には、厳しい目を向けています。

地域への責任や、従業員への思いがあるなら、その思いを支えるだけのお金を残せる形に変えていくことが必要です。

営業時間やサービスの範囲を見直すなら、減らせる支出と売上への影響を両方確かめる必要があります。

設備の修理や更新が重なる月に、仕入れと給与の支払いを続けられるのか。

社長自身の気力で補ってきた部分を、会社の数字として確かめる段階です。

ガソリンスタンドの退出が増えている今、問われているのは、あなたの頑張りが足りるかどうかではありません。

今の売り方と支払い方で、来月も営業を続けられるかということです。

店を残したいという思いを持ち続けるためにも、資金が尽きる前に現状を確かめてください。

ガソリンスタンドの経営については、次の記事でもくわしく取り上げています。

売上はあるのに手元のお金が減る、返済と仕入れの両立が苦しいという状況なら、まずは今の数字をもとにご相談ください。


ガソリンスタンドの資金繰りを解説するたちばなはじめ

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