「保育園が足りない」と言われていた時代から、状況は大きく変わりました。
2026年9月、帝国データバンクの調査で、保育園の倒産・廃業が1-8月だけで36件にのぼり、同じ期間で過去最多になったと発表されています。
3年連続で最多を更新するペースだといいます。
子どもを預ける場所が足りなかったはずの保育園が、なぜ消えていくのか。
ひと言でいえば、地域によって需要と供給のバランスが崩れてきたからです。
あなたの園の3年後の園児の数を、数字で考えたことはありますか?
まずは、調査の中身から見ていきます。
保育園の倒産・廃業が3年連続で過去最多ペース
帝国データバンクは、保育園を運営する事業者の倒産と休廃業・解散について、次のように発表しています。
2026年1-8月に発生した「保育園」運営事業者の休廃業・解散は30件発生し、前年同期(20件)から10件・1.5倍となった。また、倒産は6件発生し、同期間では累計で過去最多となる計36件の保育園が消滅した。子供の減少による園児獲得競争の激化や保育士不足、運営コストの上昇といった三重苦に直面し、事業が続けられなくなった保育園が増えている。
— 2026年9月、帝国データバンク「『保育園』の倒産・休廃業解散動向(2026年1-8月)」より引用
36件のうち30件は倒産ではなく、事業をやめる「休廃業・解散」です。
前の年の2025年も、1年間の倒産・廃業はあわせて46件と、年間で過去最多でした。
また、2026年の倒産・廃業のうち、首都圏・京阪神・中京以外の「地方」が占める割合は7割を超えました。
10年前の2016年は47.1%と5割を下回っていたので、地方の割合が大きく上がったことになります。

保育園が足りない時代から一転したのはなぜか?
こども家庭庁が2026年4月時点でまとめた数字(暫定値)を見ると、保育園をめぐる状況の変化がよくわかります。
- 待機児童は2,435人で、ピークだった2017年の2万6,081人の10分の1以下
- 定員に対して実際に利用している子どもの割合(定員充足率)は、全国で87.7%
- 定員充足率は、都市部の90.9%に対して、過疎地域では72.7%
定員充足率は、全国的に下がる傾向が続いています。
帝国データバンクが挙げる理由のなかで見逃せないのが、供給の側の変化です。
同社は、待機児童をなくすための施策が進み、異業種からの参入もあって、一部の地域では保育の需要に対して施設の数が多すぎる傾向がみられると指摘しています。
とくに人口の減少が大きい地方では、少子化の影響を強く受けた園の撤退が増えています。
需要の側でも、変化が起きている。
同じ調査では、3歳を過ぎると、教育的なカリキュラムを求めて幼稚園や認定こども園へ移る動きが加速しているとしています。
従来型の保育園にとって、採算を見込めたのが3〜5歳児のクラス。
そのクラスで定員割れが起きやすくなり、収益のバランスが崩れている、というのが調査の見立てです。
地域によっては、保育園が足りなかった時代に増えた園の数に、子どもの数が追いつかなくなっています。
いま起きているのは、そういうことなんです。
保育園の経営も需要と供給のバランスで決まる
たちばなはじめの考え方では、商売の成否は需要と供給のバランスで決まります。
需要に対して供給が多ければ利益は出ず、少なければ利益が出ます。
保育園も例外ではありません。
どれだけ丁寧な保育をしていても、地域の子どもの数が減り、近くに園が増えれば、定員はなかなか埋まりません。
では、保育園の収入はどのように決まるのか。
認可保育園の運営費は、国が年齢などに応じて定めた子ども1人あたりの単価(公定価格)をもとに、在籍している子どもの数に応じて支払われます。
保護者が払う保育料も市町村が決めるため、値上げで売上を補うことが難しい仕組みです。
商売の売上は「客数×客単価」で決まりますが、保育園は1人あたりの単価を自分で動かしにくい分、収入が園児の数に大きく左右されるのです。
園児が減れば、収入も減る。
一方で、保育士の給料や家賃、借入の返済は、園児が数人減ったからといって同じように減るわけではありません。
定員割れが続けば、その差の分だけ、毎月手元のお金が減っていきます。
ここで「設備を新しくして園児を集めよう」と考える経営者もいるでしょう。
ですが、子どもの数そのものが減っている地域で園児を増やそうとすれば、そのためのお金が先に出ていきます。
需要が減っている市場で、お金をかけて園児を集めにいくのは分の悪い勝負です。

保育園の定員割れは数字で先に読める
保育園は、ほかの事業に比べて需要の先を読みやすい事業です。
3年後に3〜5歳児のクラスにいる子どもは、すでに生まれているからです。
厚生労働省の概数では、2025年に生まれた日本人の子どもは約67万人で、10年続けて減り、過去最少になりました。
これ以上園児が減る前に、いまのうちに数字で確かめておきましょう。
やることは次の3つです。
- 地域で生まれている子どもの数と、近くの園の定員を調べる
- 年齢ごとのクラスの埋まり方を、ここ数年分見比べる
- 経費を払ったあとに残るお金と、毎月の返済額を比べる
1つ目は、園の外の需要と供給。
市町村は、5年を1期とする「子ども・子育て支援事業計画」で、地域の教育・保育の量の見込みと、それに対する受け入れ体制をどう確保するかを定めています。
国の資料でも、この計画は地域の教育・保育などの「需給計画」と説明されています。
出生数の推移とあわせて見れば、地域の園児が数年後にどう変わりそうか、見当がつきます。
2つ目は、園の中の需要。
とくに3〜5歳児のクラスが埋まっているかどうかは、採算に直結します。
空いている理由が、子どもがいないからなのか、保育士が足りずに受け入れられないからなのかも、分けて見てください。
保育士が足りないだけなら、地域の需要はまだ残っています。
その場合も、保育士を雇って受け入れを戻したとき、増える給料と返済を払ってお金が残るかを、3つ目の数字で確かめることが大切です。
そして3つ目が、いちばん大切な数字です。
保育士の給料や家賃などの経費を払ったあとに残るお金が、借入の返済額より少なければ、園を開けているだけで手元のお金は減り続けます。
あわせて、手元のお金があと何か月もつのかも計算しておいてください。
子どもたちへの思いは大切にしたまま、何を選ぶかを数字で決めるための材料が、この3つです。
子どもたちのためにも決断を先送りしない
3つの数字を見て、このままでは手元のお金が減り続けるとわかったら、手を打つ段階です。
返済の重さが原因なら、保育士の給料や保育に使うお金を削って返済にあてる前に、手元にお金が残っているうちに相談に来てほしいのです。
園児の数そのものが足りないなら、定員を減らして規模を合わせるのか、近くの園と一緒になるのか、園を閉じるのかを決めることになります。
ただ、園の形を変えるとなると、保育園にはほかの業種にはない難しさがあります。
預かっている子どもと、その家族の暮らしがかかっているからです。
「せめて、いまの子どもたちが卒園するまでは続けたい」
「急に閉めたら、保護者が仕事に行けなくなる」
そう考えて、苦しくても園を開け続ける経営者の気持ちは、痛いほどわかります。
ですが、迷っている間も、給料や家賃、返済の支払いは止まりません。
決断が遅れるほど、子どもたちと職員のために使えるお金は減っていく。
子どもたちを思う気持ちが強い経営者ほど、早く決める意味があります。
お金が残っているうちに決めれば、転園先探しや職員の行き先にも、時間とお金をかけられるからです。
園の形を変えるなら年度の区切りから逆算する
定員を減らすにしても、近くの園と一緒になるにしても、園を閉じるにしても、すぐにはできません。
保護者への説明、子どもたちの転園先探し、職員の行き先、市町村との相談と、やることはたくさんあります。
子どもたちのことを考えれば、園の形を変えるのは年度の切り替わりに合わせたいところです。
4月に合わせるなら、園のある市町村で入園の申し込みがいつ始まるかを、まず確かめてください。
「多分大丈夫」で判断してはいけない、というのがたちばなはじめの考え方です。
「来年度は、たぶん園児が集まるだろう」という見込みも同じです。
準備には時間をかけ、決めたら素早く動く。
年度の区切りから逆算すれば、いつまでに何を決めればいいかが見えてきます。
ただ、すでに逆算するだけの余裕がない、という方もいるでしょう。
保育士の給料日の前になると、通帳の残高を何度も確かめてしまう。
あなたがいまそこまで追い込まれていても、園の形をどうするかを、破産などの裁判所の手続きに頼らずに一緒に考えることはできます。
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地域の子どもの数、クラスごとの埋まり方、経費を払ったあとに残るお金と返済。
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