2026年9月23日、東京商工リサーチから、鳶工事業の倒産が今年1月から8月までで110件にのぼり、16年ぶりに100件を超えたと発表されました。
倒産した会社の9割以上が、従業員10人未満の小さな会社です。
足場や鉄骨を組む鳶の仕事は、社長も現場に立つ規模の会社がほとんどでしょう。
そして、そうした小さな会社の借入には、ほとんどの場合、社長の連帯保証がついています。
会社が返せなければ、社長個人が返す。
つまり、110件の倒産の裏側では、その多くで社長が個人として負債を背負っている、ということなんですね。
もしあなたが、赤字が続く会社を借入で支えているなら、その借入は会社の負債であると同時に、あなた個人の負債でもあります。
では、赤字を借入で埋め続けたとき、社長個人には何が起きているのでしょうか。
鳶工事業の数字から、順にお伝えします。
鳶工事業の倒産が16年ぶりに100件を超えた
まず、今回の発表の中身です。
2026年1-8月の鳶工事業の倒産(負債1,000万円以上)は110件で、前年同期比26.4%増。同じ期間で100件を超えたのは16年ぶりで、このペースが続けば年間170件も視野に入る。原因は売上不振が78件(70.9%)、赤字累積が24件(21.8%)で、業績不振が9割超を占めた。倒産した会社は資本金1,000万円未満が89.0%、従業員10人未満が91.8%と、小・零細規模に集中している。建設躯体工事従事者の有効求人倍率は7.94倍(全業種平均1.18倍)。完工高1億円未満の業者は37.5%が赤字だった一方、業界全体では売上高が4期連続の増収、純利益も3期連続の増益となった。
— 2026年9月23日、東京商工リサーチの調査より
ここで見てほしいのは、業界全体は増収増益だという点です。
売上も利益も伸びている一方で、完工高1億円未満の小さな会社は4割近くが赤字。
仕事はあるのに、小さな会社には利益が残らない。
同じ業界の中で、儲かる会社と苦しい会社がはっきり分かれてしまっているんです。
人手不足による倒産も19件と、前年のほぼ2倍に増えました。
職人が辞めれば、その分の仕事は受けられません。
売上が減って赤字になり、赤字を借入で埋め、その返済がまた資金繰りを苦しくしていきます。
小さな鳶の会社の多くが、この流れの中にいます。

利益が残りにくいうえに数字を見る時間もない
まず、利益が残りにくい理由からです。
鳶の仕事は、建物を建てる工事のいちばん最初に入り、足場や鉄骨を組み上げる仕事です。
元請の工程に合わせて動く仕事ですから、着工が遅れれば売上も後ろにずれ、単価も自分で決めにくいのが実情でしょう。
一方で、職人の日当は上がり続けています。
求人倍率が7.94倍という数字のとおり、人を確保するには給料を上げるしかありません。
受け取る単価は上げにくく、払う給料は上がる。
これでは、利益が残らなくて当然です。
そのうえ小さな会社では、社長自身が現場に出ていることが多いでしょうから、月次の数字をじっくり見る時間もなかなか取れません。
朝は現場に出て、夜は見積もりと段取りに追われます。
「今月は入金が少ないな」と感じても、来月の工事が決まっていれば、そのうち戻ると考えてしまいます。
そうやって赤字に気づくのが遅れ、気づいたときには借入で埋めるしかなくなっている。
そんなケースが、実際に少なくありません。
赤字を借入で埋めるたびに社長個人の負債も増える
ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。
小さな会社が銀行から融資を受けるとき、プロパーでも信用保証協会付きでも、ほとんどの場合、社長は連帯保証人になります。
会社が返せなくなれば、社長個人が代わりに返す約束です。
ということは、赤字を埋めるために会社が1,000万円を追加で借りれば、社長個人の負債も同時に1,000万円増えているんですね。
お金は会社の通帳に入るので、なんとなく会社の問題に見えます。
でも、実態は社長個人の借入と同じ。
その負債は、社長の自宅や預金、さらには家族の生活にまで及びます。
赤字が続く会社を借入で支え続けるということは、会社を守っているようで、社長個人と家族の負債を積み上げているということなんです。
もっと言えば、職人を守るため、元請に迷惑をかけないためと、社長は自分の給料を真っ先に削ります。
家族の生活費を会社に入れてまで、返済を続ける社長も少なくありません。
それでも赤字が止まらなければ、、、
会社は倒産し、社長個人には保証した負債だけが残ります。
これが、110件の倒産の多くの裏側で、実際に起きていることです。
法人と個人は別人格
ここで、たちばなはじめの考え方を紹介します。
それは、「法人と個人は別人格」ということです。
会社と社長は、本来は別の存在です。
連帯保証という契約があるために、会社の負債が社長個人にまで及んでいるだけのこと。
会社の失敗を、社長と家族の人生ごと引き受けなければならない理由はない、という考え方です。
そもそも、主な先進8か国の中で、社長個人の連帯保証が今も残っているのは日本だけだと、たちばなはじめは説明しています。
銀行が審査し、銀行が金額と金利を決め、銀行が実行した融資です。
その回収ができなくなった責任を、社長個人が家族の生活まで差し出して負っている。
それが今の日本の仕組みです。
そしてもう一つ。
会社が倒産しても、社長個人まで同じ道をたどると決まっているわけではありません。
破産は義務ではなく権利であり、破産しなければいけない人は一人もいない、というのがたちばなはじめの持論です。
たちばなはじめ自身、かつて営んでいた会社の多額の負債を個人保証し、返済が立ち行かなくなった経験があります。
その後、金融機関との交渉方法を見直し、法的な手続きに頼ることなく、家族に負担を残さない形で再起しました。
連帯保証の負債を抱えても、家族を守る道はある。
だからこそ、会社が苦しいときに社長がまず考えるべきなのは、銀行への返済をどう続けるかではありません。
家族の生活をどう守るか、なんです。

赤字を借入で埋める前に社長がやるべき3つのこと
たちばなはじめの「お金の優先順位」は、家族、従業員、お客、協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後です。
小さな鳶の会社の社長が、これを実際にどう使うのか。
やることは次の3つです。
- 会社の借入金のうち自分が連帯保証しているものと、会社のために自分個人で借りたものをすべて書き出し、合計額を出す
- その合計額と、会社と自分の手元に残っているお金を見比べ、返し続けられる会社なのかを数字で判断する
- 返す力が足りないなら、これ以上の借入で赤字を埋めるのをやめ、残っているお金で家族と従業員を守る順番に切り替える
1つ目で、多くの社長が驚きます。
プロパー融資、保証協会付きの融資、リース、それに会社の穴埋めに使った社長個人のカードローン。
合計してみると、自分が個人として背負っている額が、思っていたよりずっと大きいからです。
2つ目は、感覚ではなく数字で判断することです。
毎月の返済額と、毎月手元に残る現金が分かれば、あと何か月持つかは計算できます。
そして3つ目。
返す力が足りない会社が返済を続ければ、手元のお金は減り続けます。
お金が減ってからでは、自宅を残すことも、職人に給料を払って会社を立て直すことも難しくなってしまいます。
無理な返済を続けず、お金が残っているうちに金融機関との向き合い方を見直す。
これが、連帯保証を背負った社長が家族を守るための順番です。
連帯保証がある限り会社の借入は社長個人の借入と同じ
鳶工事業の倒産110件の多くは、従業員10人未満の小さな会社でした。
本来は別人格の会社と社長を、連帯保証が一つにつないでしまっています。
赤字を借入で埋めるたびに、社長個人の負債も増えていきます。
この事実から目をそらしてはいけません。
「もう職人に給料が払えないかもしれない」
「連帯保証の請求が自分に来るのが怖い」
そう感じているなら、まだお金が残っているいまが、手を打つタイミングです。
すでに返済が遅れ、金融機関から連絡が来ている方も、諦める必要はありません。
連帯保証の負債と家族の生活を切り分けて考えれば、残せるものはまだあります。
建設業の資金繰りと社長の連帯保証については、次の記事でもくわしく取り上げています。
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