事業が伸びれば、人が増え、拠点も増えていきます。
社長にとって、これほど嬉しいことはありません。
ですが2026年8月、その拡大が重荷に変わってしまった事例が報じられました。
約30拠点まで広がった法律事務所が、負債11億円で民事再生。
実はこのニュースには、業種を問わずどの会社にも当てはまる、資金繰りの落とし穴が詰まっているんです。
約30拠点に広がった法律事務所が民事再生へ
まず、報道の中身から確認していきましょう。
2011年設立の弁護士法人が、2026年7月24日に東京地裁から民事再生手続きの開始決定を受けた。負債総額は約11億円。経営が苦しくなった企業の債務整理の支援などを主力に、ピーク時には1都3県に約30拠点を展開していた。新型コロナ後は、国や自治体の資金繰り支援策が広がった影響で主力業務の案件が大幅に減少。急拡大にともなう運転資金の負担増や人材の流出も重なって事業を縮小し、約1年前に事業を停止していた。
— 2026年8月、東京商工リサーチの調査をもとにした報道より
どれだけ専門性の高い仕事でも、資金繰りが回るかどうかは、また別の問題なんですね。
順調に拡大していた組織が、需要の変化で一気に崩れてしまったのです。
この流れは、決して他人事ではありません。
では、なぜ拡大が命取りになってしまうのか、順番に見ていきましょう。
事業の拡大は固定費の積み上げでもある
拠点を増やして、人を増やして、設備を入れる…事業の拡大は、言い換えれば固定費を積み上げていくことでもあります。
家賃も人件費も、一度増やすと毎月決まって出ていくお金になります。
売上がどうであろうと、待ったなしで出ていく。
一方で、売上のほうは毎月変動します。
追い風のときは、増えた固定費を上回る売上が立つので、何も問題は起きません。
ですが、風向きが変わって売上が落ちても、積み上げた固定費はそのまま残ります。
売上は減っているのに、家賃と人件費は減りません。
もう1つ見落としがちなのは、固定費が増えるほど、赤字に転落する売上のラインも上がっていくことです。
同じ1割の売上減でも、身軽な会社なら耐えられて、広げた会社では赤字になる。
拡大したあとの会社は、身軽だったころより売上の変動に弱くなっているんです。
こうして、大きく広げた会社ほど、現金がどんどん流出していきます。
追い風は自分ではコントロールできない
「うちは需要が安定しているから大丈夫」と思うかもしれません。
ですが、今回の法律事務所の主力業務が減った理由を思い出してください。
国や自治体の資金繰り支援策が広がったこと、つまり外部環境の変化です。
制度の変更、ブームの終わり、大口取引先の方針転換、円安や物価高…売上を支える追い風は、社長の努力が届かないところで、ある日突然止まります。
コロナ特需で伸びた業種が、その後の反動で苦しんだのは記憶に新しいところでしょう。
「あれだけ好調だったのに」という会社ほど、実はこのパターンにはまりやすいのです。
追い風を前提に組んだ体制は、風が止まった瞬間に重荷へ変わってしまうんですね。
事業を広げる前に決めておくこと
では、拡大をあきらめるべきなのでしょうか。
そうではありません。
攻めの投資や拡大は、業績が安定している平常時にしかできない、大切な経営判断です。
大事なのは、広げる前に守りを決めておくことです。
具体的には、次の3つを考えておく必要があります。
- 自前で抱える前に、外注や間借りなど、固定費ではなく変動費で対応できないかを先に考える
- 売上が2〜3割落ちても耐えられるだけの手元資金があるかを確かめる
- 「ここまで悪化したら縮小する」という引き際をあらかじめ決めておく
とくに効果が大きいのは、1つ目です。
固定費を変動費に変えておけば、売上が落ちたときに経費も一緒に下がる形になります。
2つ目の手元資金は、感覚ではなく数字で確かめる必要があります。
毎月の固定費と返済額を書き出せば、売上が落ちたときに手元の現金があと何カ月もつかが見えてきます。
「半年もつのか、1年もつのか」が数字で見えていれば、どこまで思い切って拡大できるかの判断も変わってくるでしょう。
拡大の計画は、引き際とセットで考えておく。
これが、拡大を倒産の種にしないための鉄則です。
決断が遅れると選べる道がなくなる
もう1つ、今回の報道で見逃せない点があります。
民事再生は本来、事業を立て直すために使われることの多い手続きです。
ですがこの事務所は、約1年前にすでに事業を停止していました。
事業を続けながら立て直す道は、その時点でもう選べなくなっていたということなんです。
縮小の決断が遅れるほど、手元の現金は減っていきます。
現金が尽きてからでは、選べる道はもうほとんどない。
実は、縮小や撤退にも、まとまったお金がかかります。
事務所の原状回復の費用、契約の解約金、取引先への支払い…これらを払えるだけの現金が残っているかどうかが、その後の道を分けるんです。
逆に、余力が残っているうちなら、事業の形を縮めながら、借入金の返済を実態に合わせて組み直す道があります。
我慢して返済を続けるのではなく、金融機関との交渉方法を見直す。
たちばなはじめ自身、かつて自らの事業の破綻を経験しています。
そのとき、法的な手続きに頼ることなく、金融機関との交渉方法を見直すことで再起しました。
すでに売上の減少と固定費の重さに苦しんでいる方も、諦めるのはまだ早いです。
私たちは、倒産や破産をせずに解決できる可能性を最後まで探るというスタンスで、支援にあたっています。
攻めるときこそ守りを固める
事業を広げること自体は、悪いことではありません。
問題は、追い風がずっと続く前提で、固定費を積み上げてしまうことです。
風向きは、必ず変わります。
変わっても揺らがない形を、業績のいい今のうちに作っておきましょう。
会社と社長にお金を残す基本的な考え方は、無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』にまとめています。
その内容を概論としてお伝えするセミナーも、定期的に開催しています。
そして、増やした固定費と毎月の返済がすでに重くなっているなら、無料の個別相談という入口があります。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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