2026年7月、名古屋市のアパレルOEM会社「カフカ」が、名古屋地方裁判所から破産手続き開始決定を受けたと報じられました。
負債は、約60億円にのぼります。
婦人服や子供服の企画・製造を手がけ、直近の売上高は約66億円と規模のある会社でした。
カフカ株式会社は2026年7月21日、名古屋地裁より破産手続き開始決定を受けた。負債は債権者約110名に対し約60億円。2025年4月期には年売上高約66億4600万円を計上し、近年の業績は利益計上で推移していたが、在庫保有の負担が重く、資金面を圧迫していた。
— 帝国データバンクの倒産速報より
赤字続きで力尽きたのではありません。
直近まで、利益は出ていました。
それでも、在庫の負担が資金繰りを圧迫し、事業を続けられなくなってしまったんですね。
「利益が出ているのに、なぜ倒産してしまうのか?」
そう疑問に思った社長にこそ、今回の事例から知ってほしいことがあります。
利益が出ていても会社は倒産する
倒産の引き金になるのは、赤字ではありません。
現金が尽きることです。
どれだけ帳簿の上で利益が出ていても、支払いに使える現金がなくなれば、会社はその時点で立ち行かなくなってしまいます。
いわゆる「黒字倒産」。
逆に、多少の赤字が続いていても、手元に現金がある限り会社は潰れません。
給料も、仕入れ代金も、借入金の返済も、支払いはすべて現金でおこなうからです。
そして、支払いは待ってくれません。
損益計算書の利益と、手元の現金。
この2つは、まったくの別物です。
「利益が出ているからうちは大丈夫」と思っている社長ほど、現金の減りに気づくのが遅れてしまいます。
今回のアパレル会社の破綻は、その怖さを示す典型的な事例だといえます。
在庫はまだ現金になっていないお金
では、利益が出ているのに現金が減っていくとき、お金はどこに消えているのでしょうか。
その代表格が、在庫です。
商売の現金は、仕入れ→在庫→販売→回収、という順番でぐるぐる回っています。
仕入れの支払いは先に出ていくのに、在庫が売れて現金として戻ってくるのは何か月も先です。
つまり在庫とは、会社のお金が商品の形に変わって、倉庫で眠っている状態なんですね。
帳簿の上では、在庫は「資産」に計上されます。
ですが、在庫は支払いには使えません。
すぐに現金化できない資産が多いほど、資金繰りは苦しくなっていきます。
売れ残れば価値はどんどん目減りし、保管するだけで倉庫代などのコストもかかります。
在庫が積み上がるほど、会社の現金は在庫に吸い込まれていくのです。
アパレルはなぜ在庫が重くなりやすいのか?
今回破綻したのは、アパレルのOEM、つまり衣料品の受託製造の会社でした。
アパレルは、在庫の負担がとくに重くなりやすい業界だと言われています。
理由は、商売の構造にあります。
衣料品はシーズン商売なので、春夏物・秋冬物を売り出す何か月も前から、生地を仕入れ、縫製し、商品を作り込んでおかなければなりません。
お金が先に出ていき、売れるのはずっと後。
しかも、シーズンが終わって売れ残った商品は、値引きしてもさばき切れないことが多く、価値が一気に落ちてしまいます。
流行が変われば、翌年に持ち越しても売り物にならない。
「作らなければ売れない、作りすぎれば現金が消える」という板挟みの中で、在庫が膨らんでいきやすいわけです。
これはアパレルに限った話ではありません。
食品、雑貨、部品、資材、、、仕入れや製造が先行する商売なら、どの業種でも同じことが起こります。
自社の商売でも、お金が出ていってから現金として戻ってくるまでに、どれくらいの時間がかかっているのか、一度振り返ってみる価値があります。
黒字倒産の予兆を数字で確かめる
では、どうすれば黒字倒産の予兆に気づけるのでしょうか。
見るべきは、利益ではなく現金の動きです。
次のようなサインが出ていないか、注意が必要です。
- 利益は出ているのに、預金残高が月を追うごとに減っている
- 売上は横ばいなのに、在庫の金額が増え続けている
- 在庫や仕入れの支払いを、借入金で埋めるようになっている
1つでも当てはまるなら、会社のお金が在庫に変わり始めているサインかもしれません。
気づいたら早めに在庫を軽くする
サインが見えたら、在庫を軽くする対策を早めに始めてください。
売れ残った商品は、「いつか売れるかもしれない」と倉庫に置いたままにせず、値引きしてでも早めに現金へ変えていくのが得策です。
あわせて、仕入れや生産の量を減らせないかも考えてみてください。
「欠品が怖いから」と多めに仕入れたくなる気持ちは、本当によくわかります。
ですが、売れる見込みを超えた仕入れは、その瞬間から会社の現金を眠らせてしまうのです。
たちばなはじめは、かつて燃料油の卸・小売など、大量の在庫を抱える商売をしていました。
在庫を持つ事業の資金繰りの重さは、身をもって知っています。
倉庫や店頭に商品がぎっしり並んでいると、それだけで商売をしている実感が湧いてくるものです。
ですが、その在庫を現金に戻せなければ、月末の支払いには1円も使えない。
だからこそ、数字、とくに現金の流れから目をそらしてはいけないのです。
試算表の利益を眺めるだけではなく、預金残高と在庫の量を定期的に確かめることをおすすめします。
「この在庫は、いつ現金に戻るのか」という目で自社の倉庫を見直してみてください。
それだけでも、危険な兆候にずっと早く気づけるようになります。
会社を守るのは利益ではなく現金
利益が出ていても、現金が尽きれば会社は終わってしまう。
だからこそ、会社を守るために見るべきは、利益よりも現金です。
もし今、在庫や仕入れの支払いで資金繰りが苦しくなっているなら、我慢して耐え続けるのは危険です。
「在庫さえさばければ、何とかなるはず」
そう考えて借入で穴を埋め続けているうちに、どんどん現金が流出し、気づいたときには身動きが取れなくなってしまいます。
資金繰りは、早く手を打てば打つほど、選択肢は広がります。
もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談くださいね。
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