YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第10回を公開しました。
今回のテーマは、従業員に賞与を出せないとき、社長は何を考えるべきなのかです。
中小企業の社長の7割が夏の賞与を受け取れていないというニュースを入り口に、聞き手の事務局の谷本がたちばなはじめに聞いています。
お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。
賞与は生活給であって社長の小遣いではない
報じられていたのは、中小企業の社長の7割が夏の賞与を受け取っていないという内容でした。
従業員の賞与を、社長が自分の役員報酬や個人の財布から補填した。
そういうケースもあると伝えられています。
原則論でいえば、賞与は業績が良かったときの一時金。
従業員に支給するものであって、本来は生活給ではありません。
ただ、動画の中でたちばなはじめは、いまの世の中で賞与はもう生活給になっていると話しています。
だからこそ、賞与を出さない、あるいは出せない事業体が、そのまま存続していていいのかどうかという問いが立ちます。
けれどもこれは、社長個人を責めたい話ではありません。
そのうえで、たちばなはじめがはっきり否定しているのが、社長が自分の蓄えから無理やり原資をひねり出して、従業員に渡すやり方です。
それは賞与ではなく、小遣い。
それを賞与と呼んでしまう見識のまま事業を続けるべきではない、とまで話しています。
言葉は強いのですが、理由は一貫しています。
社長は、自分ひとりの生活を預かっているわけではないからです。
家族の暮らしがあり、従業員の暮らしがある。
その両方の生活を預かる人が、その見識のままでいていいのか、というのが動画の指摘です。
動画の中では、本来の事業体のあるべき形も語られています。
お客さまから一定の支持を受けて、売上がつくられます。
その売上から、契約どおりの支払いと納品が実行されます。
中長期的な雇用が維持され、賃金が支払え、福利厚生が整う。
健康で文化的な暮らしができるだけのお金が、それぞれの家計に入っていきます。
そのうえで、約束どおりの返済ができます。
ここまでそろって、はじめて事業体として成り立っている、という整理です。
裏を返せば、どこかが欠けているなら、そこを直さないまま賞与だけを個人のお金で埋めても、形が戻ることはない、と読めます。
全員に平等に迷惑をかけても問題は解決しない
では、そこまでのお金が回らなくなったとき、社長は何をするのか。
たちばなはじめが指摘するのは、多くの社長が全員に平等に迷惑をかけようとする、という現実です。
お客さまにも、取引先にも、従業員にも、家族にも、金融機関にも、少しずつ我慢してもらおうとするわけです。
けれども、それでは問題は解決しない。
手元のお金の量が足りないという事実は、薄く広く配ったところで変わらないからです。
だから、順番を決めることになります。
誰に迷惑をかけるか、という言い方はしたくないと前置きしたうえで、たちばなはじめは2つの問いを立てています。
どこへの迷惑がいちばん小さいのか、そして自分は誰を守りたいのか。
この2つを軸に考えるよう、動画では語られています。
守る順番の最後に金融機関が来る理由
たちばなはじめが挙げる順番は、次のとおりです。
- 家族
- 従業員
- お客さま
- 取引先
- 金融機関
金融機関が、いちばん最後です。
理由は、金融機関にはお金があるからだと話しています。
そして、もうひとつ。
万が一、返せなくなる事態になっても、金融機関には国の支援があるから、と続けています。
一方で、社長の家族は国から支援を受けられません。
従業員も、お客さまも同じです。
取引先は規模によりますが、金融機関ほど手厚く守られてはいません。
だから、いちばん体力のあるところに我慢してもらう。
動画の中では、返済が続けられなくなったときに担保の不動産を明け渡す、信用保証協会に代位弁済してもらうという道筋にも触れられています。
金融機関の側には、受け止めるための仕組みが用意されているという指摘です。
なお、従業員とお客さま、取引先の順番は人によって違っていい、とも話しています。
ここは、あなた自身の判断でかまいません。
ただ、家族が最初で金融機関が最後という両端だけは、たちばなはじめのなかで動きません。
そして、この優先順位は、相手を種類ごとにひとくくりにする話でもない。
取引先のなかにも、規模の大きいところと小さいところがあります。
大きいところには待ってもらい、小さいところにはいくらかでも払う。
従業員のなかでも、役職の高い人には事情を伝えて我慢してもらい、そのぶんを別のところへ回すのが本筋だと話しています。
賞与の原資が返済で消えるなら返済のほうを見直す
動画の序盤で、たちばなはじめが投げかけていた話があります。
元金や利息の負担が重く、そちらを返すから賞与の原資が生まれないという状態を、どう見るか。
たちばなはじめは、返済のほうを見直してでも賞与を支給するべきだと言い切っています。
さきほどの順番をそのまま当てはめれば、そうなるからです。
業績がいいときには、従業員は家族と同じだ、家族以上だと言う社長がいます。
ところが資金繰りが苦しくなったとたん、人減らしや希望退職に手をつける。
しかも先に切られるのは、立場の弱い非正規雇用の方や若手です。
それは人としてどうなのか、というのがたちばなはじめの問いかけです。
返済を組み直せば事業が回るのなら、そこに協力してもらえない金融機関とは距離を置いてでも、ほかを手厚くするべきだ、というのがたちばなはじめの考えです。
亡くなった父から「弱きを助け強きをくじけ」と教えられてきた、と語られています。
経済的に強いところに我慢してもらい、弱いところを守る。
その順序は、経済人としてというより人として正しいはずだ、という立場です。
事業主は泥をかぶるのが仕事であって、それを嫌がるのは情けない、とも語られています。
回らないなら早く手を引きファクタリングにも手を出さない
逆に、返済を組み直しても賞与の原資が生まれず、事業そのものが立ち行かないのであれば、その事業はお金を捨てているのと同じだから早く手を引いたほうがいい、とも話しています。
1年、2年で黒字化する数値の裏づけがあるなら、話は別。
もうひとつ、動画の終盤で付け加えられているのがファクタリングです。
賞与を出すために取引先への支払いを遅らせ、それが慢性化したあとでファクタリングに手を出す。
そこに手を出した時点で立て直しは難しくなるから、この流れにだけは入らないでほしい、とたちばなはじめは言い切っています。
さきほどの順番のとおりなら、取引先は金融機関より先に守る側です。
見直すのは金融機関への返済であって、取引先への支払いを遅らせる方向ではない、と順番から整理できます。
社長のポケットマネーで会社を回してはいけない
さきほどの、事業主は泥をかぶるのが仕事だという話には、続きがあります。
かぶり方を間違えてはいけない、という点です。
社長個人の財布と会社の財布を混ぜない、ということです。
自分のポケットから出して会社を回すのは、たちばなはじめの言葉ではナンセンスです。
子どもは小学校に上がるころから、よその家と自分の家を比べます。
あの子の家にはあるのに、うちにはない。
あの家は休みにあそこへ行ったらしいけれど、うちはどうなのかと聞かれる場面が出てきます。
自分のお金で何とかしたい気持ちはわかる、という前置きも動画にはあります。
そのうえで、その考え自体がずれていることにまず気づいてほしい、と話は進みます。
動画の冒頭でも語られているのが、この問いです。
自分の蓄えを回して従業員に賞与を出せば、そのぶんあなたの家族が不憫な思いをする。
では、あなたは従業員を守りたいのか、家族を守りたいのか。
ここで従業員と答える人は違う、とたちばなはじめは言い切っています。
さきほどの順番で家族が最初に来るのは、このためです。
家族を守れず、自分の蓄えも守れないまま赤字の事業にしがみつく構図に入ってしまうと、判断そのものができなくなる、というのがたちばなはじめの見方です。
お金に余裕がないと、視野が狭くなるからです。
自分のことしか考えられず、社会も市場も見えなくなる。
だからこそ一度引いて、いまの自分の仕事はこの地域で本当に存続が必要なのかどうかを考えてほしい、と話しています。
納税以上の地域貢献はない
講演先の懇親会でのやり取りも紹介されています。
ある事業主が「私たちの仕事には地域貢献の面もあるので、採算が合わないからやらないという選択にはならない」と話しました。
よくよく聞くと、消費税の納付が厳しい。
そこでたちばなはじめが返したのが、納税以上の地域貢献はない、という一言です。
納税が苦しい状態で地域貢献をうたうのは、順番が逆だという指摘でした。
頭を抱える姿を従業員に見せない覚悟
最後に、覚悟の話が出てきます。
頭を抱えている姿を、従業員に見せてはならない。
武士は食わねど高楊枝という言葉のとおり、苦しさを言葉にして漏らしてもいけない、と話しています。
たちばなはじめは16年前、家族に「お前らなんか俺が守ってやるから安心しろ」と言い切ったうえで、金融機関への返済を見直し、法的な手続きに頼らない道を選んだと語っています。
言い切ることは大事だし、それくらいの覚悟がない人が商売をするべきではない。
そう語られています。
あなたが自分の蓄えを崩そうとしているなら、その前に見直せる支払いがまだ残っているかもしれません。
その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。
賞与を出すための資金繰りや支払いの優先順位、返済の組み直しについてのご相談も受け付けています。
我慢せず、傷の浅いうちに、まずは一度ご相談くださいね。
資金繰りの課題を抱える経営者の方へ3つのご案内
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