2026年10月、埼玉県志木市で製本や印刷を手がけていた会社が、さいたま地裁に自己破産を申請していたことが分かりました。
負債は約5億1,000万円です。
埼玉新聞の報道によると、この会社はファクタリングで資金を工面してきましたが、その手数料が資金繰りをさらに苦しくしたといいます。
売掛金を売って、入金日より先にお金を受け取るファクタリング。
月末の支払いに間に合わせるために、使い始めている社長は少なくありません。
「借入ではないし、入ってくるはずのお金を先にもらうだけ」と考えて、手を出しやすいのも確かです。
では、なぜその手数料が、会社の資金繰りを追い込んでいくのでしょうか。
製本と印刷を手がけていた会社が自己破産を申請
報道によると、ここまでの経緯は次のとおりです。
埼玉県志木市の製本会社は、2010年6月に設立された。工場3棟で折りや断裁、とじまでを一貫して行い、パンフレットやカタログ、取扱説明書など、商業向けの製本や印刷を手がけていた。
大手の印刷会社などから仕事を受け、2018年10月期の売上高は約4億8,200万円。その後はペーパーレス化が進み、2021年10月期には約3億7,500万円に減った。
針金を使わずにとじる機械を入れるなどしていたが、単価が低いうえに人件費や光熱費などが上がり、赤字の決算が続いていた。
ファクタリングで資金を工面してきたものの、手数料が資金繰りをさらに悪化させ、9月30日までに事業を停止。10月5日に自己破産を申請した。負債は債権者約125人に対して約5億1,000万円。
— 2026年10月の埼玉新聞(帝国データバンク大宮支店の調べ)と、印刷業界のニュースサイト「ニュープリネット」の報道より要点を整理(2021年10月期の売上高とファクタリングの記述は埼玉新聞による)
手数料がいくらだったのか、いつからファクタリングを使っていたのかまでは、伝えられていません。
ペーパーレス化が進むほど、紙に刷ってとじる仕事は減っていきます。
そこへ人件費や光熱費の値上がりが重なれば、仕事をしても会社に残るお金は少なくなります。
ここからは、この会社にかぎらず、ファクタリングで月末をしのいでいる会社の話です。

ファクタリングで会社のお金は増えない
まずは、ファクタリングがどんな仕組みなのかを確かめておきます。
金融庁は、次のように説明しています。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
ファクタリングにおいて、高額な手数料を支払うと、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険性がありますので、十分注意してください。
— 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」より引用
つまり、まだ入金されていない売掛金を、手数料を差し引いた値段で買い取ってもらう仕組みです。
毎月300万円ずつ売掛金が入ってくる会社が、来月入る分を売るとします。
手数料の割合は契約によって違いますが、たとえば1割なら、いま受け取れるのは270万円。
差し引かれた30万円は、手数料として出ていきます。
そして来月、お客さんから300万円が支払われても、そのお金はもう自分の会社のものではありません。
来月の支払いにあてるはずだったお金を、今月のうちに使ってしまっているからです。
そうなると来月も、月末の支払いが回らなくなります。
そこで、次の月の売掛金を売る。
これをくり返せば、毎月30万円が手数料として出ていき、1年で360万円になります。
売掛金ひと月分の300万円より多い額です。
ファクタリングで、会社のお金が増えることはありません。
入金を前倒しにしているだけで、手数料の分だけ、会社のお金は毎回減っていきます。
しかも、この例でいえば、いったん前倒しにすると、やめた月には300万円の入金がないまま、その月の支払いを迎えることになる。
やめたくてもやめられなくなるのは、このためです。
「借入ではないから、返済が増えるわけではない」と考える社長もいます。
ファクタリングは法的には債権の売買で、借入とは違いますが、来月以降に入るお金を先に使って今月の支払いを回している点では、借りて返すのと同じことが起きています。
赤字が続いている会社なら、なおさらです。
毎月あく赤字の穴に、手数料が上乗せされていく。
手数料が高いほど、資金繰りは早く苦しくなっていきます。
手数料を払ってまで守っているのはどの支払いか?
では、手数料を払って用意したお金は、どこへ行っているのでしょうか。
たちばなはじめは、セミナーで、資金繰りが苦しくなった社長がとる行動には順番があると話しています。
- まず自分の給料を下げたり、遅らせたりする
- 次に、従業員にしわ寄せがいく
- お客さんに値上げをお願いする
- 取引先に支払いを待ってもらったり、手形や分納、ファクタリングに頼ったりする
それでも、金融機関への返済だけは続けるといいます。
家族や従業員、お客さん、取引先には負担をお願いできても、銀行への返済だけは遅らせられない。
たちばなはじめは、こうした「ごまかせる相手と、ごまかせない相手を分ける発想がいちばん良くない」と指摘しています。
未払いや手形、分納、ファクタリングに頼っている状態は、資金繰りがもう平常時ではないサインのひとつだともいいます。
手数料を払って用意したお金が、気づけば銀行への返済に消えているなら、高い手数料を払って借入を返していることになります。
家族、従業員、お客、協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後にする。
これが、たちばなはじめが伝えているお金の優先順位です。
手数料を払ってまで先に回している支払いが、この順番と逆になっていないか。
まずは、そこを数字で確かめます。

次の売掛金を売る前に確かめる3つのこと
通帳とファクタリングの契約書を手元に置いて、書き出してみてください。
確かめることは次の3つです。
- この1年に払った手数料の合計はいくらか(使い始めたばかりなら、このまま1年続けたときの合計)
- ファクタリングで受け取ったお金は、何の支払いに回ったか
- ファクタリングを使わなかったら、来月の支払いはいくら足りないか
1の合計は、本来なら家族の暮らしや従業員の給料に回せたはずのお金です。
2に銀行への返済が出てくるなら、その返済を続けるために手数料を払っていることになります。
3の金額こそが、会社がいま抱えている本当の不足。
ファクタリングを続けているあいだは、この不足は埋まらないまま、手数料の分だけ会社のお金が減り続けます。
たちばなはじめは、メルマガで、ある相談者とのやりとりを紹介しています。
借りたお金が返せず、不動産も差し押さえられ、ファクタリングをしないと資金が回らなくなっていた相談者です。
たちばなはじめが伝えたのは、たとえ売上が今の倍になったとしても、借入や不動産の問題が落ち着き、ファクタリングをしなくても事業が回るようになった例は見たことがない、ということでした。
売上が伸びるのを待つより先に、まず止めるべきは手数料が出ていく流れ。
手数料で消えるお金を家族と従業員のために残す
ファクタリングで受け取るのは、来月以降に入るはずだった自分の会社のお金です。
前倒しにした分だけ先が苦しくなり、そのたびに手数料が出ていく。
やめるには、支払いの順番から組み直すことになります。
ファクタリングに頼らなくても、家族の暮らしや従業員の給料を先に守れる順番です。
銀行への返済を一番最後にするという考え方には、抵抗を感じる社長もいるでしょう。
たちばなはじめは、セミナーでこうも話しています。
「自分の勧めるやり方が嫌なら、ほかの案を探せばいい。見つからないなら、お金が残っているうちに早く来てほしい」
その組み直しは、手元のお金が尽きてからでは難しくなります。
手数料が毎月出ていく状態は、残っているお金が少しずつ減っていく状態でもあります。
ファクタリングを手放せなくなっていても、立て直しをあきらめる必要はありません。
倒産や破産以外の選択肢も、まだ残っています。
借りて返す資金繰りや、融資を断られたときに急いでやりがちなことについては、次の記事でもくわしく取り上げています。
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教科書の内容は、たちばなはじめが直接お話しするセミナーでも、概論としてお伝えしています。
無料の個別相談では、ファクタリングの契約書と通帳をもとに、毎月いくらの手数料が出ていき、そのお金がどこへ回っているかを確かめます。
次の売掛金を売る前に、手数料を払わずに済む道を一緒に考えましょう。
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