医療機関の倒産が過去最多ペース…開業医の資金繰りが苦しい理由と立て直し方

診療所の資金繰り、支出と返済を見直す。たちばなはじめの解説

「今月も、診療報酬の入金より先に返済日が来てしまう」

そんな月末を、あなたも何度か経験しているかもしれません。

2026年9月8日、帝国データバンクが8月の全国企業倒産を公表しました。

件数は827件で、3か月連続で前年を上回り、8月としては14年ぶりに800件を超えたとのことです。

その中で目を引くのが、医療機関の倒産です。

前年同月の7件から、19件へ。

実に、前年の2.7倍です。

上半期の時点で、診療所の倒産はすでに過去最多でした。

そして8月に、さらに勢いが増したわけです。

なぜ、街のクリニックや歯科医院がここまで苦しくなっているのか。

数字の裏側には、一般の会社にはない「値上げできない」という事情と、開業時に組んだ借入の重さがあります。

目次

医療機関の倒産が8月は前年の2.7倍に

まずは、公表された数字からです。

業種を細かくみると、『サービス業』では、「医療」(前年同月7件→19件)の増加が目立ったほか、学習塾や経営コンサルタントが増加した「専門サービス」(同40件→47件)も前年を上回った。

— 2026年9月8日、帝国データバンクの全国企業倒産集計(2026年8月報)より

8月だけの話ではありません。

帝国データバンクは7月にも、上半期の医療機関の倒産についてまとめています。

2026年上半期の医療機関の倒産は39件となり、過去最多のペースで推移した。物価高や人件費の高騰による収益力悪化や経営者の高齢化・後継者難を背景として、事業継続を断念する事業者が相次いだ。年間では初めて80件に達する可能性がある。

内訳をみると、「病院」4件(負債総額35億5500万円)、「診療所」19件(同79億800万円)、「歯科医院」16件(同9億1700万円)。

— 帝国データバンク「医療機関の倒産動向調査(2026年上半期)」より

東京商工リサーチの集計でも、上半期のクリニックの倒産は過去20年間で最多を更新したと発表されています。

その後、2026年10月に帝国データバンクが発表した調査では、1-9月の歯科医院の倒産が23件、休廃業・解散が120件で、あわせて143件と、この期間として過去最多になりました。

背景には、競争の激化による利益の圧迫や人件費・歯科材料の値上がりに加え、廃業では院長の高齢化や後継者不足もあるとしています。

病院のような大きな組織ではなく、身近な診療所や歯科医院が倒れています。

ここが、今回の数字のいちばん重いところなんです。

小さな診療所の診察室と医療機器のイメージ

診療報酬は値上げできない

一般の会社なら、原材料や人件費が上がれば、値上げで取り返す道があります。

簡単ではないにせよ、価格は自分で決められる。

ところが、医療機関はそうはいきません。

保険診療の売上は国が決める公定価格で、院長がいくら頑張っても1点の単価は変えられないからです。

自費診療を増やす道はあっても、売上の柱である保険診療の単価は動かせません。

帝国データバンクの調査も、改定がコスト上昇に追いついていないと書いています。

医療機関では、人口減少のなかで、医療機器や消耗品の価格高騰や光熱費、人件費などのコスト上昇に対し、診療報酬の改定が追い付かず、収支が悪化する環境が続いてきた。

— 帝国データバンク「医療機関の倒産動向調査(2026年上半期)」より

消耗品や光熱費は、毎月のように上がっていく。

看護師や歯科衛生士を採用するには、以前より高い給与を示さなければ人が集まりません。

それでも売上の単価は、2年に一度の改定を待つしかないのです。

もう一つ、医療機関ならではの事情があります。

窓口で受け取る一部負担金を除けば、診療報酬は患者さんを診た月から数えて入金まで2か月ほどかかると言われています。

患者さんを診た月と、そのお金が口座に入る月がずれるのです。

ですから、頑張って患者さんを増やした月ほど、先に出ていく人件費や材料費で手元の現金が薄くなるんですね。

売上は伸びているのに、通帳の残高は減っていきます。

この感覚に心当たりがある院長は、少なくないでしょう。

開業時の借入が院長を追い詰める

そこに重なるのが、開業時の借入です。

歯科医院を例にとると、内装、ユニット、レントゲン。

開業資金は一般に4,000万〜8,000万円、設備や規模によっては1億円を超えるとも言われています。

内科や外科の診療所でも、医療機器や内装の内容しだいで同じ規模の借入になります。

その大半を借入で組んだ先生は、珍しくありません。

そして、その返済額は毎月ほぼ一定です。

患者さんが減っても、改定で単価が下がっても、返済日に引き落とされる金額は変わらない。

据置期間が明けて元金の返済が始まったところにコストの上昇が重なった医院は、そこで一気に苦しくなります。

さらに、医療機器には耐用年数があります。

開業から10年前後で、最初の借入が終わらないうちに、機器の更新でまた借りることになります。

借入が終わる前に、次の借入が始まる。

この繰り返しが、医療機関の資金繰りを重くしている実態です。

そして、私たちのもとへ寄せられる歯科医院や診療所の院長からのご相談で目立つのが、自宅と医院が一体になっているケースです。

自宅兼医院の土地建物を担保に入れて開業しているため、経営が傾くと、仕事の場だけでなく生活の場まで一緒に揺らいでしまいます。

開業までに積み上げてきたものが大きいぶん、赤字が続いても「まだ続けられる」と踏ん張ってしまう先生は少なくありません。

その踏ん張りが、結果的に傷を深くしてしまう。

そういうご相談が、実際に増えています。

医療機器と支払書類で診療所の資金繰りを見直すイメージ

診療報酬より先に見直すのは支出と返済

では、どうすればいいのか。

診療報酬の単価は、自分では動かせません。

動かせるのは、出ていくお金の側です。

まず確かめてほしいのが、いまの現金が何か月持つかです。

毎月の返済、人件費、家賃、材料費を足して、口座の残高をその金額で割ってみてください。

この数字が3か月を切っているなら、もう平常時ではありません。

次に、支払いの順番を決めておくことです。

たちばなはじめのお金の優先順位は「家族 → 従業員 → お客 → 協力企業 → 銀行」です。

医院に置き換えれば、家族の生活、スタッフの給与、患者さんの診療を止めないこと、材料の仕入先や技工所への支払いが先で、銀行への返済は一番最後。

「銀行を後回しにしたら医院が続けられなくなる」と思われるかもしれません。

が、逆です。

スタッフが辞め、材料が入らなくなれば、診療そのものが止まり、返済の原資すら生まれなくなります。

返済で手元の現金が減り続けているなら、金融機関との交渉方法を見直す。

これは、銀行が用意した返済猶予の枠組みにそのまま入ることとは違います。

猶予の期間が明ければ、元の返済額に戻るだけだからです。

医院の実態を銀行に伝えたうえで、返済の組み方そのものを組み直してもらうという意味です。

そして、まだ経営に余裕があるうちにやっておいてほしいのが、自宅と医院の担保の確認です。

非常時になってから不動産を守ろうとしても、選べる道はわずかしかありません。

業績が落ち込む前に、自宅と医院の名義や担保の関係を把握して、必要なら早めに手を打っておきましょう。

それだけで、いざというときに家族の生活を守れる幅が大きく変わります。

閉院しかないと決める前に

医療機関の倒産が増えている背景には、値上げできない診療報酬と、減らない借入の返済があります。

この二つは、院長がひとりで頑張っても変えられません。

変えられるのは、現金の確かめ方と、支払いの順番と、金融機関との向き合い方です。

「もう閉院しかない」と言われている先生も、諦めるのはまだ早いです。

医院を続けるにしても、整理するにしても、返済の組み直しも含めて借入をどう終わらせるかを決めてからのほうが、残せるものは断然多い。

その考え方は、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています(公式LINEを友だち追加するだけで届きます)。

会社と社長にお金を残す基本的な考え方を、たちばなはじめが直接お伝えするセミナーも定期的に開催していますので、教科書の内容を概論として学びたい方はぜひお越しください。

資金繰りだけでなく、医院の借入や自宅の担保についてのご相談も受け付けています。

もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度、無料の個別相談へお越しくださいね。


診療所の資金繰り、支出と返済を見直す。たちばなはじめの解説

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