2026年10月、滋賀県長浜市で結婚式場や仕出しを手がけてきた老舗が、関係会社とともに事業を停止したと報じられました。
2社とも、自己破産を申請する準備に入っています。
婚礼や宴会の市場の変化にコロナ禍が重なって売上が落ち込み、事業を絞り込んでも立て直せなかったといいます。
コロナ融資の返済が本格化したことも、重荷になりました。
「コロナ禍で落ちた売上が、いまも戻らない。それでも、借りたお金の返済は毎月やってくる」
そんな状態のまま、資金繰りを続けている社長は少なくありません。
その返済を続けた先に、会社が立て直る見込みはあるのでしょうか。
長浜の老舗が事業を止め自己破産の準備へ
報道によると、ここまでの経緯は次のとおりです。
滋賀県長浜市の老舗は、1971年に仕出しで創業し、1986年に法人となった。結婚式や披露宴、宴会に使える会場を運営し、割烹・仕出しの店は地元の企業や団体の会合などにも利用されてきた。
婚礼や宴会の市場を取り巻く環境の変化に加え、コロナ禍の営業停止などが響き、2021年6月期の売上は大きく落ち込んで、大幅な赤字となった。
その後も赤字が続き、2023年12月に婚礼事業を譲渡。事業を絞り込んだものの、業況は回復しなかった。
コロナ融資の返済の本格化に、人件費や物価の高騰も重なり、9月27日までに関係会社とともに事業を停止。自己破産を申請する準備に入った。
— 2026年10月の帝国データバンク・東京商工リサーチの発表を伝えた報道より要点を整理(婚礼事業の譲渡は帝国データバンク、コロナ融資の返済の本格化は東京商工リサーチによる)
報道から分かるのは、ここまでです。
結婚式場はコロナ禍の前から減り続けている
まずは、結婚式場の業界全体の数字です。
東京商工リサーチは、2026年6月に公表した結婚式場の業績調査で、次のように伝えています。
少子化に加え、結婚する人が減り、派手な結婚式からカジュアルなパーティーへ。コロナ禍を経て、結婚式のトレンドも変化しつつある。
2025年の「結婚式場業」の倒産は5件(前年比16.6%減)、休廃業・解散は13件(前年同数)で、合計18件(前年19件)だった。新設法人数は14件(同10件)で、2年ぶりに増加したが、2019年から7年連続で休廃業解散・倒産の合計が新設法人数を上回った。
— 東京商工リサーチ「2025年『結婚式場業』業績動向調査」(2026年6月)より引用
厚生労働省の統計では、2025年の婚姻件数は約49万組でした。
ここ2年はわずかに増えたものの、ピークだった1972年の半分以下です。
結婚式や宴会は、会場と厨房をかまえ、料理人やスタッフをそろえておかなければ受けられない商売です。
1件ごとの売上は大きくても、件数が減ったからといって、会場の維持費や人件費をすぐに減らすことはできません。
そして結婚式の形の変化は、コロナ禍が明けても、元に戻るとはかぎらない。
今回の報道で婚礼と並んで挙げられていた宴会の市場も、事情は同じでしょう。
とはいえ、コロナ禍で落ちた売上が戻らないまま、借入の返済に追われているのは、婚礼や宴会の業界だけではありません。
私たちのもとにも、コロナ融資の返済が苦しいという相談が、いま数多く寄せられています。
ここからは、売上が戻らないまま返済を続けている、あなたの会社の話です。

コロナ融資は売上が戻るまでのつなぎのはずだった
コロナ禍で売上が止まったとき、多くの会社がコロナ融資で急場をしのぎました。
借りたお金は本来、売上が戻るまでの時間をつなぐためのもの。
ところが、売上が戻らないまま返済の時期を迎えると、つなぎのはずの借入が、会社のお金を毎月削っていきます。
たちばなはじめはメルマガで、借りたお金は返すのが当たり前という考えにとらわれすぎると、もっと大切な相手を後回しにしてしまう、と指摘しています。
そうなった時点で、会社の目的そのものが返済に変わってしまう、というのです。
会社を始めたとき、返済のために会社をつくった社長はいないはずです。
家族の暮らしを支える、従業員に働く場を用意する、地元のお客さんの大事な席を預かる。
借入は本来、そうした目的を果たすための手段にすぎません。
別の回では、こうも書いています。
「従業員に賃下げや遅配してでも優先して返済実行する借金などこの世には存在しません。」
「家族に不遇な生活を強いてまで優先して返済実行する借金などこの世には存在しません。」
家族や従業員、お客さん、協力会社への支払いを守るのが先で、銀行への返済は一番最後というのが、たちばなはじめの考え方です。
返済を続けながら立て直せるかは数字で見極める
では、返済を続けながら会社を立て直せるかどうかは、どう見極めればいいのでしょうか。
たちばなはじめは、返済を先に延ばして時間を稼いでも、その先で業績を大きく伸ばせる見通しまで立つ中小企業は、ほとんどないとも書いています。
だからこそ、売上が戻る見込みは、願いではなく数字で確かめる必要があります。
あなたの会社の数字で、次の3つを確かめてみてください。
- コロナ前の同じ時期と比べて、ここ数か月の件数や客数がどこまで戻っているか(結婚式なら成約の数、宴会なら予約の数)
- すでに決まっている予約や受注だけで、この先数か月(季節の波が大きい商売なら次の繁忙期まで)の支払いと借入の返済をまかなえるか
- 足りない分の出どころが、新しい借入や社長・家族のお金、預金の取り崩しになっていないか
ただし2では、「そのうち戻るはず」という見込みは数字に入れません。
予約や受注が先まで入らない商売なら、ここ数か月と同じ売上が続くとして計算します。
1と2で、戻りつつある売上で支払いと返済をまかなえると数字で確かめられるなら、借りたお金はまだ、売上が戻るまでのつなぎとして働いています。
反対に3に当てはまるなら、借りたお金はもう、売上が戻るまでのつなぎにはなっていません。
返済を続けるために、借入を重ねたり、会社と家族のお金を削ったりしている状態です。

戻らない売上を待ち続けない
数字で見込みが立たないと分かっても、すぐには受け入れられないものです。
追い込まれるほど、目の前の返済しか見えなくなります。
会社の目的が返済に変わってしまった社長に、たちばなはじめが伝えてきたのが、次の言葉です。
「それなら少しでも傷の浅いウチに“次の手”を打たれては?」
傷が浅いうちとは、家族の暮らしや従業員の給料、お客さんへの約束に回せるお金が、まだ手元に残っているうちのことです。
それでも決めきれず、さらにお金が減ってから、あらためて相談に来られる社長も少なくありません。
何を選ぶかは、会社や家族の事情しだい。
決めるのは社長自身ですが、その手前の数字の見極めまで、一人で抱える必要はありません。
もちろん、すでに手元のお金が少なくなっている会社でも、倒産や破産をせずに解決できる可能性を最後まで探ります。
据置期間が明けたあとの返済額の確かめ方や、売上が戻らない会社の立て直し方については、次の記事でもくわしく取り上げています。
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