「売上が伸びているうちは、借入が増えても大丈夫」
そう考えている社長は少なくないでしょう。
2026年9月、大阪と千葉に拠点を置く不動産会社が破産手続きの開始決定を受けたと報じられました。
負債総額は、関係会社と合わせて約108億9500万円。
大阪の不動産会社では、過去10年で最大の規模です。
この会社の売上は、破綻する直前の決算期に4倍以上に伸びていました。
それでも、資金繰りは限界に達しました。
なぜ、売上が伸びている会社が倒れたのか。
鍵になるのは、約90億円にのぼる借入金と、その返済のあてをどこに置いていたかです。
借入90億円の不動産会社が売上4倍の決算から半年余りで破産
まず、報道された事実を確認しておきます。
2021年9月設立の不動産会社が、2026年8月31日に大阪地裁から破産手続開始決定を受けた。地主や不動産業者から土地を仕入れて企画・開発し、ハウスメーカーなどに販売する事業を中心に、首都圏での案件増加に伴い東京・千葉にも本店を置く体制を築き、複数の関係会社を設立して事業を拡大していた。2025年1月期の売上高は約15億7600万円、2026年1月期には投資用不動産の売買を積極的に行い、売上高は約67億2600万円へ急拡大した。急激な事業展開と開発案件の増加に伴い、一般企業や金融機関から約90億円の借入金を調達していたため、返済負担が重くのしかかっていた。不動産販売が停滞したことで売上金による返済計画が狂い、資金繰りが急速に悪化。滞納していた税金や社会保険料などの公租公課の支払いを求められたことで限界に達し、2026年5月18日に事業活動を休止して事後処理を弁護士に一任した。負債総額は関係会社と合わせて約108億9500万円で、大阪の不動産会社としては過去10年で最大規模となる。
— 2026年9月、帝国データバンク・東京商工リサーチの倒産速報を伝えた報道より
売上は約15億円から約67億円へ、1年で4倍以上に伸びました。
数字だけ見れば、勢いのある会社です。
ところが、その裏側で借入金は約90億円にまで膨らんでいました。
売上の伸びと同じ勢いで、借入も膨らんでいったんですね。
そして販売が止まった瞬間に、売上金で返すはずだった返済計画が崩れました。
これは不動産会社に限った話ではありません。
借入で仕入れて、売って、その代金で返す。
この形で商売をしている会社すべてに関わる話です。
売れる予定を返済のあてにした借入とは?
「売れたら返す」という借入は、こういう形です。
土地を仕入れるお金は、売れる前に出ていきます。
開発や建築の費用も、売れる前に出ていきます。
手元の現金だけでは足りないので、借入で先に払います。
そして、売れたときの代金で返す。
この商売の返済のあては、「これから売れる予定の物件」に置かれているわけです。
売れている間は、何の問題も起きません。
むしろ、仕入れを増やすほど売上が伸びるので、借入を増やすことが正しい判断に見えてきます。
が、売れない月が来たらどうなるか。
売上金は入ってこないのに、返済日は毎月やってきます。
返済のあてにしていた物件は、売れるまで現金に変わりません。
ここで初めて、「返すあてがない借入」だったことに気づくんです。
たちばなはじめが繰り返し伝えているのは、融資は金融機関から見れば投資だということ。
「ここにお金を入れれば、増えて返ってくる」という目論見のもとで、金融機関は審査をして貸しています。
借りる側も同じで、「売れて、増えて、返せる」という見込みに賭けているにすぎません。
その見込みが外れたとき、返せなくなるのは当然のことです。
売れる予定で借りたお金は、売れない月には売上から返せない。
この単純な事実を、拡大の勢いの中で見失ってしまう会社は本当に多いのです。
売上が伸びるほど借入が膨らむ商売の危うさ
この会社は、売上が4倍に伸びた決算期の終わりから、半年余りで破綻しました。
不動産の開発や売買では、仕入れた土地も建てた建物も、売れるまでは在庫です。
在庫は、売れるまで現金には変わらない。
売上を4倍にするには、その分の物件を先に仕入れておく必要があります。
だから売上が伸びれば伸びるほど、仕入れのための借入も膨らんでいきます。
売上が4倍になった裏で、手元にあったのは売れていない物件と、約90億円まで膨らんだ借入でした。
限られた資金で無理に売上を伸ばせば、増えた売上より先に手元の資金が出ていくのです。
借入先に金融機関だけでなく一般企業が含まれていた点を見ると、金融機関の融資だけでは足りなくなっていた可能性があります。
もしあなたの会社で、金融機関の融資だけでは足りず、取引先や個人からの資金に手を伸ばし始めているなら、ちょっと待ってください。
それは、たちばなはじめが「藁をも掴む思いなら藁を掴むな」と伝えている状態そのものです。
そこまで借入が膨らんでいても、売上の数字は伸びて見えます。
売上の伸びが「儲かっている」ことを示すとは限りません。
拡大しているときほど、社長は売上ではなく現金の残りを見ておかなければなりません。
税金や社会保険料を後回しにし始めたら非常時
報道にはもうひとつ、見逃せない一文があります。
滞納していた税金や社会保険料の支払いを求められて、限界に達したという部分です。
売上が67億円あった会社が、税金や社会保険料を滞納していたわけです。
つまり、行き詰まるより前から、支払うべきものを後回しにして資金を回していたと見られます。
たちばなはじめは、平常時と非常時をはっきり分けて考えています。
売上が下がってきた、支払いがきつくなってきた、未払いや分納やファクタリングに頼っている。
こうした状態は、すでに非常時です。
税金や社会保険料の後回しも、この中に入ります。
ところが、多くの社長はそれを「一時的なやりくり」だと考えてしまいます。
次の物件が売れれば追いつく、来月の入金があれば戻せる、と。
そして、その「次」が来ないまま、滞納分の請求が届くんです。
滞納分の請求が届いてからでは、遅いのです。
支払いの後回しを始めた月が、手を打つ月です。
売れない月に返せるのは手元の現金だけ
では、売れる予定で借りたお金は、売れない月にどう返すのか。
答えは単純で、売上からは返せません。
返せるのは、売れない月が来る前に手元へ残しておいた現金だけです。
だから社長が見ておくべき数字は、「今月いくら売れたか」ではありません。
「売れない月が続いたら、返済と支払いを何か月続けられるか」です。
仕入れを増やす前、拠点を増やす前、借入を増やす前に、この数字を一度計算してみてください。
次の物件が売れるまでにかかる期間より短いなら、その拡大は現金の裏づけがない拡大です。
「販売が止まったら、返済はどうするのか」
この問いに、借りる前から答えを持っておくこと。
それが、売れる予定で借りるすべての会社に必要な備えです。
そして、すでに売れない月が続いているなら、話は別です。
売上金をあてにしていた返済を、売れない月にまで無理に続けると、税金や社会保険料、取引先への支払い、従業員の給料まで回らなくなります。
返済のあてが消えたのなら、返済の組み方そのものを見直す道があります。
手元の現金を守る手段は、まだ残っているんです。
売れる予定のお金は売れるまで現金ではない
売上が4倍に伸びても、販売が止まった月には借入90億円の返済は回りませんでした。
売れる予定は、売れるまで1円の現金にもなりません。
拡大しているときほど、社長は現金の残りと、売れない月が来たときの返済を先に決めておかなければなりません。
そして、税金や社会保険料の支払いを後回しにし始めたら、それはもう非常時です。
次の売上を待つのではなく、その時点で手を打ってください。
早く動けば動くほど、残せるものははるかに多くなります。
資金繰りだけではなく、拡大で膨らんだ借入の整理や返済の見直しについてのご相談も受け付けています。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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