「今の商売だけでは先が見えない。だったら、伸びている業態を始めて挽回しよう」
売上が落ちてきたとき、こう考える社長は少なくありません。
2026年9月、帝国データバンクが「唐揚げ店」の倒産動向を公表しました。
今年1〜8月の倒産はわずか2件で、前年の15件から9割減とのことです。
数字だけ見れば、明るいニュースに見えます。
が、ちょっと待ってください。
倒産が減ったのは、唐揚げの市場が良くなったからではありません。
ブームに乗って増えた店が、すでに消えてしまった後だからです。
では、資金繰りが苦しいときに新しい商売へ手を広げるのは、なぜ危険なのか。
そして、消えた店と残った店は何が違ったのか。
順にお伝えします。
唐揚げ店の倒産はなぜ9割も減ったのか?
まず、帝国データバンクの発表です。
「唐揚げ店」の倒産は、2026年1-8月までの累計で2件の発生にとどまり、前年(15件)から9割減となった。2023年には過去最多となる27件の倒産が発生した。(集計対象:負債1,000万円以上・法的整理による倒産)
— 2026年9月1日、帝国データバンクの調査より
コロナ禍のころ、唐揚げ店は一気に増えました。
揚げたてを持ち帰る形が時代に合い、大手の飲食チェーンから個人店まで、さまざまな会社が参入したんです。
ところが、限られた需要を多くの店で奪い合う状態になり、競争はあっという間に激しくなりました。
そこへ、ブラジル産やタイ産の輸入鶏肉の値上がり、油をはじめとした原材料の値上げ。
コストの上昇分を価格に転嫁できない小さな店や、知名度のない店から順に退出が相次ぎ、2023年には倒産が過去最多の27件に達しました。
そして今年は2件です。
つまり、倒産が減ったのは市場が回復したからではなく、体力のない店が先に消えて、残った店だけになったということなんですね。
ここで考えてほしいことがあります。
この倒産の集計は、負債1,000万円以上の会社が対象です。
つまり、ここで数えられている会社にはいずれも、1,000万円以上の負債が残っていたということです。
その中には、開店のための借入やリースも含まれていたはずです。
店は消えても、返済とリース料は消えません。
資金繰りが苦しいときの新規出店が危険な理由
「本業が厳しいからこそ、伸びている業態で売上を足したい」
「新しい店がうまくいけば、今の借入も返せるはず」
こう考えて、新しい商売に踏み出したくなる気持ちは痛いほどわかります。
ですが、たちばなはじめが繰り返し伝えているのは、資金繰りに余裕がないときに増販、つまり売上を増やすための施策に手を出してはいけない、ということです。
理由はシンプルで、増販は先にコストが出ていくからです。
新規出店を例にすると、物件の敷金、内装、厨房設備、人の採用、開店前の仕入れ、広告などなど。
売上が1円も立たないうちに、まとまった現金が先に出ていきます。
その資金を借入でまかなえば、今の返済の上に、新しい返済が乗ってきます。
売上が計画どおりに伸びれば、確かに返していけるでしょう。
でも、資金繰りが苦しい会社が新しく出した店は、多くの場合「早く売上を立てなければ」という焦りの中で運営されます。
値付けを下げてでも客を集めようとし、粗利は薄くなり、本業の資金まで新しい店に吸い取られていきます。
そして、ブームが去ったとき、、、
手元に残るのは、売れなくなった店と、増えた返済と、途中で解約できないリース契約です。
こうなると、本業を立て直す時間もお金も、もう残っていません。
「売上を増やせば何とかなる」と考えて動いた結果、逆に会社の寿命を縮めてしまうのです。
そういうケースは、実際によくあるんです。
残った店の共通点は今ある店の中身を変えたこと
では、生き残った唐揚げ店は何をしていたのか。
帝国データバンクによると、「唐揚げ単品のテイクアウト」から抜け出し、とんかつ弁当やのり弁当など商品の幅を広げる動きが目立つとのことです。
あわせて、原価管理を強め、上がったコストを販売価格にきちんと転嫁している店が残っています。
ここで注目してほしいのは、帝国データバンクが挙げている生き残りの共通点が、どれも「今ある店の中身」の話だという点です。
新しい店を出したことではありません。
売るものの幅を広げ、原価を見直し、売価を直す。
どれも、新しい借入をせずにできることばかりです。
これは唐揚げ店に限った話ではありません。
資金繰りが苦しいときに先にやるべきなのは、外に手を広げることではなく、今の商売でお金が残る形に作り直すことです。
新しい商売より先に返済を組み直す
そして、作り直すときにぜひ見てほしいのが、毎月出ていくお金の中身です。
その中で、金額が大きいわりにもっとも見直されていないのが、銀行への返済です。
売上が落ちているのに、返済額だけは変わらない。
その穴を埋めるために新しい商売を始め、そのための借入でさらに返済が増える。
これでは、穴の空いたバケツに水を入れ続けているようなものです。
たちばなはじめ自身、かつて事業に行き詰まり、多額の負債を抱えた経験があります。
そこで立て直しの軸にしたのは、新しい商売ではなく、金融機関との交渉方法を見直して返済のあり方を組み直すことでした。
返済を組み直して手元に現金が残るようになれば、そこで初めて、次の商売を考える余裕が生まれます。
新しいことを始めるなら、順番はこちらです。
- 今の商売の原価と売価を見直し、お金が残る形に作り直す
- 毎月出ていくお金、とくに銀行への返済を組み直す
- 手元に現金が残るようになってから、新しい商売を考える
「返済を見直したら、銀行との関係が悪くなるのでは」と不安に思われるかもしれません。
ですが、返済を続けるために新しい借入を重ね、結局どちらも返せなくなるほうが、社長にとっても銀行にとっても、はるかに重い結末です。
増やす前に立て直す
唐揚げ店の倒産が9割減ったというニュースの裏には、ブームに乗って店を出し、返済だけを残して消えていった会社が少なくありません。
資金繰りが苦しいときに新しい商売を始めても、先に出ていくのはお金です。
売上が追いつく前に、現金と時間が尽きてしまいます。
だからこそ、増やす前に、今の商売と返済を立て直す。
この順番さえ間違えなければ、立て直しの選択肢は断然多くなります。
今の返済の組み直しはもちろん、新しい商売を始めてよい時期かどうかの見極めについても、ご相談を受け付けています。
もし少しでも心当たりがあれば、お気軽にご相談くださいね。
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