「受注が増えて忙しいのに、なぜか月末の支払いがいつも苦しい」
そんな感覚を持っている社長は、意外と多いのではないでしょうか。
2026年9月、大阪府高槻市の建築会社が事業を停止し、破産手続きの申請準備に入ったと報じられました。
この会社は、ほんの数年前まで売上が急拡大していた会社です。
完工高は、1年で3倍近くに伸びていました。
ところが、受注が増えた分だけ外注費が膨らみ、利益率が急激に下がって赤字に転落しました。
急場をしのぐために市中の金融業者から資金を借り、最後は取引先への支払いが滞って信用不安が広がりました。
売上が3倍近くになっても、会社は潰れる。
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。
カギは、受注が増えるほど現金が先に出ていくという、受注してから入金までが長い建設業で特に大きくなるお金の流れにあります。
順にお伝えします。
売上が3倍近くに伸びた建築会社が事業停止
まず、何が起きたのかを確認しておきます。
大阪府高槻市の建築工事業者が、8月31日までに事業を停止し、破産手続きの申請準備に入った。2013年7月に設立され、地元の一般戸建て住宅を中心に、企画や設計から施工、監理までを一貫して手がけていた。2023年6月期には完工高がおよそ7億5984万円と、前の期に比べて3倍近くにまで急拡大した。しかし受注の増加に伴って外注費の負担が膨らみ、利益率が急激に低下。営業段階から赤字に陥り、およそ3254万円の最終赤字を出して債務超過に転落した。建築資材費や人件費の高騰など建設業界全体のコスト高の影響から資金繰りは改善せず、2025年には市中の金融業者から資金を調達して急場をしのぐ状態になっていた。2026年に入り、取引先への支払いが滞る事態となって信用不安が高まり、今回の措置となった。負債総額は債権者およそ50人に対し、およそ3億7500万円。
— 2026年9月、東京商工リサーチの報道より
設立は2013年。
売上が3倍近くに伸びてから、わずか数年で事業を止めています。
報道のなかで注目してほしいのは、この一文です。
「受注の増加に伴って外注費の負担が膨らみ、利益率が急激に低下」
売上が減ったから苦しくなったのではありません。
売上が増えたから、苦しくなったのです。
ここに、建設業の資金繰りの怖さが詰まっています。

受注が増えるほど現金が先に出ていく
戸建住宅の工事は、受注してから完成まで数か月かかります。
その間、職人さんへの外注費や材料費は、工事の進み具合に合わせてどんどん出ていきます。
一方で、お客さまからの入金は、着工金・中間金・完成金と分けて入るのが普通です。
ですが、着工金や中間金だけでは、その間に出ていく外注費や材料費をまかないきれず、完成金が入るまでは先に出ていくお金のほうが大きくなるケースが少なくありません。
つまり、1件受注するたびに、会社は先にお金を立て替えている状態になります。
受注が2倍になれば、立て替えも2倍。
3倍になれば、立て替えも3倍になります。
売上が伸びれば伸びるほど、手元の現金は先に減っていくんですね。
たちばなはじめは、資金繰りに余裕がないときの増販、つまり売上を増やす施策を「禁じ手」だと言い切っています。
売上を伸ばそうとする行為には必ずコストがかかり、そのコストは売上が入ってくる前に発生するからです。
営業を強化すれば、人件費が先に出ます。
受注を増やせば、外注費が先に出ます。
資金に余裕がないのに、先に資金が流出する施策を打ってはいけない。
これが、たちばなはじめが繰り返し伝えていることです。
報道された建築会社も、受注が増えて外注費の負担が先に膨らむ流れの中にいました。
そこに利益率の低下が重なれば、手元の現金が追いつかなくなるのは時間の問題です。
売上が伸びても利益率が下がれば現金は残らない
もう一つ、見落としてはいけない数字があります。
利益率です。
受注を急いで増やすと、どうしても無理な条件の仕事が混じりやすくなります。
職人さんの手配が追いつかず、割高な外注先に頼まざるを得ない場面も出てきます。
資材の値上がりを工事価格に転嫁できないまま、契約した金額で工事を進める。
こうなると、売上は増えているのに、1件あたりに残る利益はどんどん薄くなっていきます。
報道された会社も、外注費の負担で利益率が急激に下がり、営業段階から赤字に陥っていました。
売上が3倍近くになっても、営業利益が出ていなければ、会社にお金は残りません。
大切なのは売上ではなく、営業利益。
これは、たちばなはじめが「売上至上主義」を批判し続けている理由でもあります。
売上が伸びていると、社長も周りも「順調だ」と感じてしまいます。
銀行の担当者も、売上が伸びている会社には前向きな顔を見せるでしょう。
ですが、、、
売上の増加と利益率の低下が同時に起きているなら、それは成長ではなく、資金流出が加速している状態なんです。
たちばなはじめ自身、かつて燃料油の卸・小売を中心に複数の事業を営んでいた時期がありました。
もともと会計は経理まかせ。
売上と利益さえ見えていれば事業は回ると思い込んでいました。
資金繰りが少しずつ苦しくなってきたことをきっかけに、自分で会計を学び始め、数字を直接把握するようになりました。
ですが、その努力は実らず、結果的には多額の負債を抱えて事業は破綻してしまいます。
だからこそ、たちばなはじめが繰り返し説いているのは「事業の根幹は事業ではなく会計にあり」という教えです。
売上の数字は、社長の目にいちばん入りやすい。
ですが、会社を守るのは売上ではなく、利益と、その先に残る手元の現金です。
急場しのぎの借入が終わりの始まり
資金繰りが苦しくなったとき、多くの社長がまず考えるのは「どこかから借りて埋める」ことです。
報道された会社も、2025年には市中の金融業者から資金を調達して急場をしのいでいました。
決算に赤字や債務超過が出れば、銀行からの追加の融資は難しくなります。
そうなると、金利の高い借入に手が伸びる。
その気持ちは、痛いほどわかります。
目の前の支払いを止めるわけにはいかないからです。
ですが、金利の高い借入で埋めれば、翌月からはその返済の分だけ、出ていく現金がさらに増えます。
返すお金を借りて返す。
たちばなはじめは、この状態を「負のサイクル」と呼んでいます。
資金調達と言えば聞こえはいいものの、返すためのお金を借りている時点で、すでに負のサイクルに入っているということなんですね。
そして、この会社が最後にたどり着いたのが、取引先への支払い遅延でした。
建設業では、取引先への支払いが一度滞ると、信用不安があっという間に広がります。
材料が入らなくなり、職人さんが現場に来なくなれば、工事は止まる。
工事が止まれば、完成後の入金も止まります。
そうやって、資金繰りはどうしようもなくなっていくのです。
だからこそ、たちばなはじめは「資金繰りは我慢してはいけない」と言い続けています。
症状が軽いうちに手を打てば、早い段階で改善し、痛手も小さくて済みます。
金利の高い借入で埋める前に、金融機関との交渉方法を見直す。
この順番を間違えなければ、選べる道は断然多くなります。

受注が増えて忙しいときこそ確かめておくこと
では、受注が増えて忙しいときに、社長は何を見ておけばいいのでしょうか。
確かめておきたいのは、次の3つです。
- 1件の工事で、入金までに先に出ていく現金はいくらか
- 受注が増える前と後で、1件あたりの粗利率はどう変わったか
- 手元の現金は、外注費や給与など毎月の支払いの何か月分あるか
1つ目は、立て替えの大きさです。
着工から入金までの間に、外注費と材料費がいくら先に出ていくのか。
これがわかれば、いま抱えている工事の件数で、手元の現金がどこまで減るのかが計算できます。
2つ目は、粗利率の変化です。
1件ごとの粗利率が下がれば、それが積み重なって会社全体の営業利益が消えていきます。
受注を増やした前後で、1件あたりの粗利率が下がっていないか。
下がっているなら、忙しさに見合ったお金は残っていません。
そして3つ目が、手元の現金の厚みです。
毎月の支払いの何か月分の現金があるかを見れば、あと何件まで立て替えられるのかが見えてきます。
この3つを数字で見ていれば、「売上は伸びているのに現金が減っている」という危険信号に、早い段階で気づくことができます。
気づいたら、受注を増やす前に、着工金や中間金の受け取り方、工事価格への転嫁、外注先との支払い条件を見直してください。
受注を絞る勇気も必要です。
売上が減ることを恐れて無理に受け続ければ、その先に待っているのは、報道された会社と同じ道です。
売上が伸びているときほど現金の流れを見る
売上が増えても、現金が先に出ていくなら、会社は苦しくなります。
売上が増えても、利益率が下がっているなら、お金は残りません。
そして、苦しくなってから金利の高い借入で埋めれば、資金流出はさらに加速します。
売上が伸びているときほど、現金の流れから目をそらしてはなりません。
とはいえ、すでに取引先への支払いが遅れ始めている社長も、諦める必要はありません。
追い詰められた状態からでも、倒産や破産をせずに解決できる可能性を最後まで探る。
それが、たちばなはじめが一貫して大切にしてきた姿勢です。
支払いが遅れ始めてからのご相談だけではなく、「売上は伸びているのに現金が残らない」という早い段階のご相談も受け付けています。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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