事業承継M&A企業と信用金庫が業務提携…スムーズに交渉を進める事前準備2つのポイント

あなたの会社にも、取引のある銀行や信用金庫から「後継者はお決まりですか」と聞かれたことはありませんか。

2026年8月、M&AマッチングサービスのM&Aナビと高崎信用金庫が、事業承継の分野で業務提携を始めたと発表されました。

2026年8月17日、M&Aマッチングプラットフォームを運営するM&Aナビと高崎信用金庫(群馬県高崎市)が業務提携契約を締結した。後継者不在など事業承継に課題を抱える事業者や、M&Aによる事業の拡大を目指す事業者の選択肢を増やし、事業の持続的な発展を支えることを目的としている。

— 2026年8月、M&Aナビと高崎信用金庫の業務提携の発表より

こうした提携は、この信用金庫だけの話ではありません。

いま全国の信用金庫や地方銀行が、取引先の事業承継やM&Aの支援に力を入れ始めています。

身近な金融機関の窓口で、会社の譲り先探しまで相談できる時代になってきたんですね。

後継者がいない社長にとって、選択肢が広がるのはありがたい流れです。

ですが、ここでひとつ、先に確かめておいてほしいことがあります。

それは、「会社を譲れば、負債も経営者保証もきれいに片づくのか」という問題です。

目次

信用金庫が事業承継M&Aを後押しする背景

背景にあるのは、地域の会社の深刻な後継者不足です。

2025年の全国の後継者不在率は50.1%と、7年連続で前年を下回り改善傾向にあるものの、依然として企業の約半数で後継者が決まっていない。後継者が「いない」または「未定」の企業は13.8万社にのぼる。

— 帝国データバンクの調査より

数字は改善しているとはいえ、まだ2社に1社は後継者が決まっていません。

そのまま社長が引退の年齢を迎えれば、黒字でも廃業するしかない会社が出てきてしまいます。

取引先が廃業すれば、地域の雇用が失われ、信用金庫にとっても融資先が減っていきます。

だからこそ金融機関は、親族や社内に後継者がいないなら第三者へ譲るという「事業承継M&A」を、本気で後押しし始めているのです。

ひと昔前まで、M&Aといえば大きな会社の話。

いまは従業員が数人の会社でも、譲り先を探せる仕組みが整ってきています。

会社をたたむのではなく、譲って残すという道です。

その入り口が、身近な金融機関の窓口まで来ているのです。

会社を譲れば負債も保証も消えるのか?

ここからが本題です。

「会社を譲れば、借入も自分の保証もまとめて相手に引き継いでもらえる」

そう考えている社長は、少なくありません。

ですが、現実はそれほど単純ではないのです。

まず、買い手の立場で考えてみてください。

事業に魅力があっても、重い借入まで丸ごと引き受けたい買い手はいません。

負債が大きい会社、ましてや債務超過の会社は、買い手がなかなか現れず、交渉が進みにくいのが実情です。

M&Aの交渉が始まると、買い手は決算書を細かく確認します。

借入の残高はいくらか、返済は順調か、社長がどんな保証を差し入れているか。

そこまで見られたうえで、値段と条件が決まっていくのです。

そしてもうひとつ、見落とされがちなのが経営者保証です。

経営者保証とは、会社の借入を社長個人が連帯して保証する仕組みのことです。

会社を譲っても、この保証は自動的には外れない。

金融機関との手続きを踏んで、保証を解除するか新しい社長に引き継ぐかを決めない限り、会社を手放したあとも前の社長に保証だけが残ってしまうケースがあるのです。

これでは、何のために会社を残したのかわからなくなってしまいます。

買い手がつく会社とつかない会社の違い

では、どうすればいいのかをお伝えします。

買い手が見ているのは、事業の価値と負債のバランスです。

技術や取引先、従業員、地域での信用といった事業の価値が、負債の重さに埋もれてしまっている会社は、残念ながらそのままでは譲れません。

逆に言えば、承継の前に負債へ決着をつけ、健全な中核だけを引き継げる形にできれば、譲れる道は大きく広がります。

実際、負債が重いまま先に譲り先探しを始めてしまい、何年たっても買い手が見つからないまま、社長の年齢だけが上がっていくケースは少なくありません。

その間に業績が落ちれば、会社の値打ちはさらに目減りしていく。

私たちは、後継者や譲り先に負債を引き継がせない事業承継の設計を、各分野の専門家チームと一緒に、これまで多くのケースで支援してきました。

大切なのは、順番です。

先に譲り先を探すのではなく、先に負債と保証を整理する。

「譲れる会社」にしてから譲り先を探すことが、結果的にいちばんの近道になります。

動き出すのは業績に余裕があるうち

もうひとつ大事なのが、始めるタイミングです。

負債への対処も、経営者保証の見直しも、業績と時間に余裕があるうちにしか打てない手が多くあります。

たとえば経営者保証を見直せるのは、原則として返済条件の変更(リスケジュール)を金融機関に申し入れる前の段階までです。

一度リスケジュールに入ってしまうと、保証を外す方向で交渉する道は事実上閉ざされてしまうんです。

資金繰りが崩れ、返済が苦しくなってからでは、選べる道はどんどん狭まっていく。

そして、承継には譲り先探しだけでなく、条件の交渉、契約、従業員や取引先への説明と、いくつもの段階があります。

準備を始めてから引き継ぎが終わるまで、数年単位の時間がかかるものです。

「まだ元気だから」「まだ業績は大丈夫だから」という今こそが、実はいちばんの動きどきなんですね。

会社を残す道は広がっている

信用金庫とM&Aサービスの提携は、後継者のいない会社にとって間違いなく追い風です。

ただし、その追い風に乗れるのは、負債と経営者保証の整理に道筋をつけた会社です。

身近な窓口でM&Aの話を聞ける時代だからこそ、譲り先を探す前に、まず自社の負債と保証がいまどうなっているかを確認してみてください。

会社と社長にお金を残す基本的な考え方は、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています。

教科書の内容を概論としてお伝えするセミナーも、定期的に開催しています。

私たちは、資金繰りだけではなく、事業承継のご相談も受け付けています。

もし少しでも心当たりがあれば、無料の個別相談で、お気軽にご相談くださいね。


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