2026年8月、中古のスマートフォンを海外向けに販売していた会社が、破産手続きの開始決定を受けたと報じられました。
負債の総額は約18億3,680万円にのぼります。
設立から、わずか5年での破綻でした。
気になるのは、その中身のほうです。
AIでこのニュースについて調べてみると、次のような解説が出てきます。
和歌山市に本社を置く中古携帯電話の販売業者が、2026年8月5日に和歌山地方裁判所から破産手続開始決定を受けた。負債総額は約18億3,680万円。2021年の設立以降、円安を背景とした海外向けの中古端末販売で一定の事業規模を維持していたが、地政学リスクや物価高騰の影響で海外向けの販売が鈍化。国内の同業者向けの販売に切り替えたものの、販売先からの代金回収が滞り、未回収の売掛金が膨らんで焦げ付き、資金繰りが急激に逼迫した。
— AI検索で「中古携帯電話販売 破産 負債18億円」について調べた際の解説より引用
売上が落ちたから潰れた、という単純な話ではありません。
売上を確保するために販売先を切り替え、その代金が回収できなくなったのです。
商品は出ていったのに、お金だけが入ってこなかった。
これは業種を問わず、どんな会社にも起こりうる話です。
では、売上を確保したはずの会社が、なぜ資金を切らしてしまうのでしょうか。
売上を守ろうとして資金繰りが壊れた
この会社が置かれていた状況を、順に見ていきます。
円安のおかげで、日本の中古スマートフォンは海外から見て割安になりました。
その追い風に乗って、事業は順調に拡大。
ところが、地政学リスクや物価の高騰で海外向けの販売が鈍ってきました。
売上が落ちれば、当然、資金繰りは苦しくなります。
そこで国内の同業者への販売に切り替え、売上そのものは確保しようとしたわけです。
判断としては、決しておかしなものではありません。
売上が落ちたら、別の売り先を探す。
多くの社長が、同じように動くでしょう。
が、ここに落とし穴がありました。
急いで開拓した販売先から、代金が期日どおりに入ってこなかったのです。
商品を渡した時点で、売上は立ちます。
帳簿の上では、事業が持ち直したように見えたはず。
それでも、口座のお金は増えません。
仕入れの支払いや経費は先に出ていき、入ってくるはずのお金は入ってこない。
そうやって、手元の現金はどんどんすり減っていきます。
売上を守るための一手が、結果的に資金繰りを壊してしまったということなんですね。
売掛金は回収するまで利益ではない
たちばなはじめが以前から繰り返し伝えているのは、売掛金は「含み益」にすぎないという考え方です。
含み益とは、まだ現金になっていない、見込みの利益のことをいいます。
商品を納めて請求書を出した時点で、会計上は売上も利益も立ちます。
ですが、その代金が口座に入るまでは、あくまで「入る予定」。
予定どおりに入金があって、はじめて利益が確定するわけです。
ここを混同すると、経営の判断を大きく間違えます。
月末になって「5日待ってほしい」「来月に2か月分まとめて払う」と言われ、そのうち連絡そのものが取れなくなる。
長く事業をやっていれば、一度や二度は思い当たることがあるのではないでしょうか。
そして最後は、貸し倒れとして処理するしかなくなり、泣き寝入りに近い形で終わることになります。
たちばなはじめ自身、この怖さを身をもって知っています。
かつて燃料油の卸や小売を営んでいた時期に、大手の取引先が経営破綻しました。
その結果、6,500万円の手形が焦げ付き、回収できなくなってしまったのです。
そこから事業はじり貧が続き、返済も立ち行かなくなっていきました。
そのときに体へ染み込んだのが、「持っていない相手からは、どんな手段を使っても回収しようがない」という現実。
内容証明を送っても、弁護士に依頼しても、相手に払う原資がなければお金は戻ってきません。
だからこそ、売上の数字ではなく、通帳に入った金額で判断しなければなりません。
回収できて、はじめて自社のお金なんです。
販売先を変えると回収のリスクは跳ね上がる
今回のケースには、もうひとつ見ておきたいポイントがあります。
それは、販売先を切り替えたタイミングで、回収のリスクが一気に上がっているという点です。
長く付き合ってきた取引先なら、支払いの癖はある程度わかります。
いつも月末にきちんと入る相手なのか、少し遅れがちな相手なのか。
ところが、新しく開拓した販売先には、その蓄積がありません。
しかも、売上が落ちて焦っているときほど、相手を選んでいる余裕がなくなります。
「買ってくれるだけありがたい」という気持ちになりますよね。
中古スマートフォンのように、まとまった数量が一度に動く商材ならなおさらです。
1回あたりの取引金額が大きく、同業者どうしの取引になると、支払いは後払いが当たり前になります。
相手の資金繰りが詰まれば、その影響はそのまま自社へ跳ね返ってきます。
だからこそ、新しい販売先を増やすときほど、取引の条件を先に決めておく必要があります。
- 初回の取引は前金にする
- 1社あたりの取引の上限額を決めておく
- 入金の期日を書面に残しておく
手間に見えるかもしれませんが、この一手間が会社を守ってくれます。
回収が遅れ始めたらすぐ手を打つ
では、すでに入金が遅れ始めている場合はどうすればいいのでしょうか。
まずは、次の3つを順番に進めてみてください。
- 遅れている相手への出荷や納品を、いったん止める
- 入ってくる予定だった金額を、資金繰りの計算から外して組み直す
- 相手が「遅れているだけ」なのか「払えない状態」なのかを直接聞く
いちばん怖いのは、入金を待ちながら取引を続けてしまうことです。
「もう少しで払ってくれるはず」と期待して出荷を重ねると、焦げ付く金額だけが膨らんでいきます。
今回の会社も、未回収の売掛金が膨らみ続けたことを考えると、同じ形に陥っていた可能性が高いでしょう。
入金の予定を当てにしたまま資金繰りを組むのも危険。
入らないかもしれないお金を計算に入れていると、支払いの当日になって、はじめて足りないことに気づきます。
そこで慌てて借入れで穴を埋めれば、返済という新しい負担を背負うだけです。
回収が遅れているとわかった時点で、入らない前提の資金繰りに組み直しておくことが大切です。
そのほうが、打てる手は多く残ります。
事業の根幹は事業ではなく会計にあり
たちばなはじめには、「事業の根幹は事業ではなく会計にあり」という教えがあります。
売上をどれだけ積み上げても、現金にならなければ会社は続きません。
利益は、あとから出てくる結果の数字。
現金は、いま手元にあるかどうかを示す動かしがたい事実です。
経営の判断のもとになるのは、間違いなく後者のほうです。
数字、とくに現金の流れから目をそらしてはなりません。
売上が落ちてきたときこそ、新しい売り先の入金条件と回収の状況を確かめることが欠かせません。
売上の数字が戻っても、現金が戻らなければ意味がないのですから。
私たちは、売掛金の焦げ付きで資金繰りが苦しくなった会社のご相談も受け付けています。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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