YouTubeチャンネル「社長の資金繰り相談室」の第13回を公開しました。
今回のテーマは、最低賃金の引き上げで給料の支払いが苦しくなったとき、社長は何を優先するのかです。
厚生労働省が示した今年度の改定の目安では、最低賃金の全国加重平均は1,176円です。
10月から順次上がっていく人件費を前に、聞き手の事務局の谷本がたちばなはじめに聞いています。
お時間のないときは、このまま記事だけでもお読みいただけます。
人件費の上昇分を売上で取り返すのはむずかしい
人件費が上がったぶんは、売上を伸ばして取り返す。
多くの社長が、まずそう考えます。
動画の中でたちばなはじめは、この発想に待ったをかけています。
たとえば従業員が30人いて、1人あたり5,000円ずつ給料を上げたとします。
5,000円×30人で、15万円のコストアップです。
この15万円をまかなうには、いくらの売上が必要なのでしょうか。
小売業の出身であるたちばなの感覚では、10倍の150万円だといいます。
3万円の売上をつくっても、3万円がそのまま残るわけではありません。
仕入れや経費がかかるからです。
コストが15万円上がったということは、150万円の売上を増やすというミッションに変わる、という説明でした。
あなたの業種なら、10万円のコスト増を取り返すのにいくらの売上が要るでしょうか。
そう置き換えて考えてみてほしい、とも話しています。
しかも、売上だけをいたずらに伸ばすと、今度は10%の消費税が追いかけてきます。
だから、売上を増やして人件費の上昇分を回収するのは、中小の事業体では考えにくいというのがたちばなの見方です。

返済を見直して給料を守る「血の通った金の使い方」
売上で取り返せないなら、どうするのか。
15万円上がったのなら、どこかで15万円のコストを下げる。
そのほうが即効性があり、負担も少ないと語られています。
ただ、販売費や一般管理費を削れば、事業の運営に何らかの支障が出ます。
そこでたちばなが挙げたのが、金融機関への返済でした。
前提は、資金繰りが厳しく、金融機関の応援が得られない環境にあること。
その前提に立てば、協力的でない金融機関への返済を見直しても、事業を運営するうえでのデメリットはない、と話しています。
たとえとして出てきたのが、ラーメン屋と花屋です。
ラーメンを出さないラーメン屋は必要ないし、花を売らない花屋も必要ない。
それなら、お金を貸してくれない金融機関は必要なのか、という問いかけです。
この言い方に抵抗を持つ人がいることは、本人も認めています。
それでも、返済を見直して浮いたお金を人件費の上昇分に充てるのは「血の通った金の使い方」ではないか、と語っています。
資金的に弱い家族、従業員、お客さま、協力企業を守るために、協力的でない、資金力のある金融機関にはある程度我慢してもらう。
それは人として間違っていることではない、というのがたちばなの立場です。
金融機関に立てつくようなことはしたくないというのであれば、不動産は差し押さえてもらってかまわない、信用保証協会に代位弁済してもらってほしいと伝えるのも、何らおかしなことではないと触れられています。
怖いかどうかを言っている場合ではない、とも話していました。
事業主は泥をかぶる仕事であり、従業員に泥をかぶらせないために自分がかぶるのだといいます。
人件費の上昇分くらいは、返済を見直して浮いたお金から捻出できるというのがたちばなの考えです。
借入金を返すために給料を遅らせるのはナンセンス
相談に来られる社長の中には、給料が遅れていると普通に口にする方もいるそうです。
ここでたちばなが持ち出すのが、労働債権という言葉でした。
従業員が給料を受け取る権利は、労働債権と呼ばれます。
一方で、買掛金や金融機関からの借入れは一般債権にあたります。
そして法律上、労働債権は一般債権よりも優先される、とたちばなは説明しています。
だから、借入金を返すために従業員の給料を遅らせるのは「まったくナンセンス」。
動画の冒頭でも、この言葉が言い切られています。
人件費が払えず、社長がポケットマネーから給料を出しているケースについても、答えは同じでした。
ポケットマネーから払うくらいなら、すぐにでも返済のほうを後回しにして給料に充てる。
それが、日本のルールのもとで事業主が責任として持つべき見識だと語られています。
自分のお金を入れてまで続けるから事業が立ち行かなくなるのではないか、という指摘もありました。
この指摘を受け入れられない人は多いそうです。
お金に追い込まれているときは、冷静な判断がむずかしくなっているからです。
だからこそ、まず冷静になってほしいと、たちばなは呼びかけています。

継続は力そして見切りも力
では、返済を後回しにすれば、給料は十分に払えるようになるのでしょうか。
たちばなは、そうなりにくいケースもあると率直に認めています。
返済を見直しても、なお従業員への支払いが立ち行かない事業は、おそらく採算が合っていません。
お金を捨てているのと同じだから、早めに見切りをつけて次の人生へ進んだほうがいい、というのが動画のメッセージです。
背景として語られたのが、物の値段と人件費の関係でした。
たちばなが学生のころ、アルバイトの時給は600円ほど。
当時は300万円を超えれば高級車という感覚だったのに、いまは1,000万円以上の国産車もめずらしくありません。
車の値段がそれだけ上がっているのだから、人件費も上がるべくして上がっている、という見方です。
その中で自社の販売価格や収益性が上がっていないのなら、お客さまの支持が足りていないとも言える、と指摘しています。
だから、少しでもお金が残っているうちに、次の転換を図る作業は早くやったほうがいい。
たちばな自身、小売業からコンサルタントに転じようと決めたのは39歳のときでした。
それでも、かなりギリギリの感覚だったと話しています。
問題を先送りして50歳、60歳、70歳になると、人生のやり直しがききにくくなります。
「継続は力」という言葉には続きがある、とたちばなは言います。
継続は力、そして見切りも力。
続けるのが得なのか、やめるのが得なのか。
その損得勘定を避けて通らないでほしい、という話です。
従業員のためという言葉でごまかしていないか
損得勘定を脇に置くとき、よく使われる言葉があります。
地域貢献のため、従業員のため、家族のため、といった言葉です。
たちばなは、こうした言葉で現実をくるんでしまっていないか、と問いかけています。
税金をきちんと納められていない事業体が、地域貢献を掲げていいのか。
従業員のためと言うのなら、定期昇給ができ、賞与を払い、福利厚生を遅れなく整えられているのか。
そこまでやったうえで事業が立ち行かないのなら、従業員のためにどうにかしたいという発想はあっていい、と話しています。
けれども、給料は上がらず、賞与も2〜3万円ほどという条件のまま雇い続けることは、本当に従業員のためなのでしょうか。
それは社長自身のためではないのか。
個別面談では、こう指摘することもあるそうです。
話をよく聞いていくと、自分がただ変わりたくないだけではないか、と見える場面が多いといいます。
そう指摘されて反論できる方は、ほとんどいないとのことでした。
家族のために続けたいと言いながら、社長自身が十分な給料を取れていない。
それで家族は喜ぶのか、という問いも投げかけられています。
経済的合理性を意識することが商売の前提だ、というのがたちばなの考えです。
事業主は収支のバランスを日々追いかけなければならない、とも話しています。
その時間が取れないのなら、現場の第一線の仕事を誰かに任せてでも数字を追うべきだ、という考えです。
変わる勇気をくれる3つの言葉
人は本能的に変化を嫌い、現状を維持したがるものだと、たちばなも認めています。
ただ、それは平常時の発想です。
非常時には変わる努力をしなければならない、と話は続きます。
そのうえで視聴者に贈られたのが、変わることの大切さを説く3つの言葉でした。
- アインシュタインの言葉として「同じことを続けて違う結果を望むことは狂気である」
- ダーウィンの言葉として「強いものも賢いものも生き残らない。変化できるものだけが生き残る」
- ネルソン・マンデラの言葉として「新しいことを始めようとするとき、いつもそれは不可能に感じる」
3つ目は、変わるときの抵抗を乗り越えて新しい道へ進む背中を押す言葉だと紹介されています。
たちばな自身も、小売業からいまの仕事へと一度変わった身です。
これからもさらに変わる努力をしていく、と語っていました。
人件費が上がったぶんを、売上だけで取り返そうとしない。
社長のポケットマネーで埋めるのでもない。
資金繰りが厳しく、金融機関の応援も得られないのなら、まず見直すのはその金融機関への返済であって、従業員の給料ではありません。
それでも払えないのなら、お金が残っているうちに次の道を考える。
動画でたちばなが伝えているのは、この順番です。
時には厳しいアドバイスになるかもしれないけれど、経済的合理性を念頭にお伝えする、とも話しています。
その他、資金繰り改善や事業再生に関する情報はチャンネル「社長の資金繰り相談室」でご覧いただけます。
人件費の上昇で給料の支払いや資金繰りが苦しくなっている方のご相談も受け付けています。
お金が残っているうちに、まずは一度ご相談くださいね。
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