2026年9月、相続税の課税割合が初めて10%を超えたと報じられました。
国税庁が公表した令和6年分の申告事績をもとにした記事で、亡くなった方のうち10人に1人以上が相続税の対象になった、という内容です。
「うちも相続税がかかるのか」と気になった社長は多いでしょう。
ですが、ちょっと待ってください。
会社を経営している社長の相続で、家族を本当に苦しめるのは税金ではありません。
会社の借入と、社長が引き受けている連帯保証です。
では、社長に万一のことがあったとき、家族には何が引き継がれるのか。
順番にお伝えしていきます。
相続税の対象が10人に1人を超えた
まず、報じられた数字を確認しておきます。
令和6年分の相続税の申告事績によると、相続税の課税対象となった被相続人は16万6,730人。死亡者数160万5,378人に対する課税割合は10.4%で、前年の9.9%から上昇し、初めて10%を超えた。東京国税局管内では課税割合が16.2%と、およそ6人に1人が対象になっている。
— AI検索で「令和6年分 相続税の申告事績 課税割合」について調べた際の解説より引用
基礎控除が引き下げられた2015年以降、相続税は一部の資産家だけの話ではなくなりました。
地価や株価の上昇で、自宅や自社株の評価額が取得したころより大きく上がっているケースも少なくありません。
相続税が身近になったこと自体は事実です。
ですから、税理士に相談して納税資金や分け方を考えておくのは大切なことです。
ただ、社長の相続には、税金の前に片づけておかなければならない問題があります。

社長の家族が引き継ぐのは財産だけではない
相続で家族に渡るのは、自宅や預金、自社株といった財産だけではありません。
会社の借入に社長が差し入れている連帯保証も、そのまま家族に引き継がれます。
財産を相続すれば、負債も相続する。
負債を引き継ぎたくなければ、相続放棄という選択になり、財産も受け取れない。
たちばなはじめが繰り返し伝えているのは、この単純な事実です。
会社の借入が数千万円、数億円と残っている社長の家では、預金や自宅の評価額よりも、保証している金額のほうが大きいことは珍しくありません。
そうなると家族は、財産と一緒に負債を引き継ぐか、負債から離れる代わりに財産も手放すか、どちらかを選ぶことになります。
どちらを選ぶにしても、社長本人が何も決めていなければ、家族が短い期間で判断しなければなりません。
相続税の心配をしていた家族が、ふたを開けてみたら負債のほうが大きかった、というケースは実際によくあるんです。
相続税より先に起きること
社長が亡くなった直後、家族のもとには銀行や取引先から次々に連絡が入ります。
借入の返済はどうするのか。
保証人としての責任はどうなるのか。
担保に入っている自宅はどうなるのか。
何も知らない家族には、答えようがありません。
相続税の申告期限はまだ先でも、銀行の返済日は翌月にやってきます。
会社の資金繰りが回らなくなれば、従業員の給与も取引先への支払いも止まってしまいます。
その間にも、社長の頭の中にしかなかった情報を、家族が探し回ることになります。
これが、社長の相続で最初に起きる現実です。
税金の計算をする前に、家族はこの状況に放り込まれるということなんですね。
担保に入った不動産は家族のものにならない
もう一つ、相続税の話と切り離せないのが自宅や事業用の不動産です。
評価額が上がった不動産は、相続税の対象を押し上げる一方で、家族の生活を支える財産にはなりにくい面があります。
会社の借入の担保に入っていれば、名義が家族に移っても、銀行の担保であることは変わりません。
返済が続けられなければ、手元に残るとは限らないのです。
しかも、不動産は分けにくく、相続で争いになる家はたいてい家持ち・土地持ちです。
不動産は割れないけれど、現金は割れる。
だからこそ、不動産にこだわるより、お金を残す形を先に考えておく必要があるのです。

社長が元気なうちにやっておくこと
では、何から手をつければいいのか。
やることは次の3つです。
- 会社の借入と連帯保証、担保に入っている不動産をすべて書き出し、全体像を家族に共有する
- 家族に財産を残したいなら、負債をどう決着させるのか、生前のうちに方針を決める
- 家族に負債を負わせたくないなら、家族が負債から離れても困らない形を作っておく
1つ目は、現状の把握です。
どの銀行からいくら借りていて、誰が保証人で、どの不動産が担保に入っているのかを、一度すべて確認します。
社長の頭の中にしかない情報を紙に書き出して家族と共有しておくだけで、万一のときの家族の負担は劇的に軽くなります。
2つ目は、負債の決着。
会社の借入が残ったまま相続を迎えれば、家族は財産と負債をセットで引き継ぐことになります。
業績に余裕があるうちに返済を進めて保証の対象になる金額を減らし、保証人や担保の見直しを銀行に相談しておくことです。
これは、後継者に負債を引き継がせない事業承継とまったく同じ考え方。
そして3つ目は、家族が負債から離れても困らない形です。
個人の財産を無理に増やすより、家族の生活に必要なお金が別の形で残るように組み立てておくことが大切です。
受取人を家族にした生命保険や、会社の資産と社長個人の資産の切り分けなど、平常時にしかできない設計がここに入ります。
どれも、資金繰りが苦しくなってからでは選べる幅が狭くなってしまいます。
だからこそ、業績にも時間にも余裕があるうちに手をつけておきましょう。
相続の準備は負債の決着から
相続税の対象が10人に1人を超えた今、税金の備えを考えるのは自然なことです。
ですが、社長の相続で家族を本当に苦しめるのは、税金ではなく会社の借入と連帯保証です。
財産を残したいなら、負債の決着を先につける。
負債を負わせたくないなら、家族が困らない形を先に作る。
順番を間違えなければ、家族に残せるものは断然多くなります。
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