『相続税0円』のはずが追徴課税…経営者が考えておくべき相続の優先順位

「相続税がゼロのはずだったのに、税務署から約3億円の追徴を求められた」── そんな相続事例が、いまも繰り返し報道で取り上げられています。

富裕層向けに『相続税0円は許さない』『行き過ぎたタワマン節税にNG』といった見出しが並ぶ流れを目にして、経営者として落ち着かない気持ちになった方もいらっしゃるかもしれません。

ご自身が、自社株・事業用不動産・自宅と、相続準備の論点を抱えていれば、他人事では済まされない話です。

この記事では、最近の相続税をめぐる動きをテーマに、経営者が相続準備で立ち戻りたい優先順位をお伝えします。

目次

最高裁判決と通達改正──「相続税0円」が通りにくくなった流れ

不動産を使った相続税の圧縮、いわゆる「タワマン節税」をめぐっては、令和4年に最高裁が国側の主張を認める判断を示しました。

AIで「タワマン節税 最高裁判決 令和4年」について調べてみると、次のような解説が出てきます。

被相続人は信託銀行からの借入金を原資としてタワーマンション2棟を約13億9,000万円で購入した。

相続人は、評価通達に基づき相続税評価額を約3億3,000万円と算定し、借入金と差し引きしたうえで相続税額をゼロとする申告を行った。

これに対し国税当局は、評価通達6項を適用して当該マンションを約12億7,000万円と再評価したうえで、約3億円の追徴を求めた。

最高裁は令和4年4月19日、国側の主張を認める判断を示した。

— AI検索で「タワマン節税 最高裁判決 令和4年」について調べた際の解説より引用

この判決を受けて、国税庁はマンションの相続税評価方法を見直す通達を令和5年に公表しました。

AIで「居住用マンション 相続税評価 通達改正 令和6年」について調べてみると、次のような解説が出てきます。

令和5年9月に国税庁が公表した『居住用の区分所有財産の評価について』の通達により、令和6年1月1日以後の相続・贈与から、居住用区分所有マンションの相続税評価額の算定方法が改正された。

市場価格と相続税評価額の乖離率が大きい物件については、評価額を市場価格の60%相当まで補正する仕組みが導入されている。

— AI検索で「居住用マンション 相続税評価 通達改正 令和6年」について調べた際の解説より引用

つまり、市場価格と相続税評価額の差を大きく使って相続税額を極端に圧縮する手法には、税務当局が踏み込みやすい仕組みが用意されてきたということになります。

「相続税ゼロ」を狙う節税アイデアは、これまで以上に見直しの対象になりやすい時代に入った、という見方ができます。

単独の節税スキームに依存することのリスク

不動産購入による相続税圧縮以外にも、生前贈与・資産管理会社の設立・小口化商品の活用など、さまざまな相続税対策が情報として流通しています。

ひとつひとつには合理性のある手法も含まれますが、共通して気をつけたいのは、「税負担を下げること」だけを目的に設計してしまうことの危うさです。

節税効果が際立つほど、後から見直しの対象になりやすいという流れは、相続税制全体に共通する論点として残ります。

制度や通達は、その時々の社会情勢や課税の公平性をめぐる議論で動いていきます。

当時の常識のままで設計した相続スキームが、いざ相続が起きたタイミングでは前提条件が大きく変わっていた、というケースも、決して珍しくはありません。

また、相続税の額だけに焦点を絞ると、ご家族のその後の生活や、事業の引き継ぎ、自社株の支配権、個人保証の引き継ぎといった本来の論点が抜け落ちることもあります。

節税は手段であって、目的ではありません。

経営者の相続準備で目的とすべきは、「ご家族のその後の生活と、事業の継続(または整然とした引き継ぎ)を、どう両立して残すか」にあるはずです。

立ち戻りたいのは「お金の優先順位」

たちばなはじめが現場で繰り返し伝えているお金の優先順位は、次の5つです。

  1. 家族
  2. 従業員
  3. お客
  4. 協力企業
  5. 銀行

お金の優先順位は、人によって、事業や人間関係によっても変わってきます。

その前提のうえで、家族・従業員・お客様・協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後にする。

これがたちばなはじめのコンセプトです。

相続準備においても、この優先順位は変わりません。

節税スキームを組む前に、まず手元に残しておきたいのは、ご家族のこれからの生活と、従業員・お客様・協力企業との関係を守るためのお金です。

不動産や金融商品で大胆に資産を組み替える前に、その組み替えがご家族の生活基盤を脅かさないかを、最初に確かめておきたいところです。

経営者の相続準備で書き出しておきたい観点

節税の話に進む前に、視野に入れておきたい論点として、次のような項目をメモ程度でかまわないので書き出してみることをおすすめします。

  • 自社株の評価と承継先──自社株は、ふだん売り買いされない財産でありながら、評価額が大きく振れることもある資産です。だれに、どのタイミングで、どの株数を渡すかで、納税負担も後継者の支配権も変わってきます
  • 借入と個人保証の引き継ぎ──会社の借入が残った状態で承継すると、後継者には借入と個人保証がついて回ります。借入そのものを整理する余地はないか、保証を外していけないかを、相続準備と同じ土俵で見直しておきたい論点です
  • 自宅・事業用不動産の名義と権利関係──事業用と個人用の不動産が混在していたり、根抵当の枠が残っていたりすると、相続のタイミングでご家族の判断余地が狭まります。平常時のうちから手をつけておくほど、選べる手は広く保てます
  • 納税資金とご家族の生活基盤──相続税の納税は、原則として現金一括が基本です。自社株や不動産が中心の資産構成では、納税資金そのものが用意できず、ご家族が困るケースもあります。納税原資をどこから出すか、ご家族の生活費はどこから出すかも、早い段階から見渡しておきたい論点です

節税は、これらの観点を一通り見渡したあとに、最後の調整として位置づけるくらいの順番感が、経営者の相続準備には合っています。

『相続税0円』のような見出しに振り回されず、ご家族の生活と事業の引き継ぎを軸にすると、制度や報道が変わったときにもぶれにくくなります。

私たちの支援──家族と事業の両方を残す相続準備

後継者不在、自社株の集中、個人保証の引き継ぎ、ご家族の生活設計── 経営者の相続準備に出てくる論点は、ひとつひとつが重く、相互に絡みあっています。

自社株の評価方法、不動産の名義変更、保証契約の見直し、相続税の納付計画と、税務・契約・不動産・法務といった専門領域が複合的に絡む場面でもあります。

私たちは、顧問の弁護士・宅建士・税理士など各分野のプロと連携しながら、契約や法的な面でも問題なく進められる形で支援を組み立ててきました。

後継者に負債を引き継がせない事業承継の設計や、平常時の資産保全設計を、これまで多くのケースで重ねてきています。

「自社株はどう渡せばいいのか」「自宅と事業用の不動産は分けて整理できるのか」「ご家族の生活基盤は守れるのか」と気がかりがあれば、まずは現状をひとつずつ書き出すところから、ご一緒できます。

節税の前に、ご家族と事業の優先順位を見渡すところから始めていただける入口は開いています。

立ち戻る順番は、税ではなく家族と事業から

最後に、この記事の論点をまとめます。

  • 最高裁の判断と通達改正により、不動産を使った相続税の圧縮スキームには、税務当局が踏み込みやすい仕組みが用意されてきた
  • 節税効果が際立つほど、後から見直しの対象になりやすいという流れは、相続税制全体に共通する
  • 節税は手段であって目的ではない。目的は、ご家族のその後の生活と事業の継続(または整然とした引き継ぎ)を両立して残すこと
  • 立ち戻りたいのは「お金の優先順位」── 家族・従業員・お客・協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後
  • 自社株・借入と個人保証・不動産・納税資金とご家族の生活基盤の観点を見渡してから、節税を最後の調整として位置づける

制度や報道の見出しに振り回されず、ご自身とご家族の生活、事業の引き継ぎを軸に組み直してみてください。

もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談ください。


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