ペット用品店の利益53.6%減…粗利率を高める3つのステップ

2026年8月、ペット・ペット用品小売業の経営状況について、調査結果が公表されました。

ペット関連は、長いあいだ「伸びている市場」として語られてきた分野です。

ところが、出てきた数字は少し違う景色を映していました。

ペット・ペット用品小売業の2025年度の売上高合計は2,417億円で、前年度から0.5%の増加となった。一方、利益の合計は19億円にとどまり、前年度から53.6%減少している。コロナ禍前にあたる2019年度の32億円も下回る水準となった。売上高の伸び率は2023年度2.6%増、2024年度1.2%増、2025年度0.5%増と鈍化が続いている。

— 2026年8月、東京商工リサーチの調査より

売上は増えています。

それでも、利益は半分以下になりました。

そしてこれは、ペット業界だけに起きていることではありません。

仕入れ値と人件費が上がり続けたこの数年、同じ形にはまり込んでいる会社は業種を問わず増えています。

目次

売上が0.5%増えて利益が53.6%減るということ

この2つの数字が並んでいる意味を、少していねいに見ておきます。

売上は前の年より増えました。

商品は売れているし、お客さまも離れていない、ということです。

それなのに、手元に残る利益だけが大きく減りました。

売れた量ではなく、1つ売るごとに残る金額が細っている。

そう考えないと説明がつかない数字です。

この業界では、扱う商品の4割以上が輸入品だと言われています。

仕入れ値が上がった分を売値に乗せきれなければ、売れば売るほど残りは薄くなります。

実際、この期間に起きた倒産は、集計上の区分ではすべて販売不振とされています。

ただ、業界全体で見れば売上は増えている。

個々の会社を追い込んだのは、売れないことよりも、売れても残らない構造だったと見るほうが自然です。

「売上を増やす」が答えになりにくい

業績が苦しくなると、多くの社長はまず売上を増やそうとします。

ただ、いまはその手が効きにくくなっています。

人口が減っていくなかで、客数を増やすのは簡単ではありません。

ネットで価格が並べて比べられる以上、客単価を上げるのも簡単ではありません。

だからといって、経費を削るほうもたいていはやり尽くしています。

それでも足りないから、また借りる。

その繰り返しで返済だけが重くなっていった会社を、これまで何度も見てきました。

売上も経費も動かしにくいのであれば、残る場所は「1つ売るごとにいくら残るか」しかありません。

見るべき数字は売上高ではなく粗利

粗利(売上総利益)は、売上から仕入れなどの原価を引いた残りです。

この残りが、家賃も、給料も、借入の返済も、すべてをまかなう財源になります。

数字を単純にして考えてみましょう。

家賃や人件費などの固定費が、月に100万円かかる会社があるとします。

70円で仕入れたものを100円で売っていれば、1つ売るごとに残るのは30円、粗利率は3割です。

この3割で100万円をまかなうには、333万円ほど売って、ようやく利益がゼロになります。

400万円売れれば、粗利は120万円、利益は20万円。

ここで粗利率が3割から2割5分に落ちると、同じ400万円を売っても粗利は100万円にしかなりません。

利益はゼロです。

売上はまったく減っていないのに、手元に残るものだけが消えます。

「売上は伸びているのに、なぜか楽にならない」という感覚の正体は、たいていここにあります。

粗利率を高める3つのステップ

粗利を確かめると言っても、決算書に載っている会社全体の粗利率を眺めるだけでは足りません。

あの数字は、いろいろな商品を平均したものだからです。

平均の裏では、きちんと残る商品と、ほとんど残らない商品が混ざっています。

だから、商品ごと・サービスごとに分けて調べます。

やることは次の3つです。

  1. いくらで仕入れて、いくらで売っているかを、主力の商品から順に書き出す
  2. 1つ売るごとに残る金額と、その割合を出す
  3. いちばん売れている商品が、いちばん残っている商品かどうかを見る

ここまでやると、「売れているのに残っていない商品」がたいてい見つかります。

そこが分かって初めて、仕入れ先に単価の相談をするのか、売値を上げるのか、扱いをやめるのかという判断ができます。

そしてこの作業は、経理に任せて終わりにできる仕事ではありません。

どの商品を残して、どの商品を手放すか。

会社の商売そのものを決める話ですから、社長が自分で手を動かして確かめるところに意味があります。

数字から目をそらさないことが立て直しの入口

たちばなはじめは、もともと会計を経理まかせにしていました。

売上と利益さえ見えていれば事業は回ると思い込んでいたからです。

自社の資金繰りが少しずつ苦しくなってきたことをきっかけに、自分で会計を学び始め、数字を直接つかむようになりました。

ですが、その努力は実らず、結果として多額の負債を抱えて事業は破綻しています。

気づいて学び始めても、始めるのが遅すぎた。

だからこそ、いまも繰り返し言い続けているのが「事業の根幹は事業ではなく会計にあり」という言葉です。

数字をおろそかにしたことが、そもそも自分の事業を窮地に追い込んだ入口でした。

その痛みが、この言葉の根にあります。

売上と最終利益だけを眺めていても、商品ごとに何が残っているかは見えません。

決算書を年に1回受け取るだけでは、細っていく粗利に気づけないのです。

粗利が細っているのに返済だけが変わらないとき

商品ごとに粗利を洗い出した結果、「これ以上どこも削れない」と分かることもあります。

そのときに残る論点が、毎月の返済です。

粗利が細っているのに、返済額だけは借りた当時のまま、という会社は珍しくありません。

売上を短い期間で伸ばそうとすれば、単価を下げることになり、翌月以降の原価はむしろ上がります。

経費を急いで削れば、仕事のうえで何らかの不利益を覚悟することになります。

その点、返済の組み方を見直しても、原価は上がらず、日々の仕事にも響かない。

私たちは、金融機関との交渉方法を見直すところから支援に入ります。

社長の交渉に、専門家チームと一緒に伴走する形です。

まとめ

売上が伸びていても、粗利が細っていれば会社は苦しくなります。

今回の調査は、それがひとつの業界全体で同時に起きうることを示しました。

だから確かめる順番は、売上高ではなく粗利です。

会社全体の平均ではなく、商品ごとに分けて見る。

そのうえで、まだ手を打てる余地があるのか、返済の組み方から見直すべきなのかを判断する。

ここまで来れば、感覚ではなく数字で決められます。

もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。


この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次