2026年8月、中小企業の事業承継について、気になる調査結果が公表されました。
将来的に事業承継を考えている社長1,002人のうち、約4割が準備に「未着手」だったというのです。
「うちもそろそろ考えないとな」と思いながら、つい後回しにしてしまう。
もしかすると、あなたも同じ状況かもしれません。
では、なぜこれほど多くの社長が最初の一歩を踏み出せないのでしょうか。
4割の社長が事業承継の準備に未着手
まずは、調査の中身から見ていきます。
将来的に事業承継を検討している中小企業の経営者1,002人を対象にした調査で、約4割が事業承継の準備に「未着手」と回答した。後継者については「候補が複数いる」が34.8%、「決定済み」が28.2%と、6割以上が後継者の姿を思い描けている一方で、具体的な準備には進めていない実態が浮き彫りになった。
— 2026年8月に公表された「中小企業の事業承継に関する実態調査」(M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社)より
後継者の候補がいる、あるいはもう決まっている社長が6割を超えています。
それでも、実際の準備には手をつけられていません。
引き継ぐ相手は見えているのに、最初の一歩が踏み出せないわけです。
後継者がいても動き出せないのはなぜか?
調査では、その理由もはっきり出ていました。
最も多かったのは「各承継方法についての具体的な情報が不足している」で34.8%。
「将来の事業環境が不透明」が26.7%、「自社にとってのメリット・デメリットが整理できていない」が24.1%と続きます。
つまり、やる気がないから進まないのではありません。
判断するための材料が手元にないから、進めないのです。
実際、社長たちがどんな情報を求めているのかも、調査にはっきり表れていました。
「各承継方法のメリット・デメリット」が33.7%、「費用や税金の詳細」が28.9%、「事業の将来性の客観的な評価」が25.1%。
どれも一般論ではなく、「自社の場合はどうなのか」という具体的な判断材料ばかりです。
親族に継がせるのか、従業員に譲るのか、それともM&Aで第三者に託すのか。
選ぶ道によって、かかる費用も、税金も、準備にかかる期間もまるで違ってきます。
比べる材料がなければ、どれが自社に合っているのか判断のしようがありません。
準備が止まってしまうのも、当然のことなんですね。
誰にも相談していない社長が3割
もうひとつ、見過ごせない数字があります。
事業承継について「誰にも相談していない」と答えた社長が27.6%、およそ3割にのぼりました。
相談している場合でも、相手は顧問税理士・会計士が34.8%で最も多く、家族・親族は14.9%にとどまっています。
無理もない話です。
事業承継は、社内では切り出しにくいテーマです。
「社長はもう引退を考えているのか」と、従業員や取引先を不安にさせてしまうかもしれない。
家族に対しても、資産や借入の話が絡むだけに、なかなか持ち出せません。
結果として、社長が一人で抱え込んでしまうのです。
ですが、一人で考え込んでいる間にも、時間はどんどん過ぎていきます。
事業承継の準備には、後継者の育成まで含めると5年から10年かかると言われています。
たとえば社長が70歳で準備を始めた場合、バトンを渡し終えるころには80歳近くになっている計算です。
「まだ先の話」と思っているうちに、選べる道が少しずつ減っていく。
それが、事業承継という問題の怖いところです。
借入と個人保証を残したまま承継してはならない
そして、情報集めと同じくらい大切なことがあります。
それは、会社の借入と社長の個人保証をどうするかという問題です。
中小企業の多くは、社長個人が会社の借入の連帯保証人になっています。
金融機関から融資を受けるとき、社長がハンコを押すのが当たり前だった時代が長く続いたからです。
会社を継ぐということは、この保証まで引き継ぐ話になりかねません。
「親の借金の保証人になるくらいなら、継がない」
そう考えた後継者に承継を断られ、廃業に至ってしまうケースは実際に多いのです。
会社の業績がどれだけ良くても、この問題を残したままでは、後継者は安心して引き受けられません。
だからこそ、私たちがお伝えしているのは、負債の整理に決着をつけてから承継するという順番です。
借入や個人保証を後継者に持ち越さず、事業の健全な中核だけを引き継ぐ。
私たちは、後継者に負債を引き継がせない事業承継の設計を、各分野の専門家チームと一緒に、これまで多くのケースで支援してきました。
後継者に「この会社なら継ぎたい」と思ってもらえるかどうかは、会社の中身をどれだけ身軽にしておけるかにかかっています。
まずは自社の現状を書き出してみる
事業承継の準備といっても、いきなり仲介会社や支援機関に駆け込む必要はありません。
まずは、自社の現状を書き出してみてください。
- 借入の残高と毎月の返済額
- 社長個人が入っている連帯保証
- 会社の資産と社長個人の資産の線引き
- 主要取引先との契約や約束ごと
これらを紙に書き出してみると、「これは後継者にそのまま渡せない」というものが必ず見えてきます。
借入の残高かもしれませんし、個人保証かもしれません。
それが見えれば、何から先に片づけるべきか、順番も自然と決まってくるのです。
この書き出しは、そのまま後継者との対話の材料にもなります。
「何を、どんな状態で渡そうとしているのか」を社長自身の言葉で説明できれば、後継者の受け止め方も変わってくるはずです。
4割の社長が足踏みしているのは、能力の問題ではなく、判断材料と相談相手がいないだけ。
裏を返せば、材料を揃えた社長から、承継は前に進んでいきます。
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もし気になることがあれば、ひとりで抱え込まず、まずは一度ご相談くださいね。
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