後継者難の倒産が過去最多264件…跡継ぎ問題よりも深刻な要因と万が一への備え

2026年7月、中小企業の「後継者難」による倒産が、過去最多になったと報じられました。

2026年上半期の件数は264件。

数字だけを見ると、「跡を継ぐ人がいない会社が増えているんだな」と受け取ってしまいそうです。

ですが、その内訳を見ると、景色が少し変わります。

倒産の引き金になっていたのは、跡継ぎがいないこと以上に、社長本人の身に起きた出来事でした。

2026年上半期の「後継者難」倒産は264件で、2013年の調査開始以降で最多となった。倒産の要因別では、代表者の「死亡」が119件、「体調不良」が107件で、この健康に関する2要因だけで全体の85.6%を占めた。倒産形態では破産が96.2%、規模別では資本金1000万円未満の小・零細企業が65.5%を占めている。

— 2026年7月、東京商工リサーチの調査発表より

代表者の死亡と体調不良を合わせると、実に85.6%です。

「後継者難」という言葉から思い浮かべる”跡継ぎがいない”という問題よりも先に、社長自身に何かが起きた瞬間、会社が立ち行かなくなっている。

データが映していたのは、そういう現実でした。

この記事でお伝えしたいのは、跡継ぎを決めるより前に、社長に何かあっても会社と家族が困らない状態を、元気な平常時のうちに整えておくという考え方です。

目次

「後継者難の倒産」は跡継ぎがいないことだけが原因ではない

後継者難と聞くと、多くの人は「継ぐ人が見つからない会社の話」だと考えます。

もちろん、それも一因ではあります。

ですが、今回の数字がはっきり示していたのは、もっと手前の入り口でした。

倒産の要因は、代表者の死亡が119件、体調不良が107件でした。

つまり、社長が急に亡くなったり、体を壊して現場に立てなくなったりした瞬間に、会社が一気に回らなくなっているんですね。

ここで気をつけたいのは、その多くが資本金1000万円未満の小さな会社だったという点です。

規模が小さい会社ほど、判断も、資金繰りも、取引先との関係も、社長ひとりの肩に乗っています。

だからこそ、その社長が抜けた穴を、誰もすぐには埋められません。

たとえば、社長が突然入院したとします。

今月の支払いをどう回すのか、銀行への返済や相談を誰が引き継ぐのか、取引先にどう対応するのか。

その答えを社長しか持っていなければ、日々の判断は次々に止まっていきます。

そして気づいたときには、資金も信用もどんどん細っていくんですね。

継ぐ人がいるかどうか以前に、社長がいなくなった途端に会社が動かなくなる。

これが、いちばん多い倒れ方だったということです。

多くの社長は「まだ動けるから、承継はもう少し先でいい」と考えます。

その気持ちは、よくわかります。

ですが、実際に会社を倒しているのは、その”もう少し先”を待っている間に訪れる、社長自身の「もしも」のほうなのです。

社長ひとりに集まっているものを、元気なうちに見える形にする

では、社長に何かあっても会社が止まらないようにするには、何から手をつければいいのでしょうか。

出発点は、いま社長ひとりに集まっているものを、まるごと見える形にすることです。

頭の中だけで把握しているつもりでも、いざ書き出してみると、社長にしかわからない事柄がいくつも出てきます。

次のようなことを、一度紙の上に並べてみてください。

  • どの金融機関から、いくら借りていて、毎月いくら返しているか
  • 社長個人の連帯保証や担保が、どの借入に、どこまで付いているか
  • 主要な取引先と、その支払い条件や関係の深さ
  • 毎月のお金の出入りと、資金繰りの見通し
  • 口座やネットバンキング、契約まわりを誰が扱えるようになっているか

こうして並べてみると、あまりに多くのことが社長の記憶と判断だけに頼っていた、と気づくことがあります。

とくに見落とされやすいのが、お金と保証まわり。

ここが社長の頭の中にしかない状態だと、いざというときに家族も幹部も動けません。

逆に、この全体像を家族や後継者候補、信頼できる幹部と共有できていれば、社長が一時的に抜けても、会社はしばらく持ちこたえられます。

見える化と共有は、跡継ぎがまだ決まっていない会社でも、今日から始められる備えです。

そして、次に何を片づけておくべきかも、そこから自然と見えてきます。

承継でいちばん先に決着させたいのは「負債と個人保証」

全体像を書き出すと、多くの会社である共通の壁にぶつかります。

それが、会社の借入と、社長個人の連帯保証です。

実は、跡を継いでくれそうな人がいても、ここで承継が止まってしまうケースは少なくありません。

会社の借入と社長の個人保証がそのまま残っていると、後継者候補は「親の負債や保証まで引き受けたくない」と身を引いてしまうからです。

その結果、継げる会社だったはずなのに、承継そのものが宙に浮き、やがて廃業へ向かう。

これは、たちばなはじめのもとにも数多く寄せられている相談です。

だからこそ私たちは、承継の話を進める前に、まず負債と個人保証の整理に決着をつけることをおすすめしています。

借入や保証をきれいに片づけ、健全な中核だけを次の代へ引き継げる形にしておく。

そうすれば、後継者は余計な重荷を背負わずに済みますし、社長自身も安心して次のことを考えられます。

ちなみに、個人保証をめぐっては、近年こうした枠組みも広がってきました。

経営者保証に関するガイドラインは、全国銀行協会と日本商工会議所を事務局として策定された、中小企業の融資における個人保証の取り扱いをまとめた指針です。法的な強制力はありませんが、法人と個人の資産が明確に分けられているなど一定の条件を満たす場合に、個人保証を求めない融資や、保証の解除を金融機関と話し合う際のよりどころとして用いられています。

— AI検索で「経営者保証ガイドラインとは」について調べた際の解説より引用

こうした枠組みがあること自体は、知っておく価値があります。

ただ、実際に保証を外せるかどうかは、会社の状態と金融機関との関係しだいです。

とくに大切なのが、動く順番。

返済条件の変更、いわゆるリスケジュールに一度入ってしまうと、個人保証を外す道は一気に狭くなります。

ですから、負債や保証の整理は、資金繰りがまだ回っている段階で動き始めるほど、選べる手が多く残ります。

こうした負債と保証の決着は、専門家とも連携しながら、法的な面でも問題のない形で進めていけます。

社長ひとりで抱え込む必要はありません。

社長にもしもがあっても、家族と従業員を守れるように

社長の身に起きる「もしも」は、会社にとっての非常時です。

その非常時に、真っ先に守りたいのは誰か。

たちばなはじめが一貫してお伝えしているのは、まず家族、そして従業員を守るということです。

銀行への返済を最優先にして、家族や従業員の暮らしが後回しになってしまっては、本末転倒になりかねません。

この順番を非常時にも崩さないために、平常時のうちにやっておきたいことがあります。

それが、社長個人の連帯保証や担保が、配偶者や親、そして自宅にまで及んでいないかを確かめておくことです。

会社の借入と家族の生活が、気づかないうちにひとつながりになっている。

この状態のまま社長にもしものことがあれば、会社の資金繰りの問題が、そのまま家族の生活の問題へと姿を変えてしまいます。

不動産や自宅、個人の資産が、非常時に影響を受けにくい形になっているか。

こうした備えは、業績や資金に余裕がある平常時ほど、落ち着いて組み立てられます。

追い込まれてからでは、金融機関の警戒も強まり、動かせる範囲がぐっと狭くなってしまうからです。

あなたの会社では、いま誰が、どこまで背負っているのか。

それを家族と一度共有しておくだけでも、いざというときの安心感はまるで違ってきます。

「まだ元気だから」を、先送りの理由にしない

今回のデータが強く突きつけていたのは、次のことです。

元気だと思っていた社長にこそ、「もしも」は前ぶれなく訪れる。

死亡や体調不良が倒産理由の85.6%を占めていたという事実が、それを何より物語っています。

だからこそ、動けるのは、元気な今しかありません。

跡継ぎがまだ決まっていなくても、いまから始められる備えはたくさんあります。

承継の準備は、追い込まれてからでは間に合いません。

何から手をつければいいか迷ったら、ひとりで抱え込まず、まずは一度ご相談くださいね。


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