事業承継やM&Aが過去最多、という話題をニュースで目にする機会が増えました。
ですが、いざ自分の会社のこととして考え始めると、何から手をつければいいのか分からない。
そんな社長さんは、本当に多いんです。
2026年6月、中小企業の事業承継についての調査結果が公表されました。
そこで浮かび上がってきたのは、準備そのものが止まってしまっている社長の姿でした。
AIで「中小企業 事業承継 準備 未着手」について調べてみると、次のような解説が出てきます。
中小企業を対象にした2026年の実態調査では、事業承継の準備に着手していない経営者が約4割にのぼった。
準備が進まない背景には、何から検討すればよいかという情報の不足があり、それが意思決定の停滞を招いていると指摘されている。
— AI検索で「中小企業 事業承継 準備 未着手 情報不足」について調べた際の解説より引用
後継者がいるかどうか、という入口の数字は、少しずつ良くなってきています。
AIで「後継者不在率 2025 帝国データバンク」について調べると、こんな数字が出てきます。
2025年の全国の後継者不在率は50.1%で、調査開始以来で最も低い水準となった。
ただし規模別にみると、中小企業は51.2%、なかでも小規模企業は57.3%と、依然として半数を超える企業で後継者が決まっていない。
— AI検索で「後継者不在率 2025 中小企業 小規模企業」について調べた際の解説より引用
後継者の候補は見つかってきました。
でも、その先の準備が動いていません。
これが、いまの中小企業の事業承継で起きていることなんです。
では、何から決めればいいのか。
たちばなはじめが社長にお伝えしているのは、順番です。
あれもこれもと同時に抱え込むと、かえって動けなくなってしまいます。
だからこそ、まず決めておきたいことを3つにしぼってお伝えします。
- 社長自身が、会社と自分の今後をどうしたいのか
- 会社のいまの状態を、数字でつかんでおく
- 後継者に渡す前に、借入と個人保証を整理しておく
順番に見ていきます。
事業承継の準備が「情報不足」で止まる理由
事業承継というと、まず思い浮かぶのは株価の評価や税金の話かもしれません。
専門用語も多く、制度も複雑です。
「自分にはまだ早い」「詳しいことが分からないから後回し」と、つい先送りにしてしまう社長さんは少なくありません。
ですが、本当に準備を止めているのは、制度の難しさそのものではないんですね。
「何から手をつければいいのか分からない」という、その入口の迷いです。
調査でも、準備が進まない一番の理由として情報不足が挙げられていました。
言い換えると、判断の材料がそろっていない状態。
ここで、いきなり株価や税金といった細かい論点から入ろうとすると、専門家の話が難しく感じられて、また足が止まってしまいます。
順番が逆なんです。
細かい制度の前に、もっと手前で決めておくべきことがあります。
それが、これからお伝えする3つです。
1つ目 社長自身が会社と自分の今後をどうしたいか
最初に決めるのは、制度でも数字でもありません。
社長自身が、会社と自分のこれからをどうしたいか。
ここがいちばん大切です。
誰かに引き継いでもらいたいのか、それとも自分の代でいったん区切りをつけたいのか。
引き継ぐとして、息子や娘なのか、社内の役員や社員なのか、それとも社外の相手に託すのか。
自分はいつ頃、どんな形で退きたいのかも、あわせて考えておきたいところです。
この「どうしたいか」が決まっていないまま株価の話や手続きの話に入ると、後継者からすれば「社長は結局どうしたいんだろう」と戸惑ってしまいます。
実際、承継の入口でつまずく多くのケースが、ここがあいまいなまま進んでしまったことに端を発しています。
逆に言えば、社長の気持ちさえはっきりすれば、専門家に相談したときの話も一気に具体的になります。
「こうしたい」が言葉になっていれば、それを実現する方法を専門家と詰めていけばいいだけです。
まずは、ご自身がどうしたいのかを、自分の言葉にしてみてください。
2つ目 会社のいまの状態を数字でつかむ
気持ちが決まったら、次は会社のいまの状態を、数字でつかんでおきます。
ここでいう数字とは、株価の評価額のことではありません。
もっと素朴な、会社の足元の現実です。
毎月いくら入って、いくら出ていくのか。
借入はどこからいくら残っていて、毎月の返済はどれくらいの重さなのか。
会社の資産と社長個人の資産がどこで線引きされているのかも、大事な確認どころです。
たちばなはじめが繰り返しお伝えしているのは、「事業の根幹は事業ではなく会計にあり」という教えです。
売上や利益だけを見ていると、会社の本当の体力は見えてきません。
利益は、結果として後から出てくる数字です。
一方の現金は、いま手元にあるかどうかを示す動かしがたい事実です。
承継の話を進めるうえで土台になるのも、結局はこの現金の流れのほうなんですね。
ここがあいまいなまま「会社を引き継いでほしい」と頼んでも、後継者は判断のしようがありません。
渡す側が自社の数字を語れる状態になっていること。
これが、後継者に安心して引き受けてもらうための、何よりの準備になります。
3つ目 後継者に渡す前に借入と個人保証を手当てしておく
3つ目は、借入と個人保証の手当て。
後継者が承継をためらう理由として、とても大きいものがあります。
「親の借入や保証まで、自分が背負うのは怖い」という気持ちです。
会社の借入に社長個人が経営者保証を入れていると、その重さがそのまま後継者にのしかかって見えてしまいます。
そこで「やっぱり継ぎたくない」と話が止まってしまうケースを、私たちは何度も見てきました。
だからこそ、渡す前に負債と保証をどう扱うかを考えておくことが大切になります。
ここで、知っておいていただきたいことがひとつ。
経営者保証を外せるかどうかは、会社が置かれているタイミングによって大きく変わるという点です。
とくに、月々の返済を軽くするリスケジュール(返済条件の見直し)に入ってしまうと、保証を外す要件を満たしにくくなってしまいます。
つまり、苦しくなってからでは、選べる道がぐっと狭まってしまいます。
だからこそ、まだ会社に体力があるうちに、借入と保証の状態を確かめておくことが大事なんですね。
負債のないクリアな状態で次の世代に渡せれば、後継者は安心して事業に集中できます。
こうした借入や個人保証の手当ては、社長おひとりで抱え込む必要はありません。
顧問の弁護士や税理士など、各分野の専門家と一緒に進められる領域です。
後継者に負債を引き継がせない形での承継を、私たちもこれまで多くのケースで一緒に組み立ててきました。
迷っているなら早く動くほど選べる道は多い
事業承継の準備は、何から決めればいいか分からないところで止まりがちです。
ですが、順番にほどいていけば、決して難しい話ではありません。
まず、社長自身がどうしたいかをはっきりさせる。
次に、会社のいまを数字でつかむ。
そして、後継者に渡す前に、借入と個人保証に手を打っておきます。
この3つを押さえておくだけで、専門家との相談も一気に前に進みます。
そして何より、早く取りかかるほど、選べる道は多く残ります。
会社に体力があるうちなら、経営者保証を外す道も、承継の形を選ぶ余地も、まだ手元にあります。
後回しにしているうちに、その選択肢が一つ、また一つと閉じていく。
これが、承継でいちばん避けたいことなんです。
この記事を読んでくれているということは、もしかするとあなたも「うちもそろそろ考えないとな」と感じているのかもしれません。
もしそうなら、いまが動き出すいいタイミングです。
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