企業倒産が7月も1000件超…物価高で現金が足りなくなる仕組みを解説

あなたの会社では、仕入れの支払いと売上の入金、どちらが先に来ているでしょうか。

先に払って、あとから入ってくる。

ほとんどの中小企業が、この順番で商売をしています。

ふだんは気にも留めません。

ですが、仕入れ値が上がり続けている今の局面では、この順番がじわじわと会社の現金を削っていきます。

決算は黒字なのに、月末が近づくたびに通帳を見て慌てる社長は少なくありません。

その正体は、儲けの問題ではないことが多いんです。

目次

7月の企業倒産は1028件で2カ月連続の1000件超

2026年8月、7月の全国企業倒産の集計が公表されました。

2026年7月の全国企業倒産は1,028件(前年同月比6.9%増)、負債総額は2,363億1,200万円(同41.4%増)。2カ月連続で1,000件を超えたのは、2012年2月から5月にかけて以来、14年2カ月ぶりとなる。業種別では建設業200件、小売業139件、卸売業122件。原因別では物価高倒産が93件、人手不足関連倒産が63件だった。

— 2026年8月、東京商工リサーチの集計より

目を引くのは、卸売業と小売業の増え方です。

どちらも、仕入れて売るという商売の形をしています。

つまり、仕入れ値の上昇をいちばん正面から受け止める立場です。

物価高倒産が93件という数字も、そこに重なります。

同じ7月の末には、青森県で創業100年を超える木製家具メーカーが、破産手続きの開始決定を受けたと報じられました。

低価格のカタログ販売との競争、オフィスや宿泊施設の需要減、そこに材料の仕入価格の高騰が重なったとのこと。

2008年4月期に約2億6000万円あった売上高は、2025年4月期には約1億円まで落ち込んでいました。

100年続いた会社でも、この波を受け止めきれませんでした。

仕入れ値が上がると必要な現金も増える

ここで、いちばん単純な形で考えてみましょう。

80で仕入れて、100で売る商売です。

粗利は20です。

この仕入れが、物価高で88に上がったとします。

売価を据え置けば粗利は12に減りますが、問題はそこだけではありません。

毎月同じ数だけ仕入れて、同じ数だけ売っていても、先に出ていく現金は80から88に増える。

倉庫に積んである在庫の値段も上がります。

仮に値上げが通ったとしても、増えた請求書の金額は、入金日まで売掛金として寝ているだけです。

売上の数量は1つも増えていないのに、会社の外に立て替えているお金だけが膨らんでいきます。

たちばなはじめは、この立て替え分を「寝る資金」と呼んでいます。

受取手形、売掛金、在庫。

これらは帳簿の上では資産ですが、いま使える現金ではありません。

支払手形や買掛金という「支える資金」を差し引いて、残った差額が、会社が常に用意しておかなければならない運転資金です。

物価高の局面では、売上が横ばいでも、この差額だけが静かに大きくなっていきます。

「収支は合っているのに現金が足りない」の正体

「決算は黒字なのに、なぜかお金が残らない」

「売上は落ちていないのに、月末が毎回きつい」

そう感じている社長は、本当に多いです。

これを、たちばなはじめは「勘定合って銭足らず」という言葉で説明しています。

見るべきは、仕入れの代金を払ってから、売上の代金が入金されるまでの日数です。

入金が先で支払いが後なら、手元に現金が残ります。

支払いが先で入金が後なら、その間ずっと立て替え続けることになる。

支払いが30日、入金が60日なら、常に1カ月分の運転資金をどこかから調達し続けなければなりません。

この日数が逆転したまま売上が伸びると、立て替える金額まで一緒に増えていきます。

たちばなはじめ自身、若い頃にこの構造で苦しんだ経験があります。

石油製品の卸と小売を手がけていた時期、仕入れ先は大手の元売会社でした。

支払いは当月末締めの翌月末払い。

一方で、自社が顧客から代金を回収するのは翌々月の5日や10日、一部は手形や分納です。

支払いのほうが先に来て、回収は平均で70日から80日先。

収支は合っているのに現金が足りないという状態が、常態化していました。

だからこそ、たちばなはじめは「資金繰り改善の第一歩は金融対策にあり」と結論づけています。

日数のズレで生まれる立て替えは、日々の利益だけではなかなか埋まらないからです。

数字に強い社長ほど損益計算書を丁寧に見ますが、この日数の感覚が抜け落ちていると、月末が近づいたある日、不意に「あれ、現金が足りない」と金策に走る羽目になるんです。

値上げを進めても間に合わないことがある

仕入れが上がったのなら、価格に転嫁すればいいはずです。

理屈はその通り。

ただ、たちばなはじめはセミナーで、こうもお伝えしています。

国を挙げて物価上昇2%を目指しても、長年それが達成できませんでした。

ならば、競争の激しい市場にいる中小企業が、思うように客単価を上げられるはずがありません。

実際、値上げを申し入れてから価格が改定されるまでには、早くても数カ月かかります。

「顧客に逃げられたらどうしよう」

「他社に切り替えられたら元も子もない」

こう考えて踏み切れない気持ちは、痛いほどわかります。

そして迷っている間にも、立て替える現金はどんどん増えていきます。

だから、価格の見直しは進めながら、それとは別に、いま手元の現金を守る手を打つ必要があるということなんですね。

まず確かめたいのは残高ではなく日数

今日からでも確かめられることが3つあります。

  1. 主要な仕入れ先への支払日と、主要な取引先からの入金日が、それぞれ何日離れているか
  2. 倉庫や店頭の在庫が、いまの売れ方で何日分あるか
  3. 前払いや前金を求められている取引が、この1年で増えていないか

1つ目の日数が開いているほど、会社は立て替え続けています。

2つ目の日数が伸びているなら、仕入れ値の上昇分がそのまま在庫に寝ている状態です。

そして3つ目。

「最近は現金前払いでしか仕入れさせてもらえない」という取引が出てきたら、それは資金繰りにとってかなり重い変化です。

この3つを紙に書き出すだけで、自社のどこで現金が止まっているかが見えてきます。

月末の残高だけを追いかけていても、原因までは見えません。

借り続けないと回らないなら別の手を考える

増えた運転資金を、融資で埋めたとします。

その月はしのげます。

ですが、仕入れ値が高いままなら、翌月も同じだけの現金が必要になる。

一時的に運転資金を借りるのは、まったく問題ありません。

気をつけていただきたいのは、借り続けないと回らなくなっている状態のほうです。

そうなると、返済のために借りて、返済のためにまた借りるという循環に入ります。

利益は元金の返済と利息にどんどん吸い取られ、手元にはいつまでも現金が残りません。

そのまま我慢を重ねていると、選べる道はどんどん狭くなってしまう。

その段階まで来ているなら、考えるべきは追加の融資ではありません。

金融機関との交渉方法を見直して、返済そのものを組み直すという道があります。

返済に回っていた現金が手元に戻れば、仕入れの支払いにも、従業員の給与にも充てられます。

順番としては、こちらが先です。

すでに支払いが厳しくなっている方も、諦めるのはまだ早いです。

法的な手続きに頼らずに解決できる可能性を最後まで探る。

それが、私たちが一貫して大切にしてきた姿勢です。

数字は月末ではなく日数で見る

物価高で行き詰まる会社は、儲けが出ていないから行き詰まるわけではありません。

同じ商売を続けるのに必要な現金が増えて、その差を埋めきれなくなるからです。

だから、見るべきは損益ではなく、仕入れから入金までの日数です。

ここが縮まれば、同じ売上でも会社に残る現金は増えます。

会社と社長にお金を残す基本的な考え方は、無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています。

手元に置いて、自社の数字と照らし合わせてみてください。

その内容を概論としてお伝えするセミナーも、定期的に開催しています。

たちばなスキームの全体像を、たちばなはじめが直接お伝えする学びの場として、ぜひお越しください。

そして、支払いの目処が立たない月がすでに見えているなら、無料の個別相談という入口があります。

早く手を打つほど、会社に残せるお金は多くなります。

気がかりなことがあれば、ひとりで抱え込まず、まずは一度ご相談くださいね。


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