翻訳会社の利益が3年で7割減…AIで売上が減った会社の資金繰り対策を解説

2026年9月、東京商工リサーチから翻訳業の業績についての調査が公表されました。

翻訳会社100社の利益が、3年前と比べて7割も減っているとのこと。

原因として挙げられているのが、AI翻訳との競合です。

「うちは翻訳会社じゃないから関係ない」と思った社長もいるでしょう。

ですが、AIで代わりがきく仕事なら、翻訳に限らず同じことが起こりえます。

デザイン、原稿の作成、文字起こし、プログラムの作成など、思い当たる仕事は多いはずです。

では、AIとの競合で売上が減ったとき、会社のお金をどう守ればいいのでしょうか。

目次

翻訳業100社の利益が3年で7割減

まずは、公表された数字を確認してみます。

5期連続で業績を比較できる翻訳業100社の2025年度の売上高は合計392億5,700万円、最終利益は9億200万円だった。ピークの2022年度(売上高434億7,800万円、利益30億8,200万円)と比べると、売上高は9.7%減、利益は70.7%減。2023年度から3期連続の減収減益となっている。休廃業・解散は2024年が53件、2025年も50件と高い水準が続き、2026年1-8月の倒産は3件(前年同期は1件)が判明している。

— 東京商工リサーチの調査(2026年9月21日公表)の要点より

注目してほしいのは、売上と利益の減り方の差です。

売上の減少は1割ほどにとどまっています。

それなのに、利益は7割減。

調査では、機械翻訳が急速に進化して誰でも気軽に翻訳できるようになり、価格競争が激しくなったと説明されています。

今年倒産した首都圏の翻訳会社については、もともと業績が苦しかったところにAI翻訳の広がりが追い打ちをかけた、という関係者の見方も紹介されていました。

売上が少し減っただけで、利益の大半が消えてしまったのです。

ここに、AIと競合する会社が気をつけるべきポイントがあります。

AIで下がったのは仕事の単価

翻訳の料金は、原文の1文字あたり、1単語あたりの単価で決まることが多いと言われています。

そして、外部の翻訳者に仕事を依頼し、受注額との差額を自社の収入にしている翻訳会社も少なくありません。

そこに、無料でも使える機械翻訳が出てきました。

簡単な文書なら、発注する側が自分でAIに訳させて済ませてしまう。

依頼が来たとしても、AIが訳したものを人が手直しするだけの仕事になり、これまでの料金は通らなくなっていきます。

つまり、仕事がゼロになるわけではなく、1件あたりの単価が下がっていくわけです。

一方で、翻訳者への支払い、事務所の家賃、社員の給料は、単価が下がったからといって同じようには減りません。

だから、売上は1割減でも利益は7割減、ということが起こるんですね。

長年付き合いのある取引先から値下げを頼まれると、断りにくいものです。

「品質で勝負していれば、いずれ単価は戻る」と信じて耐えている社長も多いでしょう。

ですが、AIの性能はこれからも上がっていきます。

一度下がった単価が元の水準に戻ることは、期待しにくいのが実際のところです。

この前提で、会社のお金を考え直す必要があるのです。

下がった単価を受注量で埋めてはならない

単価が下がったとき、多くの社長がまず考えるのが「件数を増やして取り返そう」ということです。

値引きをしてでも受注を増やしたり、営業に人やお金をかけたり、新しい分野の仕事に手を広げたりします。

が、ちょっと待ってください。

たちばなはじめは、資金繰りに余裕がないときに売上を増やそうとする施策は打ってはいけない、と伝えています。

なぜなら、増えた売上が入ってくるより先に、お金が出ていくからです。

翻訳の仕事で考えてみましょう。

受注を増やせば、翻訳者への支払いや社員の残業代が先に発生します。

入金があるのは、納品して検収が終わった翌月や翌々月です。

しかも単価を下げて取った仕事ですから、手元に残る金額はわずかしかありません。

忙しくなったのに、口座の残高は減っていく。

これでは、自分で自分の首を絞めているのと同じです。

外注や人手で仕事をこなす会社なら、どの業種でも同じことが言えます。

足りない分を借入で埋めれば、今度は返済が増えます。

単価が戻らないまま返済だけが増えていけば、どんどん資金が流出し、どうしようもなくなっていくんですね。

返済額は売上が多かった頃のままになっていないか?

もう一つ、確かめてほしいことがあります。

いま毎月払っている返済やリース料は、いつの売上をもとに決めたものでしょうか。

翻訳業の売上と利益のピークは2022年度でした。

業績が良い時期は融資も受けやすく、人を増やしたり、新しいシステムを入れたりしやすいものです。

コロナ禍の時期に借りたお金の返済が、その後に始まった会社も多いでしょう。

問題は、売上が減り、利益が7割減っても、毎月の返済額は1円も減らないことです。

利益が3分の1以下になったのに、返済は利益が多かった頃のまま。

これでは、返せば返すほど会社のお金が減っていきます。

「借りたものは約束どおり返さなければ」

「銀行に相談したら、次から貸してもらえなくなる」

こう考えて、預金を取り崩し、社長個人のお金まで入れて返済を続けてしまう気持ちは、痛いほどわかります。

ですが、本業で稼ぐ力が落ちた会社が無理な返済を続ければ、どうなるか。

立て直しに使えるはずのお金まで失ってしまいます。

調査では、複雑な契約書や専門分野では、人による翻訳や最終チェックが欠かせないと指摘されています。

AIにできない仕事に絞り、会社を小さくして続ける道もあるでしょう。

ただ、その切り替えにも時間とお金がかかります。

その元手まで返済に回してしまっては、本末転倒です。

AIで売上が減ったときの資金繰り対策

AIとの競合で売上が減った会社がやることは、次の3つです。

  1. 今の単価と受注量のままで、手元の現金が何か月持つかを計算する
  2. 売上が多かった頃に決めた家賃・人件費・リース料・返済を書き出す
  3. 手元にお金があるうちに、金融機関との向き合い方を見直す

1つ目は、現金が何か月持つかの計算です。

ポイントは、「単価が戻ったら」「大口の案件が決まったら」という期待を入れないことです。

今の数字のままで、毎月いくら足りないのか、預金はあと何か月でなくなるのかを確かめてください。

2つ目は、支出の書き出しです。

事務所の広さ、人員、システムの利用料、リース、そして借入金の返済など、いろいろあるはずです。

どれも、売上が多かった頃の規模に合わせて決めたものではないでしょうか。

今の売上に合っていないものがどれなのかを、はっきりさせましょう。

そして3つ目が、金融機関との向き合い方の見直しです。

銀行に頼んで毎月の返済額を減らしてもらうリスケジュール(返済条件の変更)を考える社長もいるでしょう。

ですが、リスケジュールで軽くなるのは毎月の返済額だけです。

利息の支払いは続きますし、本業で残るお金が減ったままなら、手元のお金が減る速さがゆるやかになるにすぎません。

お金が減ってからでは、選べる道は少なくなっていく。

大事なのは順番です。

「いくらなら返せるか」ではなく、「事業と生活にいくら残すか」を先に決める。

そのうえで、手元にお金が残っているうちに、金融機関とどう向き合うかを決めてほしいのです。

単価が下がったら残すお金を先に決める

AIとの競合は、翻訳業だけの話ではありません。

仕事の単価が下がり、売上が少し減っただけで利益の大半が消えてしまう会社は、これからどの業種でも増えていくでしょう。

そのときに、下がった単価を受注量や借入で埋めようとしてはいけません。

先にやるべきは、今の売上で会社のお金が何か月持つかを確かめること。

そして、売上が多かった頃のままの支出を見直し、事業と生活に残すお金を決めることです。

返済は、そのあとで今の稼ぐ力に合わせて考えるものです。

早く手を打つほど、残せるお金は多くなり、立て直しも早くなります。

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「単価が下がって、返済が苦しくなってきた」と思い当たるなら、お金が残っているうちに、まずは一度ご相談くださいね。


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