YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第21回のテーマは、借入金を抱えた開業医が、クリニックや歯科医院をたたむときの出口の考え方です。
医療機関の倒産が増えているというニュースを受けて、事務局の谷本が聞き手となり、たちばなはじめに聞きました。
医院を続けても返しきれない、かといって、やめるにやめられない。
あなたも、そんな板挟みのなかで身動きが取れなくなっていませんか?
たちばなの答えは、プライドより合理性で出口を決めること、そして倒産や破産を選ばずにお金を残すことでした。
お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。
「医者と坊主は丸儲け」が通じない時代
動画の冒頭で谷本が取り上げたのは、医療機関の倒産が過去最多のペースで増えているというニュースです。
2026年上半期(1-6月)に発生した医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産は39件となり、過去最多を記録した2025年上半期(35件)を上回った。
内訳は「病院」4件、「診療所」19件、「歯科医院」16件。
— 帝国データバンク「医療機関の倒産動向調査(2026年上半期)」より
たちばなは、10年前、20年前、30年前には、医師がお金で苦しい思いをするなど考えられなかったと振り返ります。
当時は「医者と坊主は丸儲け」という言葉もありました。
ところが今は、その言葉が当てはまらないほど、医師や歯科医師からの相談が少しずつ増えているといいます。
とくに歯科医院はコンビニよりも多いといわれ、競争は厳しくなる一方です。
一般の診療だけでは儲かりにくいからと、インプラントやホワイトニングに力を入れる医院も増えましたが、それも今では珍しいものではなくなりました。
では、借入金を抱えた院長は、最後の出口をどう考えればいいのでしょうか。
出口の基本は不動産に執着しないこと
谷本は、仕事柄ある程度の資産を持っている院長もいるなかで、最後の出口をどうアドバイスするのかを尋ねました。
たちばなが「一番シンプル」と挙げたのは、不動産に執着しないことです。
土地や建物をいったん手放すことになっても、手元に資金が残っていれば、買い戻したり借りたりして、同じ場所で診療を続ける道があります。
裏を返せば、不動産を残せるかどうかは、院長自身がどれだけお金を作れるか次第。
たちばなが残すのではなく、相談者自身が決めることだと、動画の後半でも話しています。

勤務医に戻るか協力者を得て続けるか
個人で開業している医院や、小さな規模の医院であれば、勤務医になるという選択肢があります。
事業主として採算が合わないのなら、医院をたたんでどこかに勤めれば、決まった給料を受け取れるからです。
経済的な合理性で考えれば、そのほうがいい。
たちばなは実際にそうアドバイスすることがあり、受け入れた人のなかには、1〜2年で支援を終える人もいるといいます。
ただ、医師になるまでの道のりが長いぶん、「勤務医に戻りましょう」という提案は、なかなか受け入れてもらえないことも多かったそうです。
一国一城の主であり続けたいという人ほど、立て直しはどうしても遅くなる。
勤務医にならずに医院を続けたいなら、医療法人の傘下に入るという手もあります。
とはいえ、借入金を返せないまま院長が自分で代表になれば、債権者から「看板を掛け替えただけではないか」と言われかねません。
かといって、医療法人の理事長は原則として医師または歯科医師である必要があるため、ハードルは高いとたちばなは話します。
だからこそ、協力者が必要になります。
「助かりたいんだったら、資金を作れ。資金が作れないんだったら、協力者を作れ」
谷本が同席した大阪での個別面談では、医師と歯科医師が続けて相談に来られたことがあります。
医師の方は「年も年だし、勤務医もいいと思っている」と話していて、たちばなは、こういう人ほど助かるのが早いといいます。
一方の歯科医師の方は、まだ頑張りたいという思いが強く、協力者になってくれそうな親戚とも、あまり仲が良くないとのことでした。
分かれ目は、プライドをほんの少し折れるかどうかです。
後継ぎのいない院長は60歳を過ぎたら後片付けを
谷本は、後継者がいないうえに負債もあり、医院を閉じられずに悩んでいる院長も多いと続けました。
後継者がいない、いても試験に通らない、というケースもあります。
たとえ後継者が決まったとしても、人口は減り続けています。
人口が減っているのだから、医療機関も減っていかなければつじつまが合わない、というのがたちばなの見方です。
だから、60歳を過ぎて後継ぎがいないなら、そろそろ後片付けにかかったほうがいい。
60代前半なら医師としての再就職の道もあるはずで、雇う側から見ても即戦力です。
たちばなは、そういう生き方のほうが合理的だと話しています。
そして、合理的な判断を教えるのが自分の仕事だとしたうえで、「自分のプライドと合理性は反比例する」と言い切りました。
お金を残して医院をたたむほうが合理的な理由
資金繰りに行き詰まって相談した先で、「倒産や破産ですね」という言葉をかけられることがあります。
そうなれば、ここまで頑張って築いてきた個人の資産も、水の泡になりかねません。
谷本のこの問いかけに、たちばなはまず、破産すると手元に残せる現金は法律で決められた範囲に限られると説明しました。
教育資金や学資保険を失うおそれにも触れています。ただし、実際に残せる財産は、名義・金額や自由財産の扱いなどによって異なります。
そのうえで、手続きを取っても取らなくても、その後の人生は続いていくと話します。
お金がある状態で立て直すのと、お金がない状態で立て直すのとでは、どちらが早いか。
10人いれば10人が、お金がある状態のほうが早いと答える、と言います。
立て直すことを前提に考えれば、破産せずにお金を残すほうが合理的だ、というのがたちばなの考えです。
一方で、すぐに借入金を終わらせたいなら、破産という選択肢もある。
その代わりお金は残らない、と付け加えます。
もう何も残っていないのだから、とその道を選ぶ人もいる。
たちばなによれば、法律上は、破産しても周りに迷惑はかからないとされています。
ところが、相談者とお付き合いするなかで、そうはなっていない場面に何度も立ち会ってきたといいます。
当の本人だけでなく、その配偶者までカードを使えなくなったり、子どもが大きくなってから住宅ローンの審査に通らなかったりした例があったそうです。
そうならないように、相談者には「ちょっとだけプライドを折ってくれ」とお願いすることがあるといいます。
それでも、受け入れられない人が半分以上いるのが現実だそうです。
だからといって、できないことをできるとは言わない。
できないことを約束して契約すれば、あとで相談者とのトラブルになるからです。

現実から目をそらさず小細工もしない
還暦を迎え、そろそろどうしようかと考える一方で、借入金はまだ数千万円、数億円と残っている。
このまま亡くなれば、しわ寄せは家族に行きかねません。
でも、医院を続けても返しきれません。
谷本は、そんな板挟みのなかですり減っている院長も多いと話し、たちばなに進むべき方向を尋ねました。
答えは「方向性はあるんですよ。受け入れないんですよ」。
方向性とは、ここまで見てきたように、不動産に執着せず、お金を残せる出口を選ぶこと。
それを受け入れられない院長が多い、というわけです。
たちばなは動画の後半で、自身が返済できなくなったあと、金融機関の担当者とどんなやり取りをしたのかを語っています。
そのうえで、契約どおりに物事を進め、持っているわずかな権利をきちんと主張することが大事だと話します。
そして、現実から目をそらさないこと。
現実逃避したくなる気持ちは分かる、とも言います。
それでも自分が目を向けられたのは、妻と子どもを守らなければいけないという思いがあったからだそうです。
谷本は、個人の資産を取られたくないからと小細工をして、ニュースになってしまうケースにも触れました。
返ってきたのは、それは浅知恵だという言葉です。
正直に、ルールの範囲でできることをやればいい。
変な小細工は加えない。
たちばな自身の仕事も、顧問の弁護士の監修を受けて進めているといいます。
ニュースを見ていると、医院が行き詰まったら倒産や破産しかない、と思い込みがちです。
でも、プライドより合理性で考えれば、お金を残して医院をたたむという道もあります。
開業医の資金繰りや、クリニックの後継者の問題については、次の記事でも取り上げています。
その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。
借入金を抱えたまま、医院を続けるかたたむかで迷っている院長のご相談も受け付けています。
やめるにやめられないと感じているなら、まずは一度ご相談くださいね。
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