運送業のM&A…赤字でも続けるなら売却先で現場責任者として残るのが一番現実的

運送業のM&Aと事業・仕事を残す道について伝えるたちばなはじめ

YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第20回のテーマは、赤字が続く運送会社の出口戦略です。

運送業のM&A、つまり事業の売却を軸に、事務局の谷本が聞き手となって、たちばなはじめに聞きました。

あなたの会社でも、赤字のまま、下請けへの支払いや税金をよそから借りたお金で回していませんか?

たちばなは、そうした資金繰りをきっぱり否定します。

そして、続けるのなら事業を売り、売却先で現場責任者として生きていくのが一番現実的だ、と言い切りました。

お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。

目次

運送業はもう斜陽産業

谷本がまず切り出したのは、物流・運送会社の倒産が増えているという話です。

たちばなのもとにも、運送会社からの相談が増えています。

東京商工リサーチも、2026年5月に次のような集計を発表しています。

2026年1-4月の「道路貨物運送業」の倒産が108件(前年同期比11.3%増)と、2年ぶりに100件を上回った。

— 東京商工リサーチ「2026年1-4月の『道路貨物運送業』倒産 108件に増加 人手不足に今後は中東情勢が追い打ちか」(2026年5月19日公表)より引用

たちばなは、2年ほど前まで5年半、コンサルの仕事と並行して運送会社に勤めていました。

その経験から、これまでの回で取り上げたほかの業界と同じく、今の運送業界も「もう斜陽産業」だと言います。

ネットで物を買う習慣がすっかり根付き、荷物の数は爆発的に増えました。

それなのに、荷物をさばく人もドライバーも減り、とても儲けにくい環境になりました。

しかも運送業は許認可の事業で、そもそも立て直しが効きにくいと話します。

当時50代前半だったたちばなでさえ、職場では「もう中堅」。

70歳を超えた人がトラックに荷物を手で積み込み、20代のドライバーはほとんどいなかったそうです。

この先、運送業界は基本的に中手(中規模の会社)と大手しか残らない、というのがたちばなの見方です。

谷本によれば、元請けや下請けのことを考えてやめられず、赤字を垂れ流しながら続けている会社も結構あるそうです。

運賃は上がらず経費だけが上がっていく

谷本からは、相談の現場でよく聞く話も出ました。

さまざまなコストは上がるのに、元請けからの料金は上がりません。

その結果、運転資金が回らず、自己資金を吐き出したり、よそから借りて下請けへの支払いに回したりしている社長が少なくありません。

現場でドライバーの姿を見てきたたちばなは、ネットで「送料無料」の文字を見るだけで胸が締め付けられると打ち明けます。

それでも、送料無料はなくならないし、買う側の暮らしも苦しくなりつつある。

力のない会社を買い上げるか子会社にでもしないかぎり、売上が大きく伸びるとは考えにくい、と指摘します。

売上が伸びたとしても、それに見合うほど利益率がよくなる見込みも薄い。

一方で、ドライバーや事務員の待遇は改善しなければならず、経費だけが上がっていきます。

だからこそ、たちばなは「今資金が残っているうちに早く次の手を打つ」ことを勧めます。

運送会社の続ける・やめる・売る・継がせるという4つの選択肢

続ける・やめる・売る・継がせるには取捨選択がいる

次の手といっても、選べる道は大きく分けて4つです。

  • 続ける
  • やめる
  • 売る
  • 継がせる

たちばなは個別面談で、この4つをもとに提案します。

ところが、どれを出しても不満そうな顔をされるのが実態です。

あれもイヤ、これもイヤ。

「お山の大将でいたい」という社長の心根が透けて見えるのは、たちばなにとって日常的なことだそうです。

ひとつの問題を解決するには、別の問題を受け入れなければならない。

こうした取捨選択の考え方が、運送会社に限らず欠かせないと見ています。

運送事業と仕事を残す選択を考えるための譲渡書類、車の鍵、現場の道具

続けるなら事業を売って現場責任者として生きる

では、運送事業を続けるとしたら、どんな出口があるのでしょうか。

たちばなの答えは、事業の売却、つまりM&Aです。

「その売却先のところで現場責任者として生きていくっていうことがね、これ残念ながら一番現実的だよね」

社長の座は手放しても、事業と仕事は残す。

たとえば「山田運輸」という会社があったとします。

山田運輸を「山本運輸」に売り、山本運輸の中の「山田事業部」として仕事を続ける形です。

これは「軒先商売のようなやり方」で、大手の傭車(ようしゃ)、つまり下請けとして荷物を運ぶ会社になる道も同じ考え方です。

たちばなは運送会社にいたころ、傭車さんの対応が悪いという話をあまり聞かず、元請けとそれほど変わらないと感じていました。

だからこそ、悩みを抱えた中手や小さな運送会社の社長から相談を受けると、よくこう声をかけます。

「あなたが傭車さんになられたらどうですか」

仕事と手数料をもらう形のほうが合理的で、抱える人が減り、気持ちの負担も軽くなるからです。

「従業員の雇用を守らなければいけない」という相談もよく受けます。

ですが、何年も昇給がなく、賞与もはっきりしないまま雇用を続けるのは、ドライバーにとっても不遇ではないか、と問いかけます。

大手の傭車として頑張り、そのなかでできる範囲で雇用を守るほうが合理的だといいます。

運送会社で事業の売却が基本になるのは、資産が多いからでもあります。

敷地や設備、フォークリフト、場所によっては給油所、2トンから10トンのトラックやトレーラーまで、どれも資産。

たちばなは「返済をむやみにやめてしまうと、それを差し押さえるっていうことが出てくる」と注意を促します。

規模の大きな会社ほど、法律家の手を借りて書面に落とし込み、適正に事業を売ることが大切だといいます。

事業はきれいに片づけるか、続けられる環境をつくる。

そのうえで、代表者が個人で保証している負債について、破産せずに済む道をアドバイスするのが、たちばなの基本のスタンスです。

運送会社の相談でも、これまで一番多かったのがこの形です。

借りたお金や身銭で払う資金繰りは誰も幸せにしない

谷本は、下請けへの支払いのためによそから資金を調達し、税金を払うためにまた調達する社長も多いと話を戻しました。

たちばなは、これを「非常にナンセンス」だと切り捨てます。

借りる側も貸す側も、その恩恵を受ける側も不幸になる、というのです。

やってはいけないことだと、多くの社長は分かっているはずです。

それでも、やってしまう。

人間は本能的に変化を嫌う生き物で、今のやり方を変えるのが怖いからです。

ですが、資金繰りが苦しい非常時こそ、変わる努力が欠かせません。

谷本は、たちばなが日ごろから口にしている「お金の優先順位」にも話を向けました。

社長が自腹を切って給料や下請けへの支払いを回せば、そのしわ寄せを受けるのは家族や身内ではないか、という問いかけです。

たちばなは、下請けに払うぶん自社の正社員も損をすると応じ、こう続けます。

お金が足りないときは、会社よりずっと資金のある金融機関への返済を後回しにする。

その浮いたお金で、お客さんに高く売ろうとしない、取引先に赤伝票を切らせない、従業員を安く使おうとしない、家族のおかずを一品増やしてやる。

資金力のある金融機関には、借りるときに結んだ金銭消費貸借契約のとおりに「一定の泣きを見てもらう」。

それがどう考えても正義だと語ります。

なお、先ほどの差し押さえの話のとおり、むやみに返済をやめていいという意味ではありません。

借入金の返済より先に、家族や従業員、お客さん、取引先を守る。

それが、たちばなの言う「お金の優先順位」です。

社長が身銭を切ってすり減っていくのは「決して美談ではない」という言葉も出ました。

たちばなは、法人と個人は別人格だと強調します。

法人の資金繰りがきついからといって、個人のお金を注ぎ込むのは、本来あってはいけないこと。

法人の問題は法人で、個人の問題は個人で片づけるべきだと話しています。

社長個人の連帯保証が残る日本の金融を「いびつ」と言い表すのも、そのためです。

人生の立て直しにもお金がかかる

どの道を選ぶにしても大切なのが、お金があるうちに動くことです。

たちばなのもとには、手元のお金が底をついてから相談に来る人もいます。

初回の面談は無料でも、続けてアドバイスを受けるなら費用がかかる。

そう伝えると、追い込まれた人ほど「そんなお金用意できません」と言ってしまうそうです。

だからたちばなは、「お金がなくなってから来るよりも、お金があるうちにおいで」と伝えています。

たちばな自身も、自分ひとりではやりきれなかったからこそ、助けてくれる人に払えるだけの原資は残しておこうと考えた、と振り返ります。

払う相手がたちばなかどうかは二の次。

それでも、人生を立て直すにはお金がかかります。

「コストを持たないで、人生の立て直しだ、破産回避だって言うんだったら、その事業をやめて就職しなさい」とまで言い切ります。

やめるなら、お金のかからないやめ方はアドバイスできる、とも話しています。

最後に谷本は、ジリ貧の社長へのアドバイスを求めました。

答えは、少しきつい言い方だと断りつつの「下手な考え休むに似たり」。

そもそもの知識が足りないまま試行錯誤を重ね、浅知恵で進めるのは危ない、というわけです。

きちんと知識を持つか、知見を持った人を頼るほうが、結局は合理的で、立て直しも早くなるといいます。

たちばなは、事業を続けることありきではなく、経済的な合理性を念頭にアドバイスをしています。

手元にお金が残っているうちに動けば、選べる道はそれだけ広がる。

その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。

運送会社を続けるか、売るか、やめるかで迷っている社長のご相談も受け付けています。

借りたお金で下請けや税金を払う資金繰りが続いているなら、まずは一度ご相談くださいね。


運送業のM&Aと事業・仕事を残す道について伝えるたちばなはじめ

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