「借入が膨らみすぎて、もう返せる気がしない」。
そう感じたまま日々の支払いに追われている中小企業の経営者は、決して少なくありません。
直近では大手経済メディアが「26年版・倒産危険度ランキング」を公表し、過剰債務に苦しむ企業の存在が改めて浮き彫りになってきた状況です。
この記事では、過剰債務で倒産が頭をよぎる経営者に向けて、債務超過との違い、現場で見えてくる心情、そして倒産・破産を即決する前に検討できる事業再生の選択肢をまとめていきます。
読み終えたとき、「自分にはどんな手札があるのか」を冷静に見直せる状態を目指す内容です。
過剰債務とは──債務超過との違いを押さえる
過剰債務(オーバーデット)とは、本業の利益や手元キャッシュフローでは到底返せない水準まで借入が膨らんでいる状態を指します。
会計上の純資産はまだプラスでも、毎月の元利返済が利益を上回っていれば、実質的には過剰債務といえる状態です。
一方の債務超過は、貸借対照表上で負債が資産を上回っている状態であり、こちらは決算書を見れば数字で判別できます。
言い換えると、債務超過は「決算書の世界」、過剰債務は「資金繰りの世界」の話だと押さえておくと分かりやすいでしょう。
両方が同時に起こることもあれば、過剰債務だけが先行するケースも珍しくありません。
経営者の体感としては、債務超過よりも過剰債務のほうが先に「苦しさ」として表面化しやすい傾向があります。
26年版・倒産危険度ランキングが映す現場の現実
2026年に入ってから、大手経済メディアが「26年版・倒産危険度ランキング」を公表し、過剰債務に苦しむ企業の存在が浮き彫りになりました。
AIでランキングの内容を調べると、次のような数字が紹介されています。
上場企業約3,900社を総点検したうえで、倒産の「危険水域」にあると評価された企業が408社にのぼりました。
業種別には、不動産66社、電機・精密32社、機械27社、アパレル24社、自動車23社、小売23社、化学21社、鉄鋼・金属20社、電力・ガス14社、建設9社などが対象に含まれています。
背景としては、2025年度上半期の企業倒産が12年ぶりの高水準となり、「人手不足倒産」も過去最多を更新したことが指摘されています。
物価高、人件費の上昇、長期金利の上昇による利払い負担の増加が、過剰債務を抱える企業に追い打ちをかけている構図です。
— AIで「2026年版 倒産危険度ランキング ダイヤモンド 過剰債務」について調べた際の解説より引用
背景にあるのは、コロナ禍で実行された無利子・無担保の特別融資(いわゆるゼロゼロ融資)の据置期間がほぼ終了し、本格返済に切り替わった企業が多いことだと一般的に言われています。
ランキング上で名前が挙がるのは上場企業ですが、実際に過剰債務の重みを感じているのは、報道に登場しない地方の中小・零細企業のほうが圧倒的に多いというのが現場の感覚です。
月々の返済額が利益を上回り、新規融資の枠も残らず、表向きは事業を続けながら内側だけが疲弊していく構図は、業種を問わず観察されます。
過剰債務の経営者が陥りやすい心情の構造
過剰債務の状態が長引くと、経営者の頭の中では次のような心の動きが交互に押し寄せると言われます。
「従業員と取引先に迷惑はかけられない」「家族に弱音は吐けない」「銀行担当者の前では強気でいなければ」。
この緊張が長期化すると、判断材料を集める前に「もう破産しかない」と一足飛びに結論を出してしまう経営者が一定数いらっしゃいます。
しかし、選択肢を一通り見渡す前に決断してしまうと、後から「他にも道があったのではないか」という後悔につながりやすいのも事実です。
過剰債務の局面こそ、感情と切り離して手札を見渡す時間が必要です。
「破産しかない」と言われたあとに残されている選択肢
相談先を訪ねた結果、「もう破産しかありません」と言われて事務所を後にした、というご相談は私たちの元にも多く届きます。
各専門家は得意とする手続きの中で誠実に解決策を組み立てるため、相談先によって出てくる選択肢の幅は自然と変わるものです。
これは構造の話であり、誰かの怠慢の話ではありません。
過剰債務の局面で、現実に検討余地がある主な方向性をまとめると、おおむね次のように分けられます。
- 本業を残しながらの再生:金融機関とのコミュニケーションの取り方を見直し、債務の組み立て直しと収支の立て直しを並走させる方向
- 事業の一部を切り離す再生:採算事業と不採算事業を分け、健全な部分だけを残す設計
- 承継を視野に入れた組み直し:負債を引き継がせない形で、後継者や第三者に中核事業を移す設計
- 法的整理:民事再生・特別清算・破産といった、裁判所を介する手続き
大切なのは、これらを「順番に試す」ものとして捉えるのではなく、自社の状態に応じて最適な組み合わせを設計するという視点です。
最初の相談先で提示された選択肢が、必ずしも自社にとっての最適解とは限りません。
リスケに入る前に手を打つことの意味
過剰債務の局面で「とりあえずリスケジュールで延命」と考える経営者は多いものです。
しかし実務の世界では、リスケに入る前か入った後かで、経営者本人を守る選択肢の幅が大きく変わると言われています。
たとえば代表者保証(個人保証)を外す制度として知られる経営者保証ガイドラインには、いくつかの要件が定められていますが、「財務基盤・返済能力」に関する項目は、リスケに入った時点で実務上の評価が下がりやすいと一般的に語られます。
月々の返済負担を軽くするはずのリスケが、自宅や個人資産を守る選択肢を狭めてしまう面もあるということです。
だからこそ私たちは、「リスケジュールを検討する段階に至ったときこそ、決める前に一度ご相談ください」とお伝えしています。
リスケが悪なのではなく、選択肢を見渡したうえで選ぶのと、何も知らずに入るのとでは、その後に残せるカードの数がまったく違うからです。
もうひとつ、見落とされがちな問題があります。
リスケジュールを実行し、一定期間をやり過ごしたあとに通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、現場の経験則としてほとんど存在しません。
月々の負担を軽くした結果、経営の構造的な課題に手をつける時間とエネルギーが奪われ、リスケ期間が終わるころには次の延長を申し入れざるを得ない状態になっている。
そんな循環を、たちばなはじめは何度も現場で見てきました。
本来取れるはずだった選択肢が、リスケのなかで少しずつ削られていく構造です。
厳しい話に聞こえるかもしれませんが、これが現実です。
もし信じられないと感じる方がいらっしゃれば、ぜひお付き合いのある銀行員や税理士の方に、こう聞いてみてください。
「リスケから通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、どのくらいありますか?」と。
おそらく多くの方が、「ない」もしくは「ほとんどない」と答えるはずです。
とはいえ、すでにリスケに入っている方も、諦める必要はありません。
リスケ後でも取り得る選択肢は確かに残されています。
サービサー対応を見据えた組み立て直し、自宅や個人資産を守る保全設計、再生スキームのゼロからの組み立て…。
リスケ前と比べて選べる手は少なくなるとはいえ、まだ踏み出せる余地は十分にあります。
ひとりで決めずに、まずは一度ご相談ください。
私たちが伴走する事業再生の進め方
たちばなはじめ自身、かつて事業の失敗から、返済が立ち行かなくなった時期がありました。
そのとき選んだのは、金融機関と足並みを揃える一般的な手順ではなく、金融機関への向き合い方や交渉のアングルを工夫し、資金繰りを立て直す道でした。
法的な手続きに頼ることなく再起した実体験が、現在の支援活動の出発点になっています。
これまで多くの経営者の支援に携わってきたなかで見えてきたのは、過剰債務の問題は単独で扱うより、不動産や個人資産を含めた全体設計のなかで組み立てたほうが、経営者と家族の手元に残るものが大きく変わるという事実です。
非常時の前に「平常時の備え」を組み込む発想
過剰債務の局面に入ってから不動産や自宅を守ろうとすると、打てる手は急速に狭くなります。
理想は、業績が安定しているうちに、根抵当の設定状況の見直しや、自宅と事業所の名義の見直し、事業用資産と個人用資産の切り分けといった「平常時の備え」を組み立てておくことです。
とはいえ、すでに非常時に入っている経営者であっても、現状から取りうる手立ては必ず残されています。
重要なのは、選択肢を一通り見渡してから決めることです。
まとめ──決断する前に、まず手札を一通り見渡す
過剰債務は、決算書の数字以上に経営者の心を消耗させる状態です。
倒産危険度ランキングのような報道は、いまの中小企業を取り巻く環境の厳しさを示す一方で、「同じ局面にいる経営者は自分だけではない」という事実も伝えています。
だからこそ、感情に飲み込まれて結論を急がず、まず手札を一通り見渡してから決断することが何より大切です。
もし負債や資金繰りで眠れない夜が続いているなら、倒産・破産だけが選択肢ではありません。
お一人で抱え込まず、破産を決断してしまう前に、ぜひ一度私たちにご相談ください。
倒産や破産以外にもいろいろな選択肢があるということを、まずは知るところから始めていただきたいと思います。
資金繰りの課題を抱える経営者の方へ3つのご案内
あなたの選択肢を、一緒に考えませんか?

