2026年9月、大阪でミシュランガイド一つ星のフレンチ「LIAISON(リエゾン)」を運営していた会社が、事業を停止して破産申請の準備に入ったと報じられました。
星付きの店を持ち、約30店舗を展開し、年商は23億円を超えていた会社です。
それでも、倒れてしまいました。
倒産の理由として挙げられているのは、出店コスト、原材料や人件費の高騰、そして賃料の負担。
ただ、もう一つ見逃せない点があります。
「コロナ禍でリスケジュールを受けていた金融債務の返済を再開させていた」という一文です。
コロナ禍にリスケジュール(返済条件の変更)で毎月の返済を軽くしてもらい、期間が明けて返済を元に戻していたとみられます。
いま、同じ状況に立っている会社は決して少なくありません。
では、リスケ明けに返済を再開した会社には、何が起きるのでしょうか。
ミシュラン一つ星の店を運営する会社が破産へ
まず、帝国データバンクが発表した内容を確認しておきます。
(株)The DINING(大阪市北区)は、9月3日までに事業を停止し、破産申請の準備に入った。2011年12月の設立で、宮崎料理を中心とした郷土料理店のほか、豚肉のしゃぶしゃぶ、串焼店、海鮮居酒屋などを展開。2017年11月に開業したフレンチレストラン「LIAISON(リエゾン)」は「ミシュランガイド」で一つ星の評価を獲得した。大阪駅周辺のほか京都、名古屋、東京都心などに約30店舗を展開し、2025年9月期には年売上高約23億5000万円を計上していた。しかし、出店コストが嵩んだうえ、原材料や人件費の高騰を十分に価格転嫁できず、営業損益段階から赤字が続いていた。コロナ禍でリスケジュールを受けていた金融債務の返済を再開させていたことから資金繰りは次第に悪化し、賃料負担も重荷となるなか、一部店舗の運営を他社に譲渡するなどで立て直しを図っていたものの状況は好転しなかった。負債は約12億円、債権者は約300名の見込み。
— 2026年9月、帝国データバンクの倒産速報より
飲食店の倒産そのものも、増え続けています。
2026年上半期(1-6月)の「飲食店」倒産は473件。前年同期の458件を上回り、上半期として過去最多を更新した。増加は4年連続。食材や光熱費の高騰、賃上げなどで利益が圧迫されている。
— 帝国データバンク「飲食店の倒産動向(2026年上半期)」より
件数が増え続けているうえに、星付きの店を持つ会社まで倒れています。
倒産の波は、小さな個人店に限った話ではありません。
星も年商も返済能力ではない
ミシュランの星、約30店舗、年商23億円。
外から見れば、どれも「うまくいっている会社」の材料です。
ですが、銀行に返すお金は、評価や売上から出てくるわけではありません。
返済の原資は、売上から仕入れ、人件費、家賃を払ったあとに残る現金だけです。
The DININGは、営業損益の段階で赤字が続いていたと報じられています。
本業の段階で、すでに現金が減っていく状態だったということです。
その状態で返済を元に戻せば、現金の減るスピードが上がるだけ。
たちばなはじめは、赤字のまま借入と返済を続ける会社を「穴の空いたバケツ」にたとえてよく言います。
本業の赤字という穴をふさがないまま返済を元に戻せば、バケツの水はさらに早くなくなっていきます。
値上げできない、出店コストが重い、家賃が重い。
穴の正体は会社ごとに違っても、返済を再開して穴が小さくなることはないのです。
リスケ明けの返済再開で何が起きるのか?
ここで、リスケジュールの中身を確認しておきます。
リスケジュールとは、銀行に頼んで毎月の返済額を減らしてもらうことです。
多くの場合、元金の返済を大きく減らし、利息を中心に払う形になります。
月々の支払いは、たしかに軽くなる。
ただ、軽くなるのは返済額だけです。
元金は減っていませんから、借入金そのものは1円も終わっていません。
しかも、リスケの期間は半年から1年ごとに更新する形がほとんどです。
更新のたびに、返済額を元に戻すよう求められる。
コロナ禍から更新を重ねてきた会社の多くが、いままさにそのときを迎えています。
ここで、たちばなはじめが繰り返し伝えていることがあります。
10の返済を2にしてもらおうと考える会社の返済能力は、ゼロだということ。
返す力がないから減らしてもらったのであって、減らしてもらったから返す力が戻るわけではありません。
その会社が、期限が来たからといって10の返済に戻せるのか。
本業で利益が出る状態に変わっていなければ、戻せるはずがないのです。
厳しい話に聞こえるかもしれませんが、これが現実です。
リスケジュールを実行し、一定期間をやり過ごしたあとに通常弁済に戻して、利益を出して存続している会社は、現場の経験則としてほとんど存在しません。
もし信じられないと感じる方がいらっしゃれば、ぜひお付き合いのある銀行員や税理士の方に「リスケから通常弁済に戻して、利益を出して存続している会社は、どのくらいありますか?」と聞いてみてください。
おそらく多くの方が、「ない」もしくは「ほとんどない」と答えるはずです。
銀行がリスケに応じた時点で次の融資は望めない
もう一つ、知っておいてほしいことがあります。
銀行は本来、貸せば貸すほど利息で儲かる商売です。
その銀行が、あえて「利息だけでいいですよ」と返済を減らすのはなぜか。
「この会社に新しく貸しても、回収できない」と判断しているからです。
つまり、リスケに応じた時点で、銀行は「もう融資はしません」というシグナルを出しているんです。
返済を再開して現金が足りなくなったとき、「また借りて埋めればいい」は通用しません。
The DININGも、一部店舗の運営を他社に譲渡して立て直しを図っていたと報じられています。
借りて埋められないから、店を手放して現金を作る。
それでも返済や家賃に吸い上げられていけば、手元には残りません。
だから、現金が残っているうちに手を打つ必要があるんです。
返済で会社のお金を使い切ってはいけない
ここまでを踏まえて、いちばんお伝えしたいことです。
リスケ明けに返済を再開すると、手元の現金はどんどん減っていきます。
本業で利益が出ていないなら、なおさらです。
そして、手元の現金がなくなったときに何が起きるか。
従業員の給料が払えなくなり、仕入先に待ってもらい、家賃も遅れていきます。
そこから先は、選べる道がほとんど残っていません。
逆に言えば、手元にお金があるうちなら、道はいくつもあるんです。
店を続けるにしても、たたむにしても、お金があれば選べます。
不採算の店を閉める費用、従業員への支払い、家族の生活費。
どれも、お金がなければ手をつけられません。
たちばなはじめのお金の優先順位は「家族 → 従業員 → お客 → 協力企業 → 銀行」です。
銀行への返済は、一番最後。
返す力が戻っていないのに、銀行への返済を最優先にして会社のお金を使い切ってしまうのが、いちばんやってはいけないことです。
「返済を再開しないと銀行との関係が悪くなる」と思われるかもしれません。
ですが、さきほどお伝えしたとおり、リスケに応じた時点で銀行は次の融資を考えていません。
守るべきは銀行との関係ではなく、会社と社長と家族のお金です。
無理な返済を続ける前に、金融機関との向き合い方そのものを見直しましょう。
見直すための時間とお金は、手元にお金が残っているうちのほうがずっと多いのです。
たちばなはじめ自身、かつて自らの事業で多額の負債を抱え、返済が立ち行かなくなった経験があります。
そこから、銀行との交渉方法を見直すことで、法的な手続きに頼ることなく再起しました。
お金があるうちに動けるかどうかで、その後の道はまるで違ってきます。
これは、自身の経験からも言い切れることです。
資金繰りは我慢してはいけない
ミシュランの星があっても、年商が23億円あっても、本業で現金が減る状態のまま返済を再開すれば会社は倒れてしまいます。
今回のニュースが教えてくれるのは、この一点です。
リスケ明けの返済を目の前にしている社長は、まず手元の現金を確認してください。
返済を元に戻したら、あと何か月もつのか。
この数字を確かめてから、金融機関とどう向き合うかを決めてください。
そして、すでに返済を再開して苦しくなっている社長も、諦める必要はありません。
リスケの後でも、金融機関との向き合い方を変えることで、会社と社長にお金を残す道は残っています。
まずは、その道があるという事実を知ってください。
会社と社長にお金を残す考え方の全体像は、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています(公式LINEを友だち追加するだけで届きます)。
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苦しいのに、期限だからと歯を食いしばって返済を続ける。
それが、資金繰りの我慢です。
資金繰りは、我慢してはいけません。
お金があるうちに動くことが、一番の解決策です。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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