あなたの会社のお金は、先月より増えましたか。
それとも、減りましたか。
この問いに、すぐ答えられる社長は、実はそれほど多くありません。
売上や利益なら、なんとなく頭に入っている。
でも「今この瞬間、会社にいくら現金があるのか」「先月と比べて増えたのか減ったのか」となると、途端にあやふやになってしまいます。
数字は経理の担当者にまかせている。
あるいは、決算のときだけ税理士に見てもらっている。
ふだんは現場を走り回っていて、細かい数字まで手が回らないのが正直なところです。
気持ちは、よくわかります。
ですが、資金繰りに追われて苦しくなっていく会社には、たいてい同じ入口があります。
それは、社長が数字から目をそらしていた、ということなんですね。
数字を「任せる」のか「委ねる」のか
ここで、ひとつ言葉を分けて考えてみてください。
「任せる」と「委ねる」は、似ているようでまるで違います。
自分で数字を理解して、大きな方向性を決めたうえで、実務を担当者にやってもらう。
これが「任せる」です。
一方、自分は数字が苦手だから、面倒だから、よくわからないまま担当者に丸投げする。
こちらは「委ねる」です。
営業も、製造も、企画も、従業員に指示して任せることはできます。
ですが、資金繰りだけは、他人に委ねてはいけません。
なぜなら、お金が回らなくなったとき、その責任はすべて社長ひとりに跳ね返ってくるからです。
「うちには数字に強い経理がいるから大丈夫」。
そう思っている社長ほど、いざというときに現状がつかめず、動き出しが遅れてしまいます。
売上を見て、現金を見ていない
資金繰りが苦しくなる会社に共通するのは、売上と利益ばかりを追いかけて、手元の現金を見ていないことです。
利益は、結果として後から出てくる数字です。
帳簿の上で計算されて、はじめて姿を現します。
それに対して現金は、いま手元にあるかどうかを示す、動かしがたい事実。
この二つは、しばしばずれます。
決算書の上では黒字なのに、なぜか通帳の残高は増えていかない。
売上は伸びているのに、支払いのたびに冷や汗をかく。
そういうことが、現実には起こります。
売掛金が入ってくる前に、仕入れや給与の支払いが来る。
在庫が積み上がって、現金だけが先に出ていく。
数字の上の利益と、財布の中の現金は、別々に動いているんです。
ここを見ていないと、どうなるか。
「利益は出ているはずだ」と思い込んでいるうちに、気づいたときには手元の資金が底をついている。
そこから慌てて銀行に駆け込んでも、打てる手はぐっと狭くなっています。
たちばなはじめも、同じ失敗をしました
偉そうにお伝えしていますが、たちばなはじめ自身、かつて数字から目をそらして、大きな失敗をしています。
もともと会計は経理まかせで、自分で細かく数字を追ってはいませんでした。
売上と利益さえ見えていれば事業は回る。
心のどこかで、そう思い込んでいたのです。
ところが、自社の資金繰りが少しずつ苦しくなってきたことをきっかけに、ようやく自分で会計を学び始め、数字を直接つかむようになりました。
ですが、その努力は実らず、結果的には6億円の負債を抱えて、事業は破綻してしまいます。
この経験から、たちばなはじめが繰り返し口にしている言葉があります。
「事業の根幹は、事業ではなく会計にあり」。
自分が数字をおろそかにしてしまったことが、そもそも会社を窮地に追い込んだ入口だった。
自身の体験から、そう痛感しているからです。
だからこそ、あなたには同じ轍を踏んでほしくない。
数字、とくに現金の流れから、目をそらさないでほしいんです。
会計は、足し算と引き算しかない
「そうは言っても、昔から数字が苦手で」という声を、本当によく聞きます。
ですが、日々の会計に、難しい計算はひとつも出てきません。
あるのは、足し算と引き算だけです。
掛け算も割り算も、基本的には使いません。
入ってきたお金を足して、出ていったお金を引く。
残ったのが、いま手元にある現金です。
ただ、それだけのことなんですね。
足し算と引き算しかない世界を「苦手」と言って人にまかせてしまうのは、少しもったいない話です。
数字を追いかけるのは、社長にしかできない仕事です。
ここだけは、誰かに肩代わりしてもらうわけにはいきません。
今日から始められる、現金を追う習慣
では、具体的に何をすればいいのか。
むずかしく考える必要はありません。
まずは、次のことを毎日続けてみてください。
- その日に入ってきたお金と、出ていったお金を書き出す
- 手元の現金と、銀行口座の残高を合わせて、今日いくら持っているかを出す
- その金額が、先月の同じ日と比べて増えたのか、減ったのかを見る
かかる時間は、一日10分もあれば十分です。
最初のうちは、ただ数字を書き写しているだけに感じるかもしれません。
ですが、これを数か月続けていくと、ある日突然、会社の無駄や粗が見えてくる瞬間が訪れます。
「あの支払いは、なぜこんなに膨らんでいるのか」「この時期は、いつも現金が細るな」。
そうした気づきが、自然と湧いてくるんです。
そこまで来たら、もうしめたもの。
気づいた無駄に手を打ち、現金が細る時期に備えていく。
その一つひとつが、資金繰りを楽にしていきます。
それだけではありません。
現金の流れが見えてくると、経営の判断そのものが変わってきます。
値上げのタイミング、仕入れの量、人を増やすかどうか。
ひとつひとつの判断に、確かなよりどころができるからです。
数字を追う習慣は、特別な才能ではありません。
今日から、誰にでも始められます。
数字から目をそらしてはいけない
すでに資金繰りが厳しく、毎月の支払いに追われている方も、いらっしゃるかもしれません。
そんなときでも、諦める必要はありません。
いまの現金の流れを正しくつかむことが、立て直しの最初の一歩になります。
どんな状況からでも、打てる手を一緒に探すことはできます。
利益は、後からついてくる数字です。
まず社長が見つめるべきは、いま手元にある現金のほうです。
数字から目をそらしてはいけません。
数字を追いかけることが、会社とあなた自身を守る、いちばん確かな備えになります。
資金繰りだけでなく、会社のお金にまつわる気がかりがあれば、ひとりで抱え込まず、まずは一度ご相談くださいね。
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