「据置期間が終わりますので、来月から元金の返済が始まります」
銀行からそんな案内を受け取って、あなたも内心ひやりとしているかもしれません。
2026年9月1日、東京商工リサーチが、8月の新型コロナ関連の経営破たんは109件で今年最少だったと公表しました。
7月は今年最多でしたから、ひと月で一転したことになります。
数字だけ見れば、コロナ融資の返済問題は落ち着いてきたように見えるかもしれません。
が、ちょっと待ってください。
コロナ借換保証を使った借入は、据置期間が明ける時期が2026年4月から9月に集中し、返済開始の最後のピークを迎えると言われています。
つまり、元金の返済が本格的に始まるのは、まさに今なんです。
破たんの件数が減ったことと、あなたの会社の返済が楽になることは、まったく別の話です。
コロナ破たんは8月109件で今年最少
まずは、公表された数字からです。
8月の「新型コロナ」関連の経営破たんは109件で、ことし最少だった。2020年2月の第1号の発生から累計は1万4,567件に達した。コロナ破たん率は0.405%で、全国の企業250社に1社が破たんした計算となる。円安の長期化に伴う物価高、人件費上昇などでコスト負担が増すなか、コロナ禍で抱えた過剰債務に苦しむ企業は多い。コロナ融資の返済に苦慮する企業の脱落を中心に、コロナ破たんは一進一退を続けながら当面、月間100件台で推移するとみられる。
— 2026年9月1日、東京商工リサーチの調査より
減ったとはいえ、月に109件。
1日に3社以上が倒れている計算です。
そして注目してほしいのは、最後の一文です。
「コロナ融資の返済に苦慮する企業の脱落を中心に」当面は月100件台が続く、という見方は変わっていません。
コロナ禍そのものは過去の話になりましたが、そのときに借りたお金の返済は、これからが本番ということなんですね。
据置期間が明けると毎月の返済額はこう変わる
据置期間とは、元金の返済を待ってもらい、利息だけを払えばよい期間のことです。
コロナ借換保証では最長5年まで設定できましたが、実際には2年以内で設定した会社が約8割を占めると言われています。
この制度の受付は2024年6月末で終了しているので、2024年前後に借り換えた会社の据置期間が、今年の春から秋にかけて次々と明けているわけです。
具体的に計算してみましょう。
例えば、3,000万円を返済期間10年、据置期間2年で借りていたとします。
据置期間中に払うのは利息だけです。
金利1%なら、月に2万5,000円ほどです。
ところが据置期間が明けると、残り8年、つまり96回で3,000万円の元金を返すことになります。
元金だけで、毎月31万円あまり。
利息と合わせれば、毎月の支払いはそれまでの10倍以上に跳ね上がるのです。
半年で約190万円、1年で約375万円の現金が、これまでより余分に出ていく計算です。
売上や利益が据置期間中と同じであれば、その分はそっくり手元の現金から消えていきます。
「据置期間中は何とか回っていたのに、明けた途端に月末の支払いが詰まってきた」
そういうケースは、実際によくあります。
もう一つ、忘れてはいけないことがあります。
据置期間中、元金は1円も減っていません。
返済を免除されていたのではなく、先送りしていただけなんです。
契約で決めた据置とはいえ、元金を1円も返していないという実態は、リスケジュール中の会社と何も変わらない。
だから返済猶予もリスケジュールと同じ、というのがたちばなはじめの考えです。
その状態が、気づかないまま2年続いていた。
据置明けとは、その事実が毎月の支払いという形で目に見えるようになる時期です。
借りたお金の残りから返していないか?
据置期間が明けた会社によくあるのが、コロナ融資で借りたお金の残りを取り崩して返済に充てるやり方です。
通帳にはまだお金があるので、当面は返済できているように見えます。
でも、これは借りたお金で借りたお金を返しているだけです。
返済の原資は、本来、事業で稼いだ売上総利益から生み出すものです。
粗利から固定費を払い、残ったお金で返済する。
この形になっていなければ、借入金の残りが尽きた時点で、資金繰りは一気に行き詰まってしまいます。
据置期間が明けてから相談に来られる社長のほとんどが、返済が始まる前に対策を立てていませんでした。
通帳の残高で返せている間は、危機感が湧きにくいからです。
そして、残高が減り続けていることに気づいたときには、次の一手を選べる余裕がなくなってしまっているのです。
リスケや借換で先送りしてはいけない理由
返済が重いと感じたとき、真っ先に頭に浮かぶのが、リスケジュール(返済条件の変更)や借換でしょう。
銀行からも「条件変更で月々を軽くしましょう」「新しい制度に借り換えましょう」と提案されることが多いはずです。
月々の負担が軽くなるので、一見、助かったように見えます。
ですが、ここで一つ気をつけていただきたい。
リスケジュールに入ると、経営者保証ガイドラインが求める「法人の収益力だけで返済できる財務基盤」を満たしていないと判断されやすくなります。
その結果、社長個人の保証を外す道は事実上閉ざされてしまう、というのがたちばなはじめの見方です。
月々の返済を軽くする代わりに、自宅や個人資産を守る選択肢を手放すことになるんです。
もう一つ、見落とされがちな問題があります。
リスケジュールを実行し、一定期間やり過ごしたあとに通常の返済に戻して、利益を出して存続している会社は、たちばなはじめの経験則ではほとんど存在しません。
月々の負担が軽くなった安心感で、経営の根本的な課題は後回しになる。
そしてリスケの期間が終わるころには、次の延長を申し入れざるを得なくなっています。
そんな循環を、たちばなはじめは何度も見てきました。
厳しい話に聞こえるかもしれませんが、これが現実です。
もし信じられないと感じる方がいらっしゃれば、お付き合いのある銀行員や税理士の方に、こう聞いてみてください。
「リスケから通常の返済に戻して、利益を出して存続している会社は、どのくらいありますか?」
おそらく多くの方が「ほとんどない」と答えるはずです。
借換にしても同じです。
新たに据置期間を付け直したところで、元金を返していない状態が続くことに変わりはありません。
据置期間という先送りが終わったところで、リスケや借換でまた先送りする。
それでは、返せていない期間が延びていくだけなんですね。
とはいえ、すでにリスケに入っている方も、諦める必要はありません。
リスケ前と比べれば選べる道は少なくなりますが、リスケ後でも取り得る選択肢は確かに残されています。
返済が滞る前に確かめておきたい3つの数字
では、何をしておけばいいのでしょうか。
据置期間が明ける前の方はもちろん、すでに明けている方も、今からで遅くはありません。
難しいことではなく、次の3つの数字を紙に書き出すだけです。
- 据置期間が明けたあとに毎月出ていく返済額の合計(元金と利息を、すべての借入分で足したもの)
- その返済額を差し引いたあとに、毎月手元に残る現金
- 2の現金がマイナスになる月が、半年以内に来るかどうか
1は、銀行から届いている返済予定表を見れば分かります。
複数の銀行から借りているなら、全部を足します。
2で見るのは、試算表の利益ではなく、実際に口座に残る現金です。
元金の返済は経費になりませんから、利益が出ていても現金は思った以上に減っていきます。
そして3で、マイナスになる月が半年以内に見えたなら、、、
その月が来る前に取りかかるのが鉄則です。
返済が滞ってから銀行に相談に行くのと、滞る前に相談に行くのとでは、話の進め方がまるで違います。
滞る前であれば、金融機関との交渉方法を見直し、家族や従業員、取引先への支払いを守りながら資金繰りを立て直す道が残っています。
たちばなはじめ自身、かつて多額の負債を抱えて返済が立ち行かなくなり、銀行との交渉方法を見直すことで再起した経験があります。
だからこそ、返済が滞る前に手を打ってほしいのです。
返済が滞ってからでは遅い
コロナ破たんの件数は、月ごとに増えたり減ったりを繰り返します。
でも、あなたの会社の返済予定表は、ニュースの数字とは関係なく、来月も再来月も同じ額を求めてきます。
据置期間が明ける前でも、明けた直後でも、まず毎月の返済額と、返済後に残る現金を数字で確かめる。
足りないと分かったら、リスケや借換で先送りする前に、資金繰りそのものを組み直す。
早く気づいて決断した社長ほど、失うものは少なくて済んでいます。
「返済が苦しくなってから考えよう」では、間に合わないかもしれません。
もし据置明けの返済に少しでも不安があるなら、滞ってしまう前に、お気軽にご相談くださいね。
資金繰りの課題を抱える経営者の方へ3つのご案内
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