最低賃金が1100円台後半へ…賃上げの原資が足りない会社が守る現金の流れ

2026年度の最低賃金について、その目安を示す答申が、7月下旬にも出される見通しです。

いまの全国平均は1121円。

報道では、数十円の引き上げで1100円台後半に届くのではないかと見られています。

そして10月以降、都道府県ごとに新しい金額が順番に適用されていきます。

このニュースを聞いて、「上げなければいけないのはわかる。でも、うちの資金繰りは本当に持つのか」と感じた社長も、多いはずです。

賃上げそのものに反対しているわけではありません。

ただ、上がった人件費を、これからどこからどう払い続けるのか。

その一点に、大きな不安があるんですね。

まずは、いま何が起きているのか、数字で見てみましょう。

2026年度の最低賃金は、7月下旬にも目安額が示される見通しで、全国平均1121円から数十円引き上げられ、1100円台後半が視野に入ると報じられている。一方で、2026年の中小企業の賃上げ率は4.69%にとどまり、コストの増加分を完全に価格転嫁できている企業は全体の3.8%にすぎない。人件費の高騰を原因とする倒産は、2022年の7件から2025年には152件へと、わずか3年で約22倍に増えている。

— AI検索で「2026年 最低賃金 中小企業 賃上げ 価格転嫁」について調べた際の解説より引用

目次

賃上げは「上げたい」「上げたくない」の話ではない

ここで大事なことを、ひとつお伝えしておきます。

いまの中小企業の賃上げは、業績が良くなったから上げる、という前向きなものばかりではありません。

ある調査では、賃上げをする理由のトップは「従業員の離職防止」で、7割を超えていました。

一方で、業績の見通しが良くなったから上げる、という会社は1割にも届きませんでした。

つまり、多くの会社は「上げたいから上げる」のではなく、「上げないと人が辞めてしまうから、無理をしてでも上げている」というのが実際のところです。

上げなければ、人がいなくなる。

でも、上げれば資金繰りが苦しくなってしまいます。

この板挟みのなかで、多くの社長が神経をすり減らしています。

そして、ここは強くお伝えしたいのですが、これは社長の努力が足りないから起きていることではありません。

コストが上がっても、その分をなかなか価格に乗せられません。

取引を切られるのが怖くて、値上げに踏み切れません。

そうやってコスト増を自社でかぶり続けるしかない、という構造そのものに原因があるんですね。

人件費が増えると現金が先に細るのはなぜか?

賃上げがこわいのは、「利益」より先に「現金」を削っていくからです。

給与は、毎月決まった日に必ず出ていきます。

待ってもらうことができない、いちばん止められない支払いです。

一方で、その原資になるはずの売上の入金は、多くの場合あとからやってきます。

この時間差があるところに、賃上げでさらに固定費が積み上がっていく。

先ほどの数字にあったように、コスト増を完全に価格へ転嫁できている会社は、わずか3.8%です。

残りの会社は、増えた人件費の多くを自分でかぶっているということになります。

そうなると、売上は立っているのに粗利が薄くなり、手元の現金だけがじわじわと減っていきます。

「決算では黒字なのに、なぜか通帳のお金が増えない」という、あの苦しさに近い状態。

この「売上はあるのにお金が残らない」流れを放っておくと、ある月に資金がぱたりと回らなくなってしまいます。

賃上げの局面で本当に見ておくべきなのは、利益の数字よりも、この現金の流れのほうなんです。

賃上げの原資は「数字」で確かめる

では、ここから具体的な備え方をお伝えします。

まずやっていただきたいのは、賃上げに耐えられるかどうかを、気合いや感覚ではなく、数字で確かめることです。

たちばなはじめが繰り返しお伝えしているのは、「事業の根幹は事業ではなく会計にあり」という考え方です。

売上や利益といった、あとから出てくる数字ではなく、いま手元に現金がいくらあるのか。

その動かしがたい事実から目をそらさないことが、こういう局面ではとくに効いてきます。

具体的には、次の点を毎月の数字で見ておきたいところです。

  • いまの現金は、売上が止まっても何か月分もつのか
  • 人件費が、粗利のどれくらいを食っているのか
  • 賃上げした分だけ、月々の現金の減り方がどう変わるのか

むずかしい資料をそろえる必要はありません。

試算表や資金繰り表で、この3つの数字の動きを毎月追いかけるだけでも、判断の土台はずいぶん変わります。

数字が見えていれば、「あと何か月かは賃上げに耐えられる」「このままだと半年でむずかしくなる」といったことが、感覚ではなくはっきりわかります。

そこがわかって初めて、値上げの交渉に動くのか、固定費を見直すのか、金融機関と早めに相談するのか、といった次の一手を落ち着いて選べるようになるんですね。

それでも払う順番は崩さない

それでも、どうしても資金繰りが厳しくなる月は出てきます。

そのとき、何を先に払い、何をあとに回すのか。

この順番を決めておくことが、いざというときに社長を守ってくれます。

たちばなはじめがお伝えしているお金の優先順位は、次の5つです。

  1. 家族
  2. 従業員
  3. お客
  4. 協力企業
  5. 銀行

家族と従業員、お客様、協力企業を守るのが先で、銀行への返済はいちばん最後にします。

これが、たちばなはじめが一貫してお伝えしているコンセプトです。

賃上げというのは、この順番でいえば、2番目にある「従業員」を守るための支出でもあります。

だからこそ、その原資が苦しいときに真っ先に削ってはいけないものを、間違えないでほしいんです。

資金繰りが本当に厳しくなったとき、多くの社長は、他の支払いを止めてでも銀行への返済を優先してしまいます。

ですが、いちばんうしろに置いていいのは、実は銀行なんですね。

順番を守るだけで、賃上げで守りたかったはずの家族や従業員を、資金繰りのしわ寄せから守れる可能性が高くなります。

数字から目をそらさない

最低賃金の引き上げは、これから毎年のように向き合っていくテーマになります。

だからこそ、賃上げを「我慢して先延ばしにするもの」でも、「無理をして体力を削るだけのもの」でもなく、数字で受け止められる会社にしておきたいところです。

そのためにできる第一歩は、とてもシンプルです。

自社の現金がいま何か月分あるのか、人件費が粗利をどれだけ食っているのか。

まずは、この現金の流れを数字で確かめることから始めましょう。

もし、賃上げや資金繰りのことで少しでも気がかりがあれば、ひとりで抱え込まず、まずは一度ご相談くださいね。


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