円安による倒産が、前年を上回るペースで増えています。
東京商工リサーチの発表によると、2026年5月の円安関連倒産は9件となり、今年最多水準となりました。
1月から5月までの累計は37件。
前年同期を上回るペースで推移しており、仕入れコストの上昇が中小企業の資金繰りを圧迫している状況です。
「うちは輸入をしていないから関係ない」と考える社長もいるでしょう。
が、円安の影響は輸入業者だけのものではありません。
原材料、燃料、包装資材、物流費、電気代、、、
世の中の、あらゆるものが値上がりしています。
もはや、輸入業者だけでなく、すべての事業者に影響していると言えるのです。
円安倒産の増加は仕入れ高だけの問題ではない
今回の円安関連倒産について、東京商工リサーチは次のような内容を示しています。
2026年5月の円安関連倒産は9件で、前年同月比80.0%増となった。
1月から5月までの累計は37件で、前年同期比27.5%増。
年間最多だった2024年の同期間30件を上回っており、このペースでは年間最多を更新する可能性がある。
5月は製造業、卸売業、小売業、サービス業他で発生しており、輸入コストの上昇と価格転嫁の難しさが中小・零細企業の倒産リスクを高めている。
— 東京商工リサーチ「2026年5月の円安関連倒産動向」より要約
このニュースで注目したいのは、倒産件数そのものだけではありません。
仕入れコストが上がっても、販売価格にすぐ反映できない会社が増えているという点です。
原価が上がれば、本来は売値を見直す必要が出てきます。
でも、現実には、取引先との関係、競合価格、既存契約、顧客の反応などを考慮すると、簡単には値上げできないのが実情です。
その結果、売上は維持できていても粗利が薄くなってしまう。
粗利が薄いまま借入返済、家賃、人件費、外注費を払い続けると、当然会社に残る現金は少しずつ減っていきます。
円安倒産とは、為替相場だけで完結する話ではありません。
円安によって仕入れと販売価格のバランスが崩れ、資金繰りが持たなくなるのが大きな原因のひとつです。
危ないのは売上があるのにお金が残らない会社
中小企業の資金繰りで怖いのは、売上が急にゼロになることだけではありません。
売上があるのに、手元にお金が残らない状態。
これも、じわじわと会社の首を締めていきます。
社長は売上の増減には敏感です。
今月の売上、前年同月比、受注残、来月の見込み。
このあたりは当たり前のように確認しているでしょう。
一方で、粗利率と現金残高の関係は見落とされがち。
たとえば、仕入れ価格が上がって粗利が月50万円減ったとします。
その50万円は、社長の役員報酬、従業員の給与、家賃、借入返済に回せたはずのお金です。
短期なら何とかなるかもしれません。
しかし、それが半年続けば300万円。
一年続けば600万円にも膨れ上がります。
この差は、月末の支払い、賞与、税金、設備修繕、金融機関への返済に直接響いてくる。
だからこそ、円安局面では売上だけを見ていてはダメ。
どれだけ粗利が残っているか。
粗利から固定費と返済を引いたあと、いくら現金が残るか。
この数字を追いかけることが重要なのです。
価格転嫁を後回しにすると資金繰り表が先に崩れる
価格転嫁は、社長にとって気が重い仕事です。
「顧客に逃げられたらどうしよう」
「他社に切り替えられたらどうしよう」
こう考えて、なかなか値上げに踏み切れない気持ちは痛いほどわかります。
ですが、価格転嫁を先送りしても、支払いは待ってくれません。
材料を仕入れる。
商品を作る。
在庫を抱える。
納品して売掛金になる。
入金される。
この流れの中で、現金は何度も形を変えます。
仕入れ価格が上がると、当然最初に出ていく現金も増えます。
それを売値で回収できなければ、資金繰り表の残高は少しずつ下がっていくことになる。
この状態が続くと、遅かれ早かれ値上げをしなければ、いつか立ち行かなくなってしまいます。
ここで重要なのは、価格転嫁を「いつかやる」ではなく、数字で期限を決めること。
仕入れが何%上がったら値上げ交渉を始めるのか。
未転嫁の粗利減少が月いくらになったら、取引条件を見直すのか。
在庫回転が何日を超えたら、仕入れ量を抑えるのか。
この基準がない会社ほど、気づいたときには現金残高が大きく減っています。
感情論ではなく、数字で期限を決めることが重要です。
リスケを考える前に資金繰りを見直す
資金繰りが苦しくなると、返済条件変更、いわゆるリスケジュールを検討する段階に入るでしょう。
月々の返済額が軽くなれば、目の前の資金不足はしのぎやすくなるからです。
ただし、リスケジュールに入る前と後では、金融機関からの見られ方が変わります。
借換え、追加融資、保証の見直しなど、まだ検討できたはずの選択肢が狭まってしまうのです。
話が動き始めると、もう巻き戻すことはできません。
リスケジュールするかどうかの判断は慎重に行う必要があります。
まずは自社の資金繰りがどうなっているのか、そこをしっかり見直しましょう。
今の粗利で、毎月の固定費と返済をまかなえているか。
価格転嫁が進まない場合、何カ月後に現金残高が危険水域に入るか。
在庫や売掛金に変わったお金は、いつ現金として戻ってくるか。
これらを確認しないまま返済の話だけ進めても、根本的な問題は解決しません。
円安の影響は、仕入れ、在庫、売掛金、粗利、返済のすべてに関わるテーマです。
だからこそ、返済条件だけを切り離して考えるのではなく、会社にお金が残る構造になっているかを見直すことが重要なのです。
会社と家族にお金を残すためにすべきこと
円安や物価高の局面では、判断がどうしても後手に回りがちです。
値上げは言い出しにくい。
銀行には相談しにくい。
従業員には不安を見せたくない。
その気持ちは本当によくわかります。
が、資金繰りは待ってくれません。
そうやって判断に迷っている間にも資金はどんどんすり減っていきます。
たちばなはじめが大切にしているのは、会社と社長にお金を残すという考え方です。
そのためには、売上よりも先に粗利を見ること。
利益よりも先に現金残高を見ること。
そして、もし資金繰りが苦しくなったときに、どこに優先的に限られた資金を投入するのか。
この優先順位を決めておくことが、何よりも重要です。
円安倒産のニュースは、決して他人事ではありません。
多かれ少なかれ、すでに何かしらの影響は受けています。
今後も、この状況は当分続いていくでしょう。
もし、この先の事業や資金繰りに問題や不安を抱えているなら、まずは一度ご相談ください。
早めに手を打つことが、一番の解決策です。
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