YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第7回のテーマは、事業承継です。
2026年上半期、後継者がいないことを理由にした倒産が過去最多になりました。
ただ、その中身を見ると、単に跡継ぎがいないという話ではありません。
社長が亡くなったり体調を崩したりして会社が続けられなくなり、そのまま破産に至るケースが大半を占めています。
後継者や家族に負債を残さずに会社をどう片づけるのか、そして社長はいつから何を準備すればいいのか。
事務局の谷本が聞き手となり、たちばなはじめに聞きました。
お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。
後継者難倒産の8割超は社長の死亡や体調不良
東京商工リサーチの調査によると、2026年上半期の「後継者難」倒産は264件で、上半期として過去最多でした。
原因の内訳では、代表者の死亡が119件、体調不良が107件。
あわせて85%を超えており、後継者難倒産のほとんどは、社長の身に何かが起きたことがきっかけです。
この数字を受けて、たちばなはじめは自身の経験から話を始めています。
たちばな自身、新潟で会社を継いだ世襲社長でした。
当時抱えていた多額の負債のほとんどは、先代が残したものです。
先代が亡くなったとき、相続放棄をせず、財産とあわせて負債も引き継ぎました。
「親父が借金を残してくれたから、いまの仕事がある」
動画の中でたちばなはそう語りますが、同時に「みんながみんな、こうはならない」とも付け加えています。
だからこそ、後継者がいないのであれば、元気なうちに会社を片づけるか、少なくとも片づける見込みを立てておくことをすすめています。
事業の行き先は続ける・やめる・継がせる・売るの4つ
たちばなは、会社のこれからを大きく4つに分けて説明しています。
- 事業を続ける
- 事業をやめる
- 事業を継がせる
- 事業を売る
大事なのは、この4つのどれを選んでも、「負債が残っていてよかった」とはならないことです。
どの道を選ぶにしても、負債は片づけなければなりません。
片づけ方を間違えたまま負債を残して亡くなってしまうと、配偶者や子ども、兄弟やその子どもにまで迷惑がかかります。
これが日本のルールだと、動画では繰り返し語られています。
とくに強い口調で語られたのが、継がせる場合と売る場合の話です。
「継ぐ」と言ってくれた人に負債を押しつけて、自分だけ身軽になって退く。
事業を売るときに、「負債も一緒に買ってくれ」と頼む。
どちらも、たちばなに言わせれば、あってはならない話です。
買ってくれた人が「いい事業を買った」と思える形こそが本筋であって、負債を第三者に押しつける発想は本末転倒だといいます。
では、負債はどうするのか。
時間の経過とともに負債の問題に決着をつけていく道がある、というのがたちばなの考え方です。
その道筋が見えていれば、負債を背負わせないまま、事業だけを次の人に渡すことができるんです。
会社を継がせず事業を継がせる
後継者に負債を引き継がせない方法として、動画で示されたのはとてもシンプルな発想です。
在庫がないのであれば、継ぐ人に新しく会社を作ってもらえばいい。
顧客リストがあるなら、顧問の税理士や会計士の監修を受けて適正な値段をつけ、その金額で売買すればいい。
在庫があるなら、不当に安いと言われない金額できちんと売買し、契約書を交わせばいいわけです。
事業承継も事業売却も、こうした手続きの積み重ねだといいます。
もちろん、契約上のルールや細かい縛りはあります。
たちばなは「自分は弁護士ではないので細かくは言えない」と断ったうえで、きちんと書面を交わし、ハンコを押し、契約書に基づいたお金の流れがあれば、不明朗な話にはならないと説明しています。
新しく創業すればゼロからのスタート
この「新しく作る」という発想は、継がせる相手だけでなく、社長自身にも当てはまります。
いまの会社の負債は時間の経過とともに決着をつけていき、事業は新しい器で続ける、という考え方です。
負債が5,000万円あれば、いまの会社を立て直すのはマイナス5,000万円からのスタートになります。
新しく創業すれば、ゼロから。
たちばな自身、新潟の小売業で事業が破綻したあと、新しい法人を立てて東京で仕事を始めました。
「それは第二会社方式ですか」と聞かれることがあるそうですが、動画でははっきり否定しています。
たちばなの説明では、第二会社方式は、債権者である金融機関の同意と協調を得たうえで進めるものです。
中小零細企業がその同意を取りつけるのは難しく、時間もコストもかかります。
そうではなく、単純に新たに創業すればいい、というのがたちばなの言い分です。
歴史や伝統に縛られすぎない。
「創業元禄何年」をありがたがっているのは売る側だけで、買う側にとっては関係のない話だと、たちばなは言い切ります。
名を捨てて実を取る。
非常時の発想として、これが大事だと強調しています。
アイデアがあれば商売を続ければいいし、アイデアがないなら勤めに出ればいいのです。
事業主から勤め人になることは、いまの時代、少しも都落ちではありません。
儲からない仕事にしがみつくより、返済がゼロかゼロに近くなるメリットを取るべきだといいます。
それが商人としての務めであり、経済的な合理性だというのが、動画の核心のひとつです。
「借入金があるから辞められない」は間違い
高齢の社長の中には、会社に負債がありすぎて、辞めたくても辞められず、自己資金を吐き出して会社を回している方が少なくありません。
この発想を、たちばなは「間違い」と一刀両断。
日本には職業選択の自由があり、やるもやらないも当事者次第です。
返せなくていいと言っているのではなく、返せないことは仕方がないという観点で考えれば、80代や90代の社長に何千万円、何億円も貸すほうに問題があるという見方です。
これは、たちばなが繰り返し語っている「融資は投資」という考え方そのもの。
年金で返済している社長についても、動画では強い言葉が向けられました。
年金は、働けなくなった高齢者が一定の生活をするためにあるもので、借入金を返すためのものではありません。
そして年金そのものは差し押さえが禁止されている債権であり、傷病手当や子ども手当も同じだと、たちばなは言い切っています。
これを知らない高齢者が多いため、「差し押さえ禁止債権」で検索して自分で確かめてほしいとも呼びかけています。
年金で返済するくらいなら、配偶者においしいものを食べに行こうと誘ったほうが、人として正しい。
社長だけの人生ではないのだから、というのがたちばなの考えです。
あわせて、リスケジュール中である、親や兄弟や子どもから借りている、税金を納めるのがしんどい。
こうした状態にある会社は、事業としてすでに破綻しているので、それ以上引っ張らないほうがいいとも語られています。
人口が減り、お客さんを増やせる環境ではないうえ、売上が増えれば消費税が追いかけてきます。
中小零細企業の場合、この状態から立て直るケースはほぼないと思ったほうがまともだ、というのが動画での見立てです。
段取り八分に仕上げ二分
では、いつから準備を始めればいいのでしょうか。
たちばなのたとえは、海外旅行です。
海外に行くと決めて、いきなり空港には向かいません。
パスポートはあるか、どの国に行くのか、何を持っていくのか。
まさに段取りであって、会社の片づけも同じです。
実行するかどうかは別として、段取りの知識を持っておくこと自体が準備になります。
何歳で準備を始め、何歳ごろに完結させるか。
そう発想することが大事だと、たちばなは話しています。
目安として挙げられたのは、年金が視野に入ってきたころです。
60歳でも65歳でも70歳でも、年金をもらうようになったら考え始めたほうがいい、といいます。
今日言って明日解決する問題ではないんですね。
人が亡くなると、残された側の後片づけは大変です。
たちばな自身、先代が亡くなったあとの後片づけには3年ほどかかったといいます。
「困る前に来てほしい」と発信し続けていても、相談に来る人の7割は困ってから来るのが現実です。
それが、たちばなが日々感じているもどかしさです。
「もうそろそろ引退かな」と思う前から備えておく。
社長はいつ亡くなるかわからないという前提で、常に備えておく。
後継者難倒産が過去最多になったいま、この備えの重さは増しています。
その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。
後継者や家族に負債を引き継がせない事業承継の設計、事業売却、事業を続けるか畳むかのご相談も受け付けています。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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