2026年9月5日、元なでしこジャパンの阪口夢穂さんが、運送会社の社長業について語ったインタビューが公開されました。
2011年の女子ワールドカップで世界一になったボランチが、いまは実家の運送会社(大阪・堺市)の代表取締役です。
その記事のなかに、こんな言葉が出てきます。
「連帯保証人は全部社長、つまり私が入っているんです」
「会社が潰れる時は、私も共倒れです」
読んで「うちも同じだ」と思った社長は多いでしょう。
会社の借入の連帯保証人は社長で、会社が倒れたら社長も一緒に倒れます。
多くの社長が、それを当たり前の宿命として受け入れています。
が、本当にそうでしょうか。
会社が潰れることと、社長と家族が共倒れになることは、別の話です。
分かれ目は、平常時に何をしていたかです。
まずは、阪口さんが語った社長業の中身から見ていきます。
「連帯保証人は全部私」運送会社社長のリアル
インタビューで阪口さんは、社長の仕事のなかでも銀行とのやり取りの重さを率直に語っています。
小さい会社なので、連帯保証人は全部社長、つまり私が入っているんです。会社が潰れる時は、私も共倒れです
— 2026年9月、web Sportivaのインタビュー記事より
運送会社の商売道具はトラックです。
阪口さんの会社が使うタンクローリーは、1台で3,000万円ほどするそうです。
車両を増やせば借入も増え、その借入には社長の個人保証が付きます。
燃料代や人件費は毎月出ていき、運賃の値上げは荷主との交渉次第。
運送業は、大きな設備投資を借入でまかないながら、日々の支払いを回していく商売なんです。
だからこそ、銀行との関係は「お金の貸し借りしかない」「これが、重い」という言葉になるのでしょう。
一方で、阪口さんは「従業員ファースト」とも語っています。
小さいお子さんのいる従業員もいるから、給料を滞りなく渡すことに力を注いでいる、と。
社長の覚悟として、立派な姿勢です。
ただ、「潰れたら共倒れ」という覚悟は、阪口さんに限った話ではありません。
同じように受け止めている社長は、本当に多いのです。
覚悟があることと、備えができていることは別物です。
共倒れにならない備えを平常時に進めているかどうかが、社長と家族のその後を大きく分けます。
会社が潰れたら社長も共倒れは本当か?
そもそも、会社と社長は法律上は別の人格です。
会社の借入は会社の負債であって、社長個人の負債ではありません。
それなのに共倒れになるのは、社長が会社の借入に個人保証をしているからです。
会社が返せなくなれば、銀行は保証人である社長個人に返済を求めてきます。
社長個人の預金や自宅まで、返済の原資として見られてしまう。
その先にあるのは、家族の生活です。
これが「共倒れ」の正体なんですね。
では、なぜ多くの社長が個人保証を差し入れているのでしょうか。
銀行に求められるまま、「断れば借りられない」「まわりもみんなそうだ」と疑わずに差し入れてきたからではないでしょうか。
実は、金融庁も「経営者保証に関するガイドライン」の活用を金融機関に促していて、社長の個人保証に頼らない融資は広がりつつあります。
会社と社長個人のお金がきちんと分かれていることなどが、その条件です。
つまり、社長の個人保証は「必ず付くもの」ではなくなってきています。
たちばなはじめ自身、かつて営んでいた会社の事業が破綻し、多額の負債を個人保証したまま返済が立ち行かなくなった経験があります。
それでも、金融機関との交渉方法を見直すことで、法的な手続きに頼ることなく、家族の生活を守って再起しました。
会社が倒れることと、社長と家族が共倒れになることは別の話。
その実体験があるからこそ、私たちはそう言い切れるのです。
共倒れを防ぐために平常時にやっておく3つのこと
では、具体的に何をしておけばいいのでしょうか。
業績に余裕があるうちにやっておきたいことは、次の3つです。
- 会社のお金と社長個人のお金を分ける
- 自分が何に保証しているかをすべて把握する
- 誰をどの順番で守るかを決めておく
1つ目は、会社のお金と社長個人のお金を分けることです。
会社の口座から社長の生活費を出す、社長のポケットマネーで会社の支払いを立て替える、という会社は少なくありません。
こうした混ざり方をしていると、銀行から見て会社の返済力も社長個人の資産も判断しづらく、個人保証に頼らない融資の相談にも乗ってもらいにくくなる。
実際、個人保証に頼らない融資の条件にも、この「分ける」ことが入っています。
会社と個人のお金がきちんと分かれている状態は、業績が好調なうちに作っておくのが現実的です。
2つ目は、自分が何に保証しているかをすべて把握することです。
銀行借入だけでなく、車両のリース、事務所や倉庫の賃貸借、取引先との基本契約などなど、思いのほか多いものです。
「連帯保証人は全部私」と阪口さんは言い切りました。
あなたは、その「全部」の中身を自分の言葉で言えますか?
把握できていない保証が、非常時にいちばん痛い請求になります。
そして3つ目は、誰をどの順番で守るかを決めておくことです。
たちばなはじめのお金の優先順位は、次の5つです。
- 家族
- 従業員
- お客
- 協力企業
- 銀行
家族・従業員・お客・協力企業を守るのが先で、銀行への返済は一番最後です。
阪口さんの「従業員ファースト」は、銀行より人を先に守るという点で、この考え方と重なります。
ところが、資金繰りが苦しくなった社長の多くは、逆の順番で動いてしまいます。
まず自分の給料を下げて家族を犠牲にし、次に従業員や取引先への支払いを削り、それでも銀行への返済は続ける、、、
これでは、会社と一緒に家族まで倒れてしまいます。
守る順番を平常時に決めておけば、いざというときに迷わず動けるのです。
苦しくなったときこそリスケの前に
それでも、資金繰りが苦しくなることはあります。
そのとき多くの社長が最初に考えるのが、銀行に返済を減らしてもらうリスケジュールです。
でも、ちょっと待ってください。
個人保証を外すための条件のひとつは、会社に返済する力があると見てもらえることです。
リスケに入った瞬間、その条件を満たさないと見られ、個人保証を外す道は事実上閉ざされてしまう。
つまり、個人保証を外すという選択肢は、そこでほぼ消えてしまうんです。
もうひとつ、見落とされがちな事実があります。
リスケで返済を軽くし、一定期間をやり過ごしたあとに通常の返済へ戻して、利益を出して存続している会社は、たちばなはじめの経験則ではほとんどありません。
月々の負担を軽くしても事業の中身が変わらなければ、リスケ期間が終わるころには次の延長を頼むしかなくなるからです。
信じられない方は、お付き合いのある銀行員や税理士に「リスケから通常の返済に戻って利益を出している会社はどのくらいありますか?」と聞いてみてください。
おそらく「ほとんどない」という答えが返ってくるはずです。
延長を重ねた先で会社が力尽きれば、保証人である社長の共倒れだけが残る。
銀行への返済を最後に回すといっても、銀行が用意したリスケの枠組みにそのまま入るのとは違います。
だからこそ、私たちは「リスケを考える前に一度ご相談を」とお伝えしています。
リスケの前であれば、銀行との交渉の主導権はまだ社長の側にあり、返済の組み方そのものを見直す余地が残っています。
とはいえ、すでにリスケに入っている方も、諦める必要はありません。
リスケ前より選べる手は少なくなるとはいえ、家族の生活を守りながら立て直す道は残っています。
ひとりで結論を出す前に、まずは一度ご相談ください。
共倒れは社長の宿命ではない
阪口さんの「連帯保証人は全部私」という言葉は、多くの社長の現実そのものです。
ただ、会社が潰れたら社長も共倒れ、という結末まで受け入れる必要はありません。
会社と個人のお金を分け、保証の中身を把握し、守る順番を決めておく。
そして苦しくなったら、リスケの前に相談することです。
これだけで、社長と家族のその後は大きく変わります。
会社と社長にお金を残す考え方の全体像は、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています。
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連帯保証を抱えたまま資金繰りをどう立て直すか、というご相談も受け付けています。
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